Takazudo Modularにて取り扱わせて頂いている、Meng Qi(孟奇)氏のHoneyというスタンドアロン型電子楽器の紹介です。
Honeyは、Bytebeatの考え方をベースとした、手のひらサイズのタッチ操作型ノイズミュージック生成電子楽器とでも呼べるかもしれません。単四電池一本で動き、オーディオジャックは無いため、スピーカーを通じて音を出力します。タッチ操作により変数や数学的演算を変化させ、動的なサウンドを生み出します。
本商品は、以下よりご購入頂けます。
Honeyの使い方
このHoneyは、一見するとジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡のような形をした謎のデバイスですが、電池を入れて触ってみるとあら不思議、多様なノイズ、サイン波が混ざったようなサウンドが出力されます。
そのサウンドはタッチする6枚のパネルによって変化したりしなかったり、どうにも捉えどころのないように思われますが、触り続けていると、なんとなく雰囲気が掴めてくるような来ないような……。ひとまずHoneyはそのように、このHoney単体で動作する、タッチ操作型の電子楽器です。
Bytebeatとは
このHoneyを楽しむには、「Bytebeatの考え方をベースとした」と前述した、そのBetebeatというものが何なのかについての理解があると良いかもしれません。
筆者Takazudoは、Bytebeatという言葉はたまにX(Twitter)でたまに見かけていた程度で、何やら短いプログラムで音楽を鳴らす何か?ぐらいの認識でしたが、今回このHoneyを入荷するに当たり、多少それが何なのかを調べて理解するに至りました。そして、そのBytebeatが何かを知ることで、Honeyがどのような楽器であるのかということの理解が深まりました。
Bytebeatというのは、2011年にViznut氏が、自身が書いた短いプログラムのコードが、音楽的な出力を生み出すことに気づき、インターネットで公開したことがきっかけで始まりました。以下がそのコードと、それにより生成されるサウンドです。
このサウンドを作っているのは以下のようなごく短いC言語のプログラムです。
main(t){for(t=0;;t++)putchar(t*(((t>>12)|(t>>8))&(63&(t>>4))));}
この動画は多くの人の興味を引き、同様に短いコードでのサウンド生成を試みる小さなブームが起こりました。
このBytebeatは、手元にプログラムの実行環境がなければ動かせないというものではなく、以下のように、ブラウザ上でBytebeatを作るWebアプリケーションも登場し、誰でも手軽にBytebeatを楽しめることができるようになっています。
Viznut氏はこの現象を興味深く感じ、以下のブログと論文に、Bytebeatの広まりについてまとめています。
- countercomplex: Algorithmic symphonies from one line of code -- how and why?
- Discovering novel computer music techniques by exploring the space of short computer programs
そして氏は、このBytebeatのような試みの広がりは、これまで探求されてきた表現空間では見つけることの出来ない、興味深い音楽に対するアプローチを発見できるようになる可能性があると語っています。
HoneyとBytebeat
で、このHoneyなんですが、Bytebeatの考え方をベースにしていると前述しました。HoneyはBytebeat同様、そのサウンド出力のもとになっているのは、演算の結果です。そしてその演算には、5つの変数、4つの算術演算子、6つのその他演算子があり、これらがタッチパネルの操作により変化するようになっています。これがこのタッチパネルの存在している意味です。
このHoneyが作り出すサウンドは、Meng Qi氏が作った回路により生成されるものであり、そのサウンドは、6つのパネルにより部分的に変更可能になっています。
つまり、このHoneyとは何なのかと言うと、そのタッチによる生成サウンドの変化の塩梅も含めた、Meng Qi氏の、Bytebeat的アプローチを取り入れた電子楽器作品であると言うことができるでしょう。
Bytebeatのススメ
筆者Takazudoが最初にBytebeatのビデオを見た時、正直なところを言うと、これを何にどう使えば良いのか、全く分かりませんでした。しかし、Bytebeatの考え方を知ると、このHoneyはそもそも、何か既存の音楽的なアプローチーーそれは例えば一定のテンポや、メロディ、リズム、コード進行などーーに倣い、何かを達成するために作られているというものではないという事を知りました。
そして実際にHoneyが送られてきて手に取ってみると、なんとも不思議で、そのとりとめのないランダムさの中に、触っているパネルによって、一定のルールがあるように感じられてきます。それが本当に制御可能なものなのか、そうでないのかはまだ分かりません。Bytebeatの背景を知ると、BytebeatやこのHoney自体が、既存の音楽的なアプローチに対する、何かアンチテーゼ的な存在にさえ思えてきます。
このHoneyの楽しみ方は様々かと思われます。このHoneyを手にとって、その不思議なノイズがどのように作られるのかを感じ取るだけでも良いでしょうし、このHoneyが作り出すサウンドを、サンプリングしたり加工したりし、自分の音楽の中の、ランダムを作り出す一要素としても面白いかもしれません。
筆者Takazudoとしては、このHoneyの存在自体が、そのように何か我々がコントロールできる範囲に無い要素ですら、音楽を作り出す楽器の一部として作り上げることは可能であり、身体の動きによりコントロールできうるものだというメッセージのようなものを感じます。そして、既存の音楽に縛られている人に対しては、音を作ることの自由さのようなものを想起させてくれる存在でもあるのではないでしょうか。
参考動画
以下は私の方でHoneyを鳴らしてみている動画です。こんな風にパネルを触ると音が出る楽器です。
技術仕様
- 単4電池1本で動作(本商品には付属しません)
- オーディオジャック非搭載、内蔵スピーカーより音が出力されます
Meng Qiについて
Meng Qiは中国北京を拠点に活動する電子楽器のクリエイターです。
Meng Qiの作る楽器は非常にユニークなモノばかり。それでいて音楽的に高いセンスで作られており、触るとワクワクするものばかりです。是非彼のInstagramを見てください。Meng Qiがすべて手作りしている様子と、異常なまでに細かい技巧に驚くはずです。
