シリーズ後半では、音源や制御信号の幅をさらに広げていきます。モジュラーシンセの音源というと、VCOから出るサイン波やノコギリ波が真っ先に思い浮かぶかもしれません。シリーズ序盤でも波形の話をしましたが、今回はそれらとは全く性質の異なる音源、「ノイズ」について書いていきます。
- ノイズとは
- ノイズの種類(色)
- オーディオソースとしてのノイズ
- モジュレーションソースとしてのノイズ
- ユーロラックでのノイズモジュール
- サウンドデモ
- 関連する Takazudo Modular 製品
- MetaModule 対応モジュール
- まとめ
ノイズとは
テレビの砂嵐、川のせせらぎ、風の音。こういった音に共通しているのは、繰り返しのパターンが無いランダムな信号であるということです。VCOが規則的に繰り返す波形を出力するのに対し、ノイズジェネレーターはランダムな電圧の変動を出力します。このランダムさゆえに、ノイズには特定のピッチ(音程)がありません。「ザーッ」というあの音、あれがノイズです。
モジュラーシンセにおけるノイズの役割は大きく2つあります。1つはオーディオソースとして、つまり音を作る素材として使うこと。もう1つはモジュレーションソースとして、パッチにランダムな変化をもたらすことです。
ノイズの種類(色)
ノイズには「色」で分類される種類があります。これは周波数帯域ごとのエネルギー分布の違いによるもので、それぞれ聴こえ方がかなり異なります。
ホワイトノイズ
全ての周波数に均等なエネルギーを持つノイズです。名前は、全ての色の光を混ぜると白になることに由来しています。聴いた感じとしては、明るくてシャリシャリとしたヒスノイズのような印象です。人間の耳は高い周波数ほど大きく感じる傾向があるため、ホワイトノイズは少し高域が目立つように聴こえるかもしれません。
ピンクノイズ
1オクターブあたり3dBずつ高域が下がっていくノイズです。これは人間の聴覚特性に近いエネルギー分布になっていて、聴いた感じでは全帯域がバランスよく聴こえます。スピーカーのテストや、音響調整のリファレンスとして使われることも多いです。
レッド(ブラウン)ノイズ
1オクターブあたり6dBと、ピンクよりさらに急激に高域が下がるノイズです。ブラウニアンノイズとも呼ばれます。低域がゴロゴロと豊かで、遠くの雷や海鳴りのような印象があります。
このほかにも、高域が強調されるブルーノイズや、デジタル的に量子化されたデジタルノイズなど、いくつかのバリエーションがあります。
オーディオソースとしてのノイズ
ノイズの代表的な使い方は、パーカッション系の音の合成でしょう。スネアドラム、ハイハット、シンバルといった打楽器の音には、実は大量のノイズ成分が含まれています。ノイズをフィルター(VCF)に通し、エンベロープジェネレーターで音量を整形してあげることで、様々な打楽器の音が作れます。
例えば、ホワイトノイズをハイパスフィルターに通して短いエンベロープをかければ、ハイハットのような音になります。ピンクノイズをバンドパスフィルターに通せば、スネアっぽいテクスチャーが得られるでしょう。シリーズの前半で紹介したVCFやエンベロープジェネレーターとの組み合わせが活きてくるところです。
後半のサウンドデモでは、ノイズの色とフィルター操作が、ざらつきや明るさにどう出るかを確認できます。
また、風の音や海のような自然環境音を作るのにもノイズは重宝します。ゆっくりとしたLFOでフィルターのカットオフを動かしながらノイズを通すと、風が吹いたり止んだりするような、とてもオーガニックなサウンドが作れたりします。
モジュレーションソースとしてのノイズ
ノイズのもう一つの重要な役割は、ランダムなモジュレーションソースとしての使い方です。
典型的なのは、ノイズをサンプル&ホールド回路の入力に使うパターンです。クロックのタイミングでノイズの電圧をサンプリングすることで、ランダムなステップ状の電圧列が生成されます。これをVCOのピッチに送れば、いわゆる「ピコピコ」したランダムメロディになりますし、フィルターのカットオフに送れば、音色がランダムに変化するパッチが作れます。
また、ノイズをローパスフィルターで穏やかにしてからVCOのピッチにわずかに加えるという使い方もあります。これにより微妙なピッチの揺らぎが生まれ、デジタルオシレーターの均一すぎる音にアナログ的な「生っぽさ」を与えることができます。完全に正確なピッチよりも、わずかにズレがある方が人間の耳には心地よく聴こえることが多いです。
ユーロラックでのノイズモジュール
ユーロラックの世界には様々なノイズジェネレーターがあります。シンプルにホワイトノイズだけを出すものから、複数の色のノイズを切り替えられるもの、さらにはアルゴリズムで複雑なノイズパターンを生成するものまで多種多様です。
モジュラーシンセを始めたばかりの頃は、ノイズジェネレーターの必要性をあまり感じないかもしれませんが、パーカッションを作りたい、パッチにランダムな動きを加えたいと思ったときに、ノイズモジュールがあると表現の幅がぐっと広がります。
サウンドデモ
ホワイトノイズとピンクノイズを切り替え、VCFのカットオフでざらつきや明るさを絞り込んでいきます。出力のスペクトラムを見ると、フィルター操作で高域が削られる様子も追えます。
関連する Takazudo Modular 製品
アナログ三角波コアにデジタル位相処理とウェーブテーブル機能を融合したハイブリッドVCO。スルーゼロFMやウェーブモーフィングに対応し、microSDから独自波形も読み込める16HPのオシレーター。

ヴィンテージ系BJT回路と高精度チップによるクリーン回路の2種類のVCAを各チャンネルに備えたデュアルVCA。ゼロクロス検出によるクリックノイズ低減、ステレオリンク、オーバードライブスイッチを12HPに凝縮。

スルーゼロリニアFMに対応した三角波コアのアナログVCO。広いチューニングレンジと優れた熱安定性を備え、クラシックなアナログサウンドとTZFMによる複雑な倍音表現をシンプルな12HPで両立する。

VCV Rackのプラグインを物理ノブとジャックで操作できる26HPのハイブリッドモジュール。160以上の内蔵モジュールに加えて1,500を超えるサードパーティプラグインに対応し、microSDとUSB-Cで拡張可能な柔軟なシステム。

MetaModule 対応モジュール
以下の MetaModule 対応モジュールがノイズを生成します。
まとめ
ノイズは一見すると「ただの雑音」に思えるかもしれませんが、モジュラーシンセにおいては非常に重要な素材です。パーカッション合成の素材として、環境音の生成に、そしてランダムなモジュレーションソースとして、実に様々な使い道があります。
次回はそのノイズとも関係の深い「クオンタイザー」について見ていきます。ランダムな電圧を音楽的なスケールに合わせる、ちょっとユニークなモジュールの話です。





