シリーズ6回目、VCA(Voltage-Controlled Amplifier、電圧制御アンプ)についてです。
ここまでVCO(音を作る)、VCF(音の倍音を削る)と来ましたが、VCAは「音の大きさを電圧で操作する」モジュールです。アンプというと、ギターアンプとかスピーカーのアンプを想像するかもしれませんが、モジュラーシンセのVCAは増幅するというよりは「通過する信号の量を電圧でコントロールするゲート」のようなイメージの方が近いかもしれません。
- なぜVCAが必要なのか
- VCAの仕組み
- リニアとエクスポネンシャル
- VCAの応用的な使い方
- VCAを選ぶときのポイント
- サウンドデモ
- 関連する Takazudo Modular 製品
- MetaModule 対応モジュール
- まとめ
なぜVCAが必要なのか
VCOは電源が入っている限り、ずっと音を出し続けます。ピアノの鍵盤を押しっぱなしにしている状態とでも言いましょうか。普通の楽器は、弾いた瞬間に音が出て、手を離すと音が消えます。モジュラーシンセでこの「音の出始めと消え際」を作るのがVCAの仕事です。
もし VCA が無かったら、VCO の音はずーっと鳴り続けるだけで、音楽的なフレーズを演奏することはできません。ドローンサウンド(持続的に鳴り続ける音)を作りたいなら別ですが、普通に曲を作ろうと思ったらVCAは必須のモジュールです。
例えるなら、VCAは水道の蛇口のようなものです。蛇口を開ければ水(音)が流れ、閉めれば止まる。そしてこの蛇口の開閉を電圧で自動的に操作できるというのがVCAです。
VCAの仕組み
VCAの基本的な構造はシンプルです。2つの入力があります。
信号入力(Signal Input): VCOやVCFから来る、加工したい音声信号
CV入力(Control Voltage Input): 音量をコントロールする電圧信号
CV入力が0Vの時、VCAは完全に閉じていて音は通りません。CVの電圧が上がるにつれてVCAが開き、信号が通過するようになります。CVの電圧が最大の時、入力信号がそのまま出力されます。
この仕組みにより、CV信号のカーブに沿って音量が変化するわけです。エンベロープジェネレーターからのCVを繋ぐと、「ふわっと音が立ち上がって、だんだん消えていく」というような自然な音量変化が作れます。
リニアとエクスポネンシャル
VCAにはレスポンスの種類が2つあります。
リニア(Linear)
CV電圧と出力レベルが正比例するモードです。CVが2倍になると出力も2倍。CVのカーブがそのまま音量変化のカーブになります。CV信号をきっちり正確にコントロールしたい場合や、CV信号自体をVCAで制御する場合(つまりオーディオ以外)に向いています。
エクスポネンシャル(Exponential)
人間の耳は音量を対数的に感じるので、リニアだと自然に聞こえないことがあります。エクスポネンシャルモードでは、CVと出力の関係が対数カーブになっていて、音量変化がより自然に感じられます。オーディオ信号を通す時はこちらの方がしっくりくることが多いかと思います。
ちなみにオーディオ用のボリュームつまみにも「Aカーブ」(対数)と「Bカーブ」(直線)があるのですが、それと同じ発想です。
VCAの応用的な使い方
VCAは「音量コントロール」だけだと思われがちですが、モジュラーシンセでは多用途に使われるモジュールです。
モジュレーションの深さを制御する
例えばLFOでVCOのピッチを揺らすビブラートを作りたいとして、そのLFOとVCOの間にVCAを挟むとどうなるでしょう。VCAに送るCVを変えることで、ビブラートの深さを電圧でコントロールできるようになります。
演奏中にモジュレーションホイールのように少しずつビブラートを深くしたり、エンベロープで最初は揺れなしで徐々に揺れが増していくような表現が可能になります。
トレモロ
LFOをVCAのCV入力に繋ぐだけで、音量が周期的に上下するトレモロ効果が得られます。ギターアンプの定番エフェクトですが、モジュラーではLFOの波形を変えることでトレモロのキャラクターを自在に変えられます。
後半のサウンドデモでは、このトレモロのパッチで、VCAがCV量に応じて音をどれだけ通すかを確認できます。
ゲートでミュート/アンミュート
EP.2で解説したゲート信号をVCAのCVに繋ぐと、ゲートがHIGHの間だけ音が通る、つまりゲートのオン/オフで音をミュート/アンミュートできます。シーケンサーのゲート出力を使えば、リズミックに音を刻むことも可能です。
CVのミキシング
VCAは音声信号だけでなく、CV信号を通すこともできます。複数のCVをVCA経由で混ぜたり、CVの量を動的にコントロールしたりと、パッチの中で信号のルーティングを柔軟に組めるようになります。「VCAはいくつあっても足りない」とモジュラー界隈でよく言われるのは、このような応用があるからです。
VCAを選ぶときのポイント
VCAモジュールを選ぶ際には、いくつかチェックポイントがあります。
リニア/エクスポネンシャルの切り替え: 両方使えると便利
チャンネル数: 1チャンネルのコンパクトなものから、4〜6チャンネルのマルチVCAまで色々あります
CV入力のアッテネーター(信号の量を減らすつまみ): 外部CVの効き具合を手元で調整できるか
信号の品質: ノイズが少ないか、クリッピングしないか
パッチが複雑になってくると、とにかくVCAがたくさん欲しくなるので、マルチチャンネルのVCAを持っておくと重宝するかと思います。
サウンドデモ
VCOの音をVCAに通し、LFOでゲインを周期的に動かします。ケーブル上のCV量を上げるほど、控えめな揺れから深いトレモロへ変わります。
関連する Takazudo Modular 製品
2系統のVCAを4HPに収めたモジュール。各VCAはノブに加え2つのCV入力を持ち、エンベロープとLFOを同時に掛け合わせるといった複合的な振幅コントロールを1モジュールで実現できる。

クラシックなBuchla 200シリーズの設計インスパイアなローパスゲート。レゾナンス調整とDepthコントロールを搭載。VCA、VCF、またはその組み合わせとして機能。アルミニウムパネル版。

4チャンネルの独立したCV/Gate出力を備え、確率や分布、クオンタイゼーションを自在に操る高機能ランダム電圧ジェネレーター。

5チャンネルのVCAとミキサーを統合したモジュール。各チャンネルはリニア/ログ切替、ソロ/ミックス/ミュート切替、個別出力を装備。

オーディオを録音・ループし、スピード、ピッチ、グラニュラー処理をリアルタイムに制御。CV対応で音の分解・再構築を自在に行う複雑系オーディオプロセッサー。

ADDAC112専用のスタンドアロンフレーム。ユーロラックケース不要で、ルーパー&グラニュラープロセッサーを単体で使用可能にする。電源と操作性を備えた専用設計。

2つのマルチモードフィルターを搭載し、シリーズ/パラレル接続も可能な柔軟な設計。ステレオをLFOで揺らし手も便利。しかもコンパクト。

Vactrolを用いた2系統のパッシブローパスゲートを2HPに収めたモジュール。ノブは持たずCV入力のみでゲートの開き具合を制御し、パーカッシブで弾力のあるLPGサウンドをスリムなパネルで扱える。

VCV Rackのプラグインを物理ノブとジャックで操作できる26HPのハイブリッドモジュール。160以上の内蔵モジュールに加えて1,500を超えるサードパーティプラグインに対応し、microSDとUSB-Cで拡張可能な柔軟なシステム。

MetaModule 対応モジュール
以下の MetaModule 対応モジュールがVCA機能を実装しています。
まとめ
VCAは電圧で信号の通過量を制御するモジュールであり、モジュラーシンセでは音量のダイナミクスを作るために不可欠な存在です。VCO→VCF→VCAというサブトラクティブシンセシス(減算合成)の基本チェーンにおいて、VCAは最後の「音を仕上げる」役割を担っています。
VCAはエンベロープジェネレーターと組み合わせて使われることが多いモジュールです。次回はそのエンベロープジェネレーターについて書きます。「ADSR」という4つのステージで音の形を彫刻するモジュール。これとVCAが合わさることで、はじめてモジュラーシンセの音は「楽器の音」になります。







