このシリーズでは、Meng Qi氏(孟奇)によるWingie2について解説していきます。
Takazudo Modularにて取り扱わせていただいているWingie2は、内蔵マイクやLINE入力に対して4種類のレゾナンスモードを適用できるスタンドアロン型の楽器です。本体パネル上にすべてのコントロールが揃っており、鍵盤ボタンによる音程指定とMIDI入力にも対応しています。モジュラーシンセではない単体の機材ですが、フィードバックループや外部音源との組み合わせで、モジュラー的な遊び方も可能なデバイスです。
EP.1では、Meng Qi氏自身が公開している紹介動画 All you wanna know about Wingie2 を題材に、Wingie2の概要、レゾネーターという音響処理の考え方、そしてWing Pingerやmannequinsモジュール群を相手にした演奏例を見ていきます。動画自体は約5分半の短い構成ですが、Wingie2が「どういう種類の音楽体験を提供する機材か」を掴むには、ちょうどよい切り口になっています。
Takazudo Modularではマニュアル等の日本語訳付きを作成し、公開しています。以下よりご参照下さい。
- Wingie2の概要
- レゾネーターとは
- 周囲の音に共鳴するWingie2
- フィードバックループとWing Pingerとの組み合わせ
- mannequinsモジュール群との組み合わせ
- Wingie2を使ったデモ
- Wingie2のポジション
Wingie2の概要
動画の冒頭で、Wingie2を手にしたMeng Qi(孟奇)氏自身が製品を紹介します。この動画は、Meng Qi氏のYouTubeチャンネル合成少数派 Synthesis Minorityで公開されているものです。
ここでMeng Qi氏が説明しているWingie2の特徴は次のとおりです。
- ステレオレゾネーターとして動作する
- 入力ソースは内蔵マイクとLINE入力の両方が選択できる
- すべての機能はパネル上のコントロールから操作できる
- MIDI入力を備えており、外部機器からコントロールできる
Wingie2のパネルにはスライダー、ノブ、鍵盤状のボタン群、そして本体上部にマイクとスピーカー用の穴が並んでいます。LINE入力から入った音、もしくはマイクで拾った周囲の音に対してレゾナンス処理を行い、ステレオで出力するのが基本動作です。
レゾネーターとは
動画は次に「そもそもレゾネーター(resonator)とは何か」という解説に入ります。
Meng Qi氏によるレゾネーターの定義は 「特定の周波数の音を強調するように設計された装置」 というものです。これは音響処理装置全般のうち、入力音のうち特定周波数帯を持ち上げるタイプのデバイス/構造をひっくるめて指す言葉として用いられています。
レゾネーターは電子的な存在ではなく、まずアコースティックな形で長い歴史を持っている、というのが動画で強調されているポイントです。
アコースティックなレゾネーターの例
動画では3つのアコースティックなレゾネーターの例が紹介されます。
1つ目: シタールの共鳴弦
シタール(sitar)の共鳴弦(sympathetic strings)は、演奏弦そのものではなく、メイン弦が鳴ったときに共鳴して鳴る弦です。これも一種のレゾネーターと言えます。
2つ目: オンド・マルトノのスピーカー
オンド・マルトノ(ondes Martenot)の専用スピーカー(パルム)には、ガット弦(gut strings、いわゆる動物の腸を撚って作る弦)が張られており、これが楽器の出音と共鳴することで、独特の倍音成分を加える仕組みになっています。これもレゾネーターの一種です。
3つ目: カリンバの本体
カリンバ(kalimba)は、本体に金属の薄い板(tines)が並んでおり、それを指で弾いて鳴らす楽器です。1本のtineを弾いただけでも、本体に取り付けられた他のtinesも一緒に鳴ります。これもレゾネーターの一種です。
このように、レゾネーターは現代的な電子機材として登場するよりずっと前から、楽器そのものの構造として存在してきたものだ、というのが動画の前半で示される視点です。Wingie2は、こうした「共鳴」という現象を電子的に再現し、コントロールできる楽器として作られています。
周囲の音に共鳴するWingie2
レゾネーターの基本を踏まえたうえで、動画は 「Wingie2は周囲のあらゆる音に共鳴できる」 という特徴の紹介に移ります。
Wingie2は内蔵マイクで周囲の音を拾えるため、LINE入力に何も繋いでいなくても、机を叩いた音、声、楽器の音、生活音など、あらゆる音をレゾナンス処理の入力ソースにできます。これがスタンドアロンで完結する楽器としてのWingie2の大きな特徴です。
動画ではこの後、動画の音声に対してWingie2が反応している様子が音楽として提示されます。Meng Qi氏が話す声や、机に置かれた物の音にWingie2が共鳴し、独自の旋律やテクスチャを生成していくデモンストレーションです。
フィードバックループとWing Pingerとの組み合わせ
中盤からは、Wingie2を他の機材と組み合わせて使う例として、Meng Qi氏自身が手がけた別の楽器 Wing Pinger との組み合わせが登場します。
Wing PingerはMeng Qi氏が開発していたもう1つのスタンドアロン型機材で、こちらもパネル上に鍵盤ボタンとノブ群を備えたピング系のサウンドジェネレーターです。Wing Pingerからの出力をWingie2のLINE入力に送り、Wingie2の出力をさらにWing PingerのCUTOFFやTRIGGERに戻すことで、フィードバックループを構成できます。
動画では、両機材を並べて演奏する映像が長めに収録されており、片方の機材だけでは出てこない、相互作用によるサウンドが提示されています。スタンドアロン同士をオーディオで繋ぐだけで、モジュラーシンセ的なフィードバックパッチに近い遊び方ができる、というのがこのパートの趣旨です。
mannequinsモジュール群との組み合わせ
動画の後半では、Wingie2をユーロラックのmannequins製モジュール群と組み合わせた演奏が披露されます。
ラックに並んでいるのは以下のモジュールです。
- Just Friends: 6声のシンセボイス/ファンクションジェネレーター
- Sisters: マルチモードフィルター
- Cold Mac: ユーティリティ/シェイパー
これらmannequinsモジュールから生成した音をWingie2のLINE入力に送り、Wingie2のレゾナンスを通した音をスピーカーから出す、という構成です。
この演奏部分では、Just Friendsの出力にWingie2でレゾナンスを加えることで、もとの音にレゾネーターならではのハーモニーが乗っていく様子が確認できます。 このように、Wingie2は他のモジュラーシンセや楽器と組み合わせて使うことができる楽器です。
Wingie2を使ったデモ
Wingie2を使った演奏のデモは、合成少数派のYouTubeチャンネル上で他にもいくつか公開されています。それぞれの動画で、Wingie2が他の楽器とどのように組み合わせて使われているかを確認できます。
Wingie2のポジション
動画全体を通して提示されているWingie2の立ち位置は、以下のような要素の組み合わせです。
- スタンドアロンで完結する楽器であり、モジュラーシンセを持っていなくても演奏できる
- マイクで周囲の音を拾えるため、机の上の物、声、生活音をそのまま素材にできる
- LINE入力を備えるため、他の機材(モジュラー、外部シンセ、楽器)とオーディオで繋げる
- MIDI入力を備えるため、外部MIDIコントローラーやシーケンサーから制御できる
- 鍵盤ボタンによる音程入力で、楽器そのものとして演奏もできる
総じて、Wingie2はモジュラーシンセと組み合わせて使うことも可能ですし、その他ちょっとした電子楽器との組み合わせも可。小型マイクも内蔵しているため、外部の音を取り込んで楽しむことも可能な楽器になっています。
EP.1ではMeng Qi氏本人によるWingie2解説動画を元に、Wingie2の紹介を行いました。ご参考になりましたら幸いです。
Wingie2 商品詳細
Wingie2の商品詳細は以下よりご覧いただけます。








