どうもTakazudoです。「キーワードで理解するモジュラーシンセ」第3回。
前回までで、CV(パラメーターを制御する電圧信号)とゲート/トリガー(タイミングを伝える信号)について解説しました。これらは言わば「指示」の仕組みです。今回はいよいよ「音そのもの」の話に入ります。テーマは 波形(ウェーブフォーム) です。
モジュラーシンセで音を作るとき、オシレーターというモジュールが音の元になる波形を出力します。この波形の形が、音の「音色」を決める大きな要因になっています。同じ音程でも、波形が違えばまったく違う音に聞こえる。今回はその仕組みを紐解いていきます。
- 波形とは何か
- 主な波形の種類
- 波形の比較表
- オーディオ用途とCV用途
- 波形に関連するユーロラックモジュール
- サウンドデモ
- 関連する Takazudo Modular 製品
- MetaModule 対応モジュール
- まとめ
波形とは何か
波形というのは、電圧が時間とともにどう変化するかを表した形のことです。オシレーターは一定の周期で電圧を繰り返し変化させていて、この繰り返しのパターンが波形です。
身近なもので例えると、水面の波を横から見たときの形に似ています。穏やかな波はゆるやかなカーブを描き、荒い波はギザギザした形になる。音も同じで、波の形が違えば聴こえ方が変わります。
ここで少しだけ物理の話をすると、すべての周期的な音は「複数のサイン波の組み合わせ」として分解できるという理論があります。フーリエ解析という理論なんですが、要は、波形の形が違うと、含まれるサイン波の数や強さが違い、それが音色の違いとして聞こえるということです。
基本の周波数(ファンダメンタル)が音程を決め、その整数倍の周波数の成分(倍音、ハーモニクス)の構成が音色を決める。波形の話はこの「倍音構成の違い」を視覚的に表しているとも言えます。
後半のサウンドデモでは、ここで見た基本波形を、耳で聴く音色、スコープ上の形、スペクトラムの広がりとして確認できます。
主な波形の種類
モジュラーシンセのオシレーターが出力する基本的な波形は主に4種類あります。それぞれの特徴を見ていきます。
サイン波
最もシンプルな波形です。倍音を一切含まず、基本周波数のみで構成されています。聴いた感じはとても澄んでいて、フルートの音に近い印象。
倍音がないということは、フィルターをかけても音色があまり変化しないということでもあります。サブトラクティブ・シンセシス(フィルターで倍音を削って音を作る方法)には向いていませんが、FM合成のキャリアやモジュレーターとして、あるいはLFOのモジュレーション波形としてよく使われます。
サイン波でのモジュレーションは滑らかで自然な揺れになるので、ビブラートなどをかけたいときに最適です。
ノコギリ波
全ての倍音(奇数次も偶数次も)を含む波形で、倍音の強さは1/n(nは倍音の次数)で減衰していきます。聴いた感じは明るくブザーっぽい音で、弓で弦を弾いたときの音にも近いと言われます。
全ての倍音を含んでいるので、フィルターで削る「素材」として最も使い勝手が良い波形です。サブトラクティブ・シンセシスの出発点として最もポピュラーな選択肢と言ってよいでしょう。リード、ベース、パッドなど幅広い音作りに使えます。
矩形波(スクエア波)
奇数次の倍音のみを含む波形で、偶数次の倍音がありません。聴いた感じは中が空洞のような独特の音色で、クラリネットに近いと表現されることもあります。
矩形波は実は「パルス波」の一種で、High(高い電圧)とLow(低い電圧)の比率が50:50のものを指します。この比率(デューティ比)を変えるとパルス波になり、音色が変わります。デューティ比を狭くすると、薄くて鼻にかかったような音になる。このパルス幅をLFOなどで動かすことを パルス幅変調(PWM / Pulse Width Modulation) と呼び、音に動きと厚みを加える定番テクニックです。
三角波
奇数次の倍音のみを含みますが、矩形波に比べて倍音の減衰が速い(1/n²)ため、ずっと柔らかい音になります。サイン波と矩形波の中間ぐらいの明るさ、というとイメージしやすいかもしれません。
LFOの波形としても使われることが多く、サイン波に近い滑らかなモジュレーションが得られます。
波形の比較表
| 波形 | 倍音構成 | 音の特徴 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| サイン波 | 基本周波数のみ | 純粋、澄んだ音 | FM合成、サブベース、モジュレーション |
| ノコギリ波 | 全倍音 | 明るい、ブザーっぽい | サブトラクティブ合成の素材全般 |
| 矩形波 | 奇数次のみ | 中空的、木管楽器的 | ホロウなトーン、サブベース |
| パルス波 | 幅で変化 | 薄い、鼻にかかる | パルス幅を動かす音作り |
| 三角波 | 奇数次(弱い) | 柔らかい、穏やか | 穏やかな音、スムーズなモジュレーション |
| ノイズ | ランダム全帯域 | ザーッというシャー音 | パーカッション、効果音 |
オーディオ用途とCV用途
波形はオシレーターから音として出力されるだけでなく、LFO(低周波オシレーター)から制御信号として出力される場合もあります。同じ波形の形でも、使い方によって役割が変わります。
サイン波LFO: 滑らかで自然な揺れ。ビブラートやトレモロに
三角波LFO: サインに似た滑らかなモジュレーション
ノコギリ波LFO: 徐々に上がって急に戻る(またはその逆)。スイープ系の効果に
矩形波LFO: カクカクとしたオン/オフの切り替え。トレモロやアルペジオ的な効果に
このように、波形の「形」そのものがモジュレーションの「性格」を決めます。同じパラメーターを揺らすにしても、サイン波で揺らすのと矩形波で揺らすのでは全く違う効果になります。
波形に関連するユーロラックモジュール
実際にこれらの波形を扱うモジュールをいくつか紹介します。
VCO(電圧制御オシレーター): 複数の波形を同時に出力するものが多い。
Doepfer A-110やIntellijel Dixie II+は定番の入門VCO。
ウェーブフォルダー: 波形を折り返して倍音を加えるモジュール。ノコギリ波をさらに過激にしたような音が作れる。Intellijel uFoldが人気。
ウェーブシェイパー: 波形の形を変形させるモジュール。入力波形をねじったり歪ませたりして新しい音色を生み出す。
オシロスコープ: 波形を目で見られるモジュール。音作りの学習にとても役立つ。
自分の出している音がどんな波形なのか確認できると理解が深まります。
サウンドデモ
VCOの波形を切り替えながら、耳で聴く音色とスコープ上の形、スペクトラムの広がりを並べて確認します。周波数も少し動かして、同じ波形が音程だけを変えて鳴る様子を試せます。
関連する Takazudo Modular 製品
同一の三角波コアのアナログVCOを2基搭載した16HPのデュアルオシレーター。両VCOがスルーゼロFMに対応し、右VCOは左へハードまたはソフトシンク可能、LFOモード切替や6系統の波形出力も備える。

三角波コアに0〜180度の可変位相遅れを持つトライアングル位相アニメーター回路を搭載したアナログVCO。スルーゼロのリニア位相変調(PM)とリニアFM、指数FMに対応し、位相モジュレーションで倍音を描き出す18HPのオシレーター。

スルーゼロリニアFMに対応した三角波コアのアナログVCO。広いチューニングレンジと優れた熱安定性を備え、クラシックなアナログサウンドとTZFMによる複雑な倍音表現をシンプルな12HPで両立する。

VCV Rackのプラグインを物理ノブとジャックで操作できる26HPのハイブリッドモジュール。160以上の内蔵モジュールに加えて1,500を超えるサードパーティプラグインに対応し、microSDとUSB-Cで拡張可能な柔軟なシステム。

MetaModule 対応モジュール
以下の MetaModule 対応モジュールで、さまざまな波形を生成・確認できます。
まとめ
波形はモジュラーシンセにおける「音の素材」です。サイン波の純粋な音から、ノコギリ波の倍音豊かな音まで、波形の種類によって音色の出発点が決まります。
実際の音作りでは、このように波形を選んだ上で、フィルターで倍音を削ったり、エンベロープで時間変化を加えたり、モジュレーションで動きをつけたりしていきます。波形は「音色のスタート地点」にあたります。
ちなみに、波形を「聴く」だけでなく「見る」ことができるのもモジュラーシンセの良いところで、オシロスコープモジュールやVCV Rackのスコープモジュールを使うと、自分が扱っている信号がどんな形をしているのか目で確認できます。目と耳の両方で波形を理解すると、音作りの感覚がかなり掴みやすくなります。
次回は VCO(電圧制御オシレーター) について解説します。今回紹介した波形を実際に生み出すのがVCOです。CVで音程を制御し、ゲートで発音タイミングを決め、VCOが波形を出力する……ここまでの3回のキーワードがVCOで繋がってきます。







