
Takazudo Modularにて取り扱わせて頂いている、Recovery Effects And DevicesのADSRの紹介/解説記事になります。
ADSRは、その名の通り、基本的なADSRタイプのEnvelope Generator(エンベロープジェネレーター)をアナログ回路で2HPに凝縮。余ったスペースに無理なく組み込めるので、複数台あっても困ることの無い定番モジュール。ユーロラック入門としても、基本モジュールとしてオススメしたい製品です。
本商品は、以下よりご購入頂けます。
- 商品写真
- Recovery Effects And DevicesのADSRについて
- ADSRタイプのEnvelope Generator
- Attack Decay Sustain Release
- ADSR Envelopeの使い方
- モジュラーならではの自由なEnvelopeのトリガー
- より高機能なEnvelope Generator
- 参考動画
- 技術仕様
- 付属品
商品写真



Recovery Effects And DevicesのADSRについて
このADSRは、何か特別な機能があるわけではない、ごくシンプルなADSRのEnvelope Generator(エンベロープジェネレーター)です。このモジュールの回路のオリジナルは、René Schmitz氏の公開しているFastest Envelope in the Westであるとのこと。そんなEnvelope Generatorが、たったの2HPに収められているという点で、システムに組み込みやすい点が特長と言えます。
なんですが、商品の説明としては正直、それ以上か書くことは正直言うとありません(笑)。なのでこの文書では、一般的なADSRの解説と、他のモジュールとの組み合わせについての紹介を行います。
ADSRタイプのEnvelope Generator

まず、Envelope Generatorとは何か。モジュラーシンセにおいては、Gateシグナルを受け取ったときに、ひとまとまりのCVの上昇〜下降を、時間に応じて変化させつつ作り出す機能のことをそう呼びます。
そうして作られたひとまとまりのCVがEnvelopeと呼ばれます。Envelopeは「封筒」や「包むもの」といった意味の単語で、これは作られるCVの形状に由来します。
基本的なタイプのEnvelope Generatorが生み出すEnvelopeは、4つのフェーズに分かれて考えられ設計されています。その4つがAttack(アタック)、Decay(ディケイ)、Sustain(サスティン)、Release(リリース)であり、この略称がADSRです。
本モジュールをはじめ、一般的なADSRタイプのEnvelope Generatorは、Gateシグナルを受けたタイミングでEnvelopeの生成を開始し、Gateシグナルが有効なあいだにAttack–Decay–Sustainのフェーズを経て、シグナルが途切れたあとに余韻的なReleaseフェーズに移行し、Releaseフェーズが終わると一連のCV作成を終了します。
本モジュールにはGATE IN
とGATE OUT
の端子があり、GATE IN
にGateシグナルを受けることで、Envelopeを生成。その出力結果をGATE OUT
から出力します。
Attack Decay Sustain Release
ADSRの各フェーズは、以下のような意味を持ちます。と言うより、以下のような振る舞いをするEnvelope Generatorのことを、ADSRタイプのEnvelope Generatorと呼びます。
- A:
Attack
- ゲート信号が入った瞬間から、エンベロープが最大値まで上昇するまでの時間。短ければ即座に立ち上がり、長ければ徐々に音が出る印象になります。
- D:
Decay
- 最大値に達したあと、Sustainレベルまで減衰していく時間。ここで音のアタック後の印象が決まります。
- S:
Sustain
- ゲートがオンの間、エンベロープが保たれる一定レベル。これは“時間”ではなく“高さ(値)”で指定され、リリースされるまでこの値を維持します。
- R:
Release
- ゲート信号がオフになったあと、エンベロープが0に戻るまでの時間。音の余韻の長さに関わる要素です。
ADSR Envelopeの使い方
このようなADSR Envelopeには、どのような利用用途が考えられるのでしょうか。ライトなアンサーとしては、「何に使ってもOK」です。
モジュラーシンセではほとんどあらゆる要素がCVで制御できるようになっているのですから、自分の思うように、コントロールしたいパラメーターについて、時間の経過と共に変化させたい場合、このADSRを使うことが出来ると言えます。
音量のコントロール

何でもあり!……ではありますが、具体的な使い方を示すとすれば、まず第一に挙げられるのが音量のコントロールでしょう。当店で扱っているモジュールですと、以下のようなVCFにて、Low Pass Filter(ローパスフィルター)のCutOff(カットオフ)に作ったEnvelopeのCVを渡すことで、Gateシグナル起点で音量の時間的な変化を作ることが出来ます。
ドローン的にずっとならしっぱなしにするわけでは無い場合には、こういったVCFやVCAと併用し、OXI ONE等のシーケンサー等からGateシグナルを出してEnvelopeを生成、そのタイミング毎に音が鳴るようにパッチングするという使い方ができます。
モジュラーシンセは自由度が高いので、この使い方は選択肢の一つに過ぎないのですが、一般的なシンセサイザーについて話される時には、「Envelope=音量の変化」のことである場合も多いかと思われます。
ピッチのコントロール

そのような音量のコントロール以外では、例えばピッチをEnvelopeで変化させることも可能です。具体的には、当店では以下のようなオシレーターを扱っていますが、
これらオシレーターのFM(Frequency Modulation)入力にEnvelopeを渡すと、Gate毎にピッチがシュンシュンと、そのタイミングだけ一気に下がったり上がったりするような効果を作ることが出来ます。
その様な工夫により、パンチの効いたキックのような音を生成したり、前項の音を鳴らすタイミングと合わせることで、立ち上がりタイミングだけピッチが揺れるような、面白い効果を作ることが可能です。
そんな風にピッチの変化を一例として挙げてみましたが、お手元のモジュラーを見てみて下さい。いくらでもCVを受け取るジャックはあるでしょう。別にどうしないといけないという決まりなんて無いのです。PWM(Pulse Width Modulation)でもResonanceでもなんでも、自由に思うがままにパッチングしてみて楽しむことをオススメしたいです。
モジュラーならではの自由なEnvelopeのトリガー

作ったEnvelopeの使い方も自由ですが、こういったEnvelope Generatorは、トリガーさせるタイミングも自由度が高いです。
Gateシグナルを〜とここまでで書いてきましたが、Gateシグナルというのはつまるところ、電圧が+3V以上とか、そういう変化があった時、「ONになった」と判定されるということです。とすれば、例えばオシレーター/LFOの波形として矩形波を選び、それを本モジュールのGATE IN
に繋いでも良いのです。
そんなことをするとどうなってしまうのか? オシレーターの周期が非常に早ければ、超高速でEnvelopeが生成され続けるのです。こういったフリーダムなパッチングは、モジュラーシンセならではの楽しみ方と言って良いかと思います。
ほか、以下のような、ボタンを押したらGateを出すモジュールと組み合わせるのも便利です。
例えば、ちょっと盛り上がる演出を作りたいとき、Motion PicturesのReverb(リバーブ)のレベルを一時的に上げ、元に戻したい……。そういうワンショット的な使い方をするには、マニュアルでGateを作ることが出来るADDAC304 Manual Gatesと合わせて使うと便利。ボタンを押したそのタイミングだけ、Envelopeが作られ、Reverbのレベルが上がります。2HPというコンパクトさも生きてくるでしょう。
そして、ADSRエンベロープでは、Gateの長さに応じて作られるEnvelopeが変化するというのもポイントです。Gateを受け取る手前に以下のような、Gateの長さをコントロールするモジュールを挟めば、そこでもまた変化を付けることが可能。
色々なパッチングの可能性がありますね。
より高機能なEnvelope Generator

本モジュールはシンプルなEnvelope Generatorですが、当店で扱っているEnvelope Generatorとして、より高機能な、Weston Precision AudioのSE1を関連商品として紹介しておきます。
こちらは、ベースはADSR Envelope Generatorですが、各フェーズのカーブを選べたり、それぞれのフェーズがアクティブな時にGateを生み出せたり、Envelopeの大きさをコントロールできたり、逆向きに出来たり、ARだけにしたり、ループできたりなどなど、Envelope Generatorでやれることは一通り詰め込んだのでは?と思わされる高機能さです。
こちらのSE1は、より多様なパッチングを楽しむことが出来るモジュールになっているわけですが、モジュールの幅は12HPと、それなりにスペースを占めます。
このようなモジュール毎の大きさと機能についてどう考えれば良いのか? ここには色々な考え方があるかと思いますが、Takazudo的には、大きいノブやフェーダーの用意されている幅を広くとるモジュールは、操作頻度の高いパフォーマンスに適していると考えています。
例えばこのSE1と本モジュールADSRを比較すれば、それはSE1の方が頻繁にコントロールするのに向いていると言えるでしょう。SE1のADSRフェーダーの方が大きいわけですから。ですが、前述したようなワンショットのEnvelopeが欲しいだけであれば、こちらのADSRで十分かもしれません。何より2HPと省スペースですから、ケースの制限がある場合、他のモジュール導入の検討もしやすいです。
そんな風に、ご自身のセットアップに合わせて、お好みのEnvelope Generatorを選んで頂けると良いかと思います。パネル上のインターフェースの設計もモジュールの個性です。
特に、モジュラーを初めたての人がEnvelope Generatorについて理解したいと思う場合、こちらのモジュールはシンプルでありながら、後になっても役に立つ、オススメの一品です! Takazudo個人的にも、中古モジュールを色々売り買いしてきましたが、小さいEnvelope GeneratorとVCAは、売らずにずっと残しておいたりしています。汎用性の高いモジュールは色々と使い道がありますね。
参考動画
以下は、Recovery Effects And Devicesの公式YouTubeチャンネルにて公開されている、ADSRのデモ動画です。
技術仕様
- 幅: 2Hp
- 深さ: 22mm
- 消費電力: 10mA +12v/10mA -12V/0mA +5V
付属品
- 電源用リボンケーブル
- ネジ
Recovery Effects And Devicesについて
Recovery Effectsは、アメリカ・シアトル発の音響機器ブランド。ハンドメイドによる高品質なエフェクトペダルやモジュラーシンセ用モジュールを製造し、独自のサウンドデザインと個性的な機能で多くの音楽クリエイターに支持されています。
オマケ: 電氣美術研究會モジュラー小物セット付き

モジュラーシンセをもっと多くの方に触って欲しいという願いの元、電氣美術研究會さまにご協力頂き、モジュラー小物セットを本商品にバンドルさせて販売させていただいております。
パッチケーブルや電源ケーブル、ドレスナットのサンプルセット、モノラルスプリッターなど、内容は時期に応じて変化します。商品に同梱しますので是非お試し下さい!