今回はモジュレーションについてです。前回のLFOの記事でLFOを使って音に動きをつける話をしましたが、あれはモジュレーションの一例に過ぎません。今回はもう少し広い視点で、モジュレーションとは何なのか、どういう種類があるのかを整理してみます。
モジュレーションという言葉は、最初は少し抽象的に感じるかもしれません。自分も最初は「LFOで揺らすこと」ぐらいに捉えていましたが、実際にはエンベロープもシーケンサーもランダムも、全部がモジュレーションソースになり得ます。ここが見えてくると、モジュラーシンセのパッチは単なる音の接続図ではなく、「何が何を動かしているか」を考える遊びになってきます。
- モジュレーションとは
- モジュレーションの深さとレート
- 代表的なモジュレーションの種類
- モジュレーションのルーティング
- クロスモジュレーションとリングモジュレーション
- サウンドデモ
- 関連する Takazudo Modular 製品
- MetaModule 対応モジュール
- まとめ
モジュレーションとは
モジュレーションとは、一言で言うと「ある信号を使って別のパラメーターを時間的に変化させること」です。手動でノブを回して音色を変えるのではなく、何かしらの信号がそのノブの代わりに自動で変化を与える。それがモジュレーションです。
この仕組みには2つの要素があります。
モジュレーションソース: 変化を与える側の信号。LFOやエンベロープジェネレーター、シーケンサー、ランダム信号源などがこれにあたります
モジュレーションデスティネーション: 変化を受ける側のパラメーター。VCOのピッチ、VCFのカットオフ、VCAのゲインなど、CV入力を持つパラメーターすべてが対象になり得ます
モジュラーシンセの場合、このソースとデスティネーションをパッチケーブルで自由に繋げるというのが最大の特徴です。固定のシンセサイザーだと「LFOはフィルターにかかります」みたいに決まっていることが多いですが、モジュラーでは何を何に繋いでもOKです。
モジュレーションの深さとレート
モジュレーションを使う上で特に重要なのが、以下の2つのパラメーターです。
深さ(Depth)
モジュレーションがどのくらいの幅でパラメーターを動かすかということです。例えばLFOでVCOのピッチをモジュレーションする場合、深さが浅ければ微細なビブラート、深ければ大きくピッチが上下するサイレンのような効果になります。
深すぎるモジュレーションはたいてい使い物にならないので、ちょうどいい量にスケーリングしてあげる必要があります。この「ちょうどいい量にする」ために使うのがアッテヌバーターです。詳しくはアッテヌバーターの記事で扱っています。
後半のサウンドデモでは、同じLFOでも送り先と深さを変えると、音量の揺れにもピッチの揺れにもなることを確認できます。
レート(Rate)
モジュレーションがどのくらいの速さで変化するかということです。これはモジュレーションソース自体の速度で決まります。LFOなら周波数ノブ、エンベロープならアタックやディケイの長さがこれに相当します。
代表的なモジュレーションの種類
ソースとデスティネーションの組み合わせによって、さまざまなモジュレーションが生まれます。代表的なものをいくつか紹介します。
ビブラート
ソース: LFO(ゆっくり)
デスティネーション: VCOのピッチ
結果: ピッチが緩やかに揺れる
前回の記事でも触れましたが、一番わかりやすいモジュレーションの例です。
トレモロ
ソース: LFO(中程度の速さ)
デスティネーション: VCAのレベル
結果: 音量がリズミカルに脈動する
フィルタースウィープ
ソース: LFO
デスティネーション: VCFのカットオフ
結果: 周期的に音色が変化する
ノートシェイプ(エンベロープモジュレーション)
ソース: エンベロープジェネレーター
デスティネーション: VCAのレベル
結果: 鍵盤を押すたびに音量が立ち上がって消えていく、ノートの形
これはエンベロープジェネレーターの記事で扱った内容ですが、あれもまたモジュレーションの一種です。一回きりのモジュレーションです。
ティンバーエンベロープ
ソース: エンベロープジェネレーター
デスティネーション: VCFのカットオフ
結果: ノートごとに音色の明るさが変化する
アタックで明るくなり、リリースで暗くなるような、アコースティック楽器に近い自然な音色変化が作れます。
FM合成
ソース: VCO(オーディオレート)
デスティネーション: 別のVCOの周波数
結果: 複雑な倍音構造を持つ音色
モジュレーションソースが可聴域の速度になると、もはや「動き」ではなく「音色」として聴こえるようになります。これがFM合成(詳しくはこちら)で、DX7なんかで有名なあのメタリックな音色はまさにこの原理です。
モジュレーションのルーティング
モジュラーシンセで自由度が高いのが、モジュレーションのルーティングの自由さです。いくつかパッチング例を挙げます。
LFOのレートをLFOでモジュレーション
LFOの速度を別のLFOで変化させると、モジュレーション自体の速さが変わっていく、メタ的な動きが作れます。揺れの速度が時間とともに加速したり減速したりするので、一定周期のモジュレーションとは異なる変化が得られます。
モジュレーションの深さをエンベロープで制御
鍵盤を押した瞬間だけビブラートが深くなるような表現。アコースティック楽器の演奏では、音の終わりにビブラートを深くするのが自然ですが、エンベロープでモジュレーションの深さをコントロールすればそのような表現も可能です。
セルフパッチング
モジュールの出力を自分自身の入力にフィードバックさせるテクニック。フィルターの出力をフィルターの入力に戻すと自己発振が始まるなど、予測しにくい挙動になります。
クロスモジュレーションとリングモジュレーション
少し応用的な話ですが、2つの信号が互いにモジュレーションし合う「クロスモジュレーション」や、2つの信号を掛け算して和と差の周波数を生み出す「リングモジュレーション」というテクニックもあります。どちらもかなり複雑で予測しにくい音が出てくるので、実験的な音作りに向いています。
サウンドデモ
同じLFOでも、VCAへ送れば音量の揺れ、VCOへ送ればピッチの揺れになります。レートは揺れの速さを、ケーブル上の量はその揺れが届く深さを決めます。
関連する Takazudo Modular 製品
VCV Rackのプラグインを物理ノブとジャックで操作できる26HPのハイブリッドモジュール。160以上の内蔵モジュールに加えて1,500を超えるサードパーティプラグインに対応し、microSDとUSB-Cで拡張可能な柔軟なシステム。

同一の三角波コアのアナログVCOを2基搭載した16HPのデュアルオシレーター。両VCOがスルーゼロFMに対応し、右VCOは左へハードまたはソフトシンク可能、LFOモード切替や6系統の波形出力も備える。

三角波コアに0〜180度の可変位相遅れを持つトライアングル位相アニメーター回路を搭載したアナログVCO。スルーゼロのリニア位相変調(PM)とリニアFM、指数FMに対応し、位相モジュレーションで倍音を描き出す18HPのオシレーター。

MetaModule 対応モジュール
以下の MetaModule 対応モジュールが主要なモジュレーションソースです。
まとめ
モジュレーションは「信号で別のパラメーターを動かす」というシンプルな概念です。LFO、エンベロープ、シーケンサー、ランダム、そして他のVCOまで、あらゆるものがモジュレーションソースになり得て、CV入力を持つあらゆるパラメーターがモジュレーションの対象になります。そのソースとデスティネーションの組み合わせが自由なのがモジュラーシンセの構造です。
ただ、モジュレーションを実用的に使うためには「深さ」を適切にコントロールする必要があります。次回はそのために欠かせないユーティリティモジュール、アッテヌバーターについて解説していきます。







