今回はアッテヌバーター(Attenuverter)について書いていきます。前回のモジュレーションの記事で「モジュレーションの深さを適切にコントロールする必要がある」と書きましたが、そのコントロールを担うのがこのアッテヌバーターです。
地味なユーティリティモジュールに見えますが、パッチを組むほど、これ無しではまともなパッチが組めないことが分かってきます。
- 名前の由来
- どういう仕組みなのか
- なぜ必要なのか
- 反転の使いどころ
- ビルトインアッテヌバーター
- マニュアルCV源としての使い方
- ユーロラックでの代表的なモジュール
- サウンドデモ
- 関連する Takazudo Modular 製品
- MetaModule 対応モジュール
- まとめ
名前の由来
アッテヌバーターという名前は「アッテネーター(Attenuator: 減衰器)」と「インバーター(Inverter: 反転器)」を合わせた造語です。つまり、信号のレベルを下げることと、極性を反転させることの両方ができるモジュールです。
どういう仕組みなのか
アッテヌバーターの操作は一つのノブで行います。このノブがちょっと独特で、ゼロを中心にプラス方向とマイナス方向に回せるようになっています。
中央(ゼロ): 信号が完全にブロックされ、何も通らない
右に回す(プラス方向): 信号がそのままの極性で通る。回すほど大きくなる
左に回す(マイナス方向): 信号の極性が反転して通る。回すほど大きくなる
具体的な例で説明します。LFOが-5Vから+5Vのサイン波を出力しているとします。この信号をアッテヌバーターに通します。
ノブを右に20%回すと、-5V〜+5Vだった10Vの振り幅が2Vに縮小され、-1V〜+1Vの信号が出力されます。ノブを左に20%回すと、同じ2Vの振り幅になりますが、極性が反転して出力されます。元のLFOがプラス方向に振れるとき、出力はマイナス方向に振れるわけです。
後半のサウンドデモでは、ノブを中心から左右へ振る操作が、モジュレーションの深さと極性にどう効くかを聴けます。
なぜ必要なのか
蛇口にたとえると分かりやすいです。LFOが水道管から来る水だとすると、アッテヌバーターはその蛇口です。水道管の水圧(LFOの出力電圧)はだいたい全開で来ますが、コップに水を注ぐのに全開の水圧は不要です。蛇口でちょうどいい量に調節する、それがアッテヌバーターの役割です。
ほとんどのモジュレーションソースは出力がフルレベルです。LFOなら-5V〜+5Vとか、エンベロープなら0V〜10Vとか。この信号をそのままVCFのカットオフに入れたら、フィルターが全開と全閉を行き来するような極端な動きになってしまい、まず音楽的には使えません。
アッテヌバーターを間に挟んで信号を適切なレベルに絞ることで、初めて「ちょうどいいモジュレーション」になります。
反転の使いどころ
アッテネーター(ただ信号を小さくするだけのモジュール)と違って、アッテヌバーターには反転の機能があります。この反転がいつ役に立つのかについて、いくつかの使い方があります。
エンベロープの反転
通常のエンベロープは0Vから立ち上がって戻ってくる動きですが、これをアッテヌバーターで反転させると、0Vから下がって戻ってくる動きになります。この反転エンベロープをVCAにかけると「音が鳴っているところだけ音量が下がる」ダッキング(他の音が鳴る瞬間だけ音量を下げる効果)が作れます。サイドチェインコンプレッサー的な使い方です。
LFOの反転
2つのVCOのピッチに同じLFOをかけるけど、片方は反転させる。すると片方が上がるとき片方が下がるような「逆方向の揺れ」が作れます。デチューン(2音をわずかにずらして厚みを出す手法)的な厚みを出すのに使えるテクニックです。
フィルターの動きを逆に
LFOでフィルタースウィープを作るとき、反転させると「閉じていく→開く」が「開いていく→閉じる」になります。音楽的なニュアンスがまったく変わります。
ビルトインアッテヌバーター
多くのモジュールにはCV入力ジャックの横に小さなノブがついていることがあります。これがいわゆる「ビルトインアッテヌバーター」で、そのCV入力専用の深さ調整ノブです。これがあるモジュールの場合は外部にアッテヌバーターモジュールを用意しなくても、直接LFOをパッチしてモジュール上のノブで深さを調整できます。
ただ、すべてのモジュールにビルトインアッテヌバーターがあるわけではないですし、複数のCV信号をまとめて処理したい場合は、やはりスタンドアロンのアッテヌバーターモジュールが必要になってきます。
マニュアルCV源としての使い方
アッテヌバーターにはちょっとしたテクニックがあります。入力に何も繋がない状態でノブを回すと、ノブの位置に応じた固定電圧が出力されるモジュールがあります(内部でリファレンス電圧が入力されているため)。つまり、手動のCV源として使えるわけです。
例えば、VCOのピッチオフセットを微調整したいときに、アッテヌバーターのノブで固定電圧を出して送り込む、なんて使い方ができます。
ユーロラックでの代表的なモジュール
ユーロラック界隈でアッテヌバーターといえば、まず挙がるのがDoepfer A-183-1やMutable InstrumentsのBlindsあたりでしょうか。Blindsは4チャンネルのアッテヌバーターで、CVでアッテヌバーターの量をコントロールすることもできる、かなり多機能なモジュールです。もっとシンプルなものだと、2HPのTrim(2チャンネルアッテヌバーター)や、Befaco DualAtenuverterなどが定番です。
サウンドデモ
LFOをアッテヌバーターに通してからVCOの周波数へ送り、スライダーで深さと極性を切り替えます。中央では揺れが止まり、左右に動かすとピッチの動きが正方向/逆方向へ反転します。
関連する Takazudo Modular 製品
MetaModule 対応モジュール
以下の MetaModule 対応モジュールがアッテヌバーター機能を実装しています。
まとめ
アッテヌバーターは信号のレベルを調整し、必要に応じて極性を反転させるシンプルなモジュールです。地味に見えますが、モジュレーションを実用的に使うために必要なモジュールです。
次回はモジュラーシンセにおけるリズムの基盤となる「クロック」について解説します。ここからは音色だけでなく、時間軸のコントロールに関わる話になっていきます。







