Takazudo Modularにて取り扱わせて頂いている、OXI InstrumentsのOXI Coralの紹介/解説記事です。
OXI Coralは、14HPのマルチティンバーなシンセサイザーモジュールです。複数の音色を扱うための8ボイスをパートに分けて演奏でき、フィルターやエンベロープ、コーラス、リバーブ、ディレイも内蔵しています。2026年9月30日公開のファームウェア3.0では、27種類のエンジンから最大10種類を選んで搭載する方式になりました。搭載できるエンジン数と、同時に鳴らせるボイス数は別で、発音数の上限はエンジンによって異なります。
- 商品写真
- マニュアルとガイド
- デジタルモジュールとは何?
- OXI Coralとはこんなモジュール
- OXI CoralとPlaits
- ファームウェア3.0のエンジン選択
- ファームウェア3.0の演奏・設定機能
- OXI Coralのパート機能
- OXI CoralとOXI ONE
- 参考動画
- 更新と公式Webアプリ
- 仕様
- 製品の保証について
商品写真




ブラックバージョン(右列)は通常版と同じ機能・仕様です。パネルやノブ等の外装パーツのカラーリングが異なります。
マニュアルとガイド
Takazudo Modularでは、本製品のマニュアルやガイド記事を作成し、公開しています。以下よりご参照下さい。
デジタルモジュールとは何?
OXI Coralはハイスペックなデジタルモジュールです。このモジュールの説明を始める前に、軽くデジタルモジュールと呼ばれている類のモジュールとはなにかについて軽く触れておきます。
モジュラーシンセサイザーの世界で、一般的に「デジタルモジュール」というのは、高い処理能力を持ったICチップを利用したり、開発者が自身でプログラムを書き、モジュール内蔵のICチップにインストールして作られているようなモジュールを指してそう呼ばれます。これと反対なのが「アナログモジュール」で、このアナログというのは、トランジスタ、抵抗、コンデンサ等のアナログ回路部品を組み合わせて作られている、昔ながらの作り方のモジュールのことがそう呼ばれます。アナログモジュールは、ディスクリート(discrete)と言う言葉で表現されることもあり、この言葉はモジュラー界隈のWebサイトでたまに見かけるのではないでしょうか。
ただ、この区分けには大きな意味があるわけではなく、どのくらいのアナログさの部品をdiscreteと呼ぶのかみたいなところは曖昧です。デジタルモジュールだってアナログ部品はもちろん使いますし、ICといっても多様なので、今の時代はそういうデジタル部品が色々使われるようになってきたというぐらいの認識で十分です。
ここで抑えておきたいのは、昨今は技術の進歩により、モジュラーシンセのような小型の機械の中にも、かなり高度な処理が行える部品が安価で使えるようになったということです。
OXI Coralとはこんなモジュール
それでOXI Coralの話に戻りますが、このOXI Coralはかなりハイスペックな、そんなデジタルな部品をフルに活かして作られているシンセモジュールです。ベースはオシレーターですが、エンジンの発音数上限に応じて最大8ボイスを演奏できるほか、ローパスフィルターやコーラス、リバーブ等のエフェクトまで内蔵しているため、ここではOXI Coralのことをシンセモジュールと表現することにします。
このOXI Coralの機能はかなり多彩なので、ひとまず従来の製品紹介をもとに、ファームウェア3.0での機能を9項目に分けて紹介します。このCoralが、ただのオシレーターではなく、多機能なシンセサイザーであることがご理解頂けるでしょう。
1. ファットなサウンド
Coralは8ボイスを基本とする構成です。ただし、FMX7は最大6ボイス、ACID 2は最大4ボイス、Stitcherは1ボイスとなり、すべてのエンジンを8音同時に鳴らせるわけではありません。
エンジンによっては、1ボイスで最大8個のオシレーターを持つことができ、つまり一度に64個のオシレーターが鳴り響かせることも可能です。
2. ポリフォニック
Coralは8ボイスの構成です。そしてこのボイスそれぞれが、独立したフィルター、アンプ、モジュレーション、エンベロープ、エフェクトセンドを持っており、これらは個別に制御可能です。
MIDIで細かなコントロールが可能ですが、1 Gateと1 CV(V/Oct)での演奏も可能。この場合は新しいボイスが再生されるたび、別のボイスを割り当てて再生します。
3. マルチエンジン
ファームウェア3.0には27種類のエンジンがあり、公式Firmware Updaterで最大10種類を選んで1つのファームウェアを作成します。ロードしたエンジンを各パートやボイスに割り当てます。組み合わせによってはFlash/RAM容量の上限に達するため、10種類以内でもすべての組み合わせが搭載できるわけではありません。
4. マルチパート
8つのボイスは自由に異なるパートに分割できます。フィルター、エンベロープ設定、エンジン、FX送信、パンなど、すべてのパラメーターは各パートまたはボイスごとに独立して設定することができ、すぐに複雑なパッチを作成することができます。
5. サンプル再生
WAVPLAYERエンジンは、SDカード内のモノ/ステレオのWAVファイルを再生します。マニュアルには16bit、24bit、32bit、32bit floatと44.1/48kHzの記載があり、負荷を抑える用途にはU3カードと48kHz・16bitが推奨されています。対応サンプルレートにはマニュアルと公式FAQで記載の差があるため、使用する素材については公式サポートも併せて確認してください。Stitcherの素材の扱いはWAVPLAYERとは異なります。
サンプルにオーバードライブを加え、フィルターとエンベロープを使用して音を整え、チューンでピッチのコントロールが可能。CV入力やCC MIDIコマンドを使用してリアルタイムでサンプルファイルまたはフォルダーを変更することもできます。
6. カスタムウェーブテーブル
SDカードのWavetables/にCoral用のWAVウェーブテーブルを置き、ウェーブテーブルエンジンに使用できます。通常のWAVETABLEエンジンでは3つの軸を操作して音色を変化させます。ファームウェア3.0ではエンコーダーの選択画面でテーブルを選べ、電源を入れ直しても保持されます。保存したプリセットもそれぞれのテーブルを記憶します。作成には公式Waveform Generatorを使用できます。以下の画像は従来のデスクトップ版OXI Wave Appの画面です。


7. MIDIインテグレーション
MIDI CCを使い、FX送信からサンプル選択まで、あらゆるパラメーターのコントロールが可能です。CVによる制御と組み合わせ、コンパクトで強力なコンボを実現します。
8. エフェクト
内臓のSpaceエンジンによる、深く豊かなアンサンブルコーラスを利用可能です。内臓のエフェクトセンドはボイスごとに設定可能です。
9. MPE
ファームウェアアップデートにより、MPEをサポートしました。MPEではノートごとにピッチベンドやプレッシャー等を扱えます。利用するエンジンの発音数上限はMPEでも適用されます。
OXI CoralとPlaits
既にモジューラーシンセについてそれなりに知識がある方向けに書くと、OXI Coralのデフォルトファームウェアは、Mutable Instrumentsのオープンソースなモジュール、Plaitsの音にかなり似ています。
というのも、OXI Coralのサウンドエンジンは、このPlaitsのエンジンを参考にして作られているようです。これはOXI CoralのWebページでも、以下のように言及されています。
It brings an awesome sound thanks to its selection of powerful engines from MI Plaits plus custom ones like the MDO, the triple axis Wavetable and the new distorted Harmonic Osc.
そこに前述の通り、サンプルプレイバック機能やカスタムウェーブテーブル機能、エフェクト機能等を追加し、8ボイスに仕上げてMIDI制御できるようにしたものがOXI Coralという風に考えると、わかりやすいかもしれません。
ファームウェア3.0のエンジン選択
従来はエンジンの組み合わせが決まった複数のファームウェアを選んでいました。3.0では、公式Firmware Updaterで27種類から最大10種類を選び、その並び順でエンジンを搭載します。例えば、鍵盤系とドラムを組み合わせたり、ウェーブテーブル中心の構成にしたりと、使う音源に合わせて選択できます。
以下は3.0の追加エンジンのうち6種類です。各エンジンのパラメーターや発音数の扱いは、v3マニュアルの「5 ENGINES」を参照してください。
| エンジン | 音源の概要 |
|---|---|
| FMX7 | DX7の.syxバンク/パッチを読み込む6オペレーターFM音源。最大6ボイスで、バンクとパッチはパートごとに保持します。 |
| ACID 2 | 303系の音源で、4つのディストーション領域と任意のDevilfish設定を備えます。最大4ボイスです。 |
| OB-VA | Oberheim系のバーチャルアナログ音源。マルチモードフィルターと、ボイスごとのアナログ的な揺らぎを扱います。 |
| String 2 | ストリングス、ブラス、オルガン、クワイアを持つストリングマシン音源。アンサンブル、フェイザー、Smart Chordに対応します。 |
| PianoZ | SDカードから読み込むピアノ/Rhodes音色と、オルガンを扱う鍵盤音源。Smart Chordにも対応します。 |
| Stitcher | サンプルの2秒間の範囲を3つのループに組み替える、1ボイスの生成的なドローン・ルーパー。通常のノブ配置とは役割が異なります。 |
Smart Chordは1つのノートからコードを演奏する機能です。スケール数は公式資料間で記載が異なるため、ここでは固定の数を示していません。
FMX7、PianoZ、Stitcherなどは容量を多く使用します。UpdaterのFlash/RAMメーターで、選んだ組み合わせが搭載可能かを確認します。WAVPLAYERも27種類のうちの1つなので、サンプラーを使わない構成なら選択から外すことができます。
ファームウェア3.0の演奏・設定機能
パート上の各エンジンは、そのエンジンの音色設定を個別に保持します。別のエンジンに切り替えてから戻すと元の設定に戻り、リバーブ、ディレイ、コーラスのセンド量はパートに紐づいたままです。
Options Ringは、エンコーダーの操作で開く設定メニューです。MPEやディレイ、PolyCV等をモジュール上で設定でき、変更はSDカードのSystem/options.txtにも反映されます。MIDI/CVの割り当てやコントローラーとの連携は、マニュアルの「4 CV AND MIDI MODULATION」「7 MIDI IMPLEMENTATION」を参照してください。
Droneは、演奏したノートを離した後も保持するパートごとの設定です。ただし、ドラムエンジンとWAVPLAYERには対応しません。FMX7等の音源内のエンベロープによる減衰は残り、Smart ChordやMPEではキーを離すとリリースする例外もあります。発音数の上限もそのまま適用されます。
プリセットは通常10個、extpre設定で100個を扱えます。v3ではプリセットごとのウェーブテーブルが保存され、旧プリセットはグローバルのデフォルトテーブルを使います。新しいPreset Managerでの作成・編集では、Coralに搭載したエンジンの並びと設定を合わせてから、SDカードへプリセットを書き出す流れになります。
OXI Coralのパート機能
Coralのパート機能についても、もう少し触れておきます。
Coralは8ボイスと言っても、1つのプリセットを8ポリで鳴らせるだけではありません。Oxi Coralには「パート」という概念があり、例えば1つ目のパートとして4ボイスのシンセを設定、2つ目のパートとしてバスドラを1ボイス、3つ目のパートとしてハイハットを1ボイス……という具合にして、8ボイスを自由にグルーピング出来るパート機能を有しています。
このパート機能とMIDIによる制御をフル活用すれば、OXI Coral一つだけに、楽曲やライブ演奏の音源を担わせることも可能でしょう。パート機能の存在は、OXI Coralの可能性を、高度にカスタマイズ可能なマルチパート、マルチティンバーのシンセサイザーへと引き上げています。
OXI CoralとOXI ONE
このOXI Coralは、同OXI Instruments社のシーケンサーであるOXI ONEとの相性は抜群です。と言うよりも、OXI ONEがまずあり、そこに合うモジュールを考えた結果OXI Coralが作られたのではと思えるほどの親和性があります。
OXI Coralにはここまでに書いてきたようにたくさんの機能があります。そしてそれらはMIDI CCでほぼ全てがコントロール可能になってはいるのですが、このOXI Coral自体に用意さているノブ/ボタン/ジャックの数は限られているのです。
Instruments Definition
OXI ONEはMIDI出力が可能です。そしてそれぞれのチャンネルに対し複数のCCシーケンスを組むこともできます。さらに、OXI ONEはファームウェア4.0のバージョンアップ時に、Instruments Definitionという、MIDI CCのプリセットとして、内蔵されている著名なMIDI機器のパラメーターマッピングを選べる機能が追加されました。

これが何を意味するかと言うと、OXI ONEでCoralのフィルタのCutOffを変更したいと思った場合、Coralのマニュアルを見て「えーとCutOffは何番だっけ……1番でした!じゃあOXI ONEではCCとして1番を設定して……と」みたいなことをやる必要はありません。OXI ONEのトラックでInstrumentとしてCoralを選ぶことが可能になっており、これを選んでおけば、OXI ONEのモニタ上でコントロールしたいCutOffを選ぶだけで、自動でCC1番を送信するように設定できるのです。
そのCCのコントロールは、OXI ONEのノブやModulation Laneで直感的にコントロール可能です。これについては以下のOXI ONEの紹介記事でも触れていますので、是非併せてご参照ください。あまり書くとOXI ONEの紹介になってしまいますが、これは本当に便利な機能です……。
このCoralのように、それ自体にはコントロールするインターフェースを持ち合わせていないモジュールやシンセサイザーは、こういったCCの制御が面倒になってしまいがちですが、OXI ONEはそのハードルを大きく引き下げてくれるシーケンサーです。是非併せてご検討頂けるとよいかと思います。
参考動画
OXI InstrumentsのYouTubeチャンネルには、OXI Coralを使ったデモ動画のリストが用意されています。以下、OXI InstrumentsのYouTubeチャンネルより是非チェックしてみて下さい。
ほか、私TakazudoがYoutTubeに公開しているセッション動画でも、OXI Coralを使っているものがあります。以下はOXI CoralをOXI ONEでコントロールしており、シンセボイスはOXI Coralのみです。よろしければご参考にして頂ければと。
更新と公式Webアプリ
Coralの公式Webアプリは、役割ごとに分かれています。
Firmware Updater: エンジンを選び、カスタムファームウェアを作成してUSB経由で書き込みます。
Preset Manager(公式サポート): パート構成やプリセットを作成・編集し、SDカードのプリセットファイルを管理します。
Waveform Generator: Coral用のウェーブテーブルを作成するツールです。
公式サポートと変更履歴: 現行ファームウェア、SDカード用のファクトリー素材、更新手順を確認できます。
更新前にはSDカードの内容をコピーしてバックアップします。マニュアル上では、ファームウェアの書き込みはSDカード内のプリセット、サンプル、ウェーブテーブルや設定を変更せず、2.6のoptions.txtも引き続き読み込めます。ただし、これはすべての旧プリセットの完全互換性や、安全なダウングレードを保証するものではありません。旧SDカードの内容を消去する手順ではありません。
追加エンジンにはSDカード上の素材が必要な場合があります。PianoZ用のSystem/HOUSEKEYS.PCMとSystem/RHODES.PCM、FMX7用のDX7 Patches/以下のGroup 1〜10の.syxバンク/パッチを確認します。Stitcherに自分のWAV素材を使う場合は、カード直下のStitcher/に直接配置し、サブフォルダーには入れません。
書き込み時はラックの電源を切って電源ケーブルを外し、USBのみで給電します。データ転送に対応したMicroUSBケーブルと、WebUSBに対応するデスクトップ版Chrome/Edgeを使用します。BOOTボタンを使う更新モードへの移行を含め、v3マニュアルの「9 COMPANION WEB APPS」と公式サポートの手順に従ってください。書き込み中はケーブルを抜きません。
仕様
幅: 14hp
奥行き: 3cm
消費電流: +12V:110mA/-12V:10mA/+5V:0mA
オーディオ出力: 2x モノラル DC coupled outputs(±5 V)
入力: 1x MIDI TRS(Type A and B compatible)/8x CV inputs ±5V(±10V max)、1x Gate input
製品の保証について
こちらの商品はメーカー規定で、一般的な通常の使用環境を前提とした2年の保証を約束していただいており、販売させていただいています。商品の不具合等がございましたらお問い合わせ下さい。
OXI Instrumentsについて
OXI Instruments はスペインのバルセロナを拠点とする電子楽器メーカーです。
OXI ONEを代表とし、デジタル技術を活かしたハイスペックで利便性の高いモジュールもリリースしているのが特徴です。

オマケ: 電氣美術研究會モジュラー小物セット付き
モジュラーシンセをもっと多くの方に触って欲しいという願いの元、電氣美術研究會さまにご協力頂き、モジュラー小物セットを本商品にバンドルさせて販売させていただいております。
パッチケーブルや電源ケーブル、ドレスナットのサンプルセット、モノラルスプリッターなど、内容は時期に応じて変化します。商品に同梱しますので是非お試し下さい!

