Takazudo Modularにて取り扱わせて頂いている、Divergent WavesのDiceというモジュラーシンセサイザーの紹介/解説記事です。
このDiceは、海外の通販サイトよりDIYのキットを購入し、国内のビルダーさんと一緒に作ったものです。作ったものを試しに販売してみたのですが、作っているうちに不明点等が発生し、Diceを開発しているDivergent Wavesの方にも色々とアドバイスをもらいつつ完成しました。販売する許可も頂いてお店に置かせていただいております。
こちらの商品は、以下よりご購入頂けます。
Diceとは
Diceは1 In 6 Outの確率的シグナルルーター/ゲートジェネレーターです。
Diceは、Inより受け取ったシグナルを、5つのOutへとルーティングします。どのOutが有効になるかは、Rollジャックがgateを受け取った時に振られるサイコロの出目によって決定されます。ルーティングのアルゴリズムはバリエーションがあり、中央のスライダーを動かすことで出目の確率をコントロールできます。例えばスライダーが左側の方であれば2が出る確率が上がり、右端の方であれば5が出る確率が上がるという具合です。
InにはCVシグナル/オーディオシグナルの両方を入力可能。Outからの出力はゼロクロスポイントを考慮した制御になっており、突然信号がブツ切れにされるときに生じがちなクリック音が発生しない実装になっています。
Inに入力がない場合、各出力ジャックはルーティングがOnになっている間、5Vの電圧出力します。また、Rollジャックにgateを受けた場合、Outからはgateが出力されます。これにより、Rollジャックにclockのような連続的なgateを送ることで、6 gate Outのシーケンサーのように使うことも可能です。
基本操作
Diceには3種のモードがあり、それはDice上部のボタンによりOn/Offしますが、これらが全てOffになっている場合の挙動をまずは解説します。
どのモードもOffになっている時は、Diceはシンプルなシグナルルーターとして動作します。下部のサイコロの下にあるボタンは、それぞれのOutのOn/Offをトグルするボタンとなり、Onになっている時(緑のLEDがついている時)、Inからの入力はそのOutジャックへルーティングされます。
そして、Rollがgateを受け取ると、ランダムで一つのOutのOn/Offが切り替わります。
利用例としては、例えば1〜6のOutを、ミキサー等で受け取り、左右にpanningすることで、入力がバラバラの方向から聞こえるような効果を作ったりすることが可能です。以下は公式のデモ動画で、この中でそのパッチングを行っている様子が確認できます。
InにはCVも入力可能なので、LFOやEnvelopeを入力することで、複雑なルーティングをランダムでトグルさせることができます。
3種のモード
Diceには3種類のモードが有り、上部のボタンでそれぞれのOn/Offが可能です。また、上部ボタンのすぐ下にある、それぞれのジャックにgateを入力すると、ボタンを押したときと同様の挙動になります。
用意されているのは以下3つのモードです。
Exclusiveモード
同時に2つ以上のOutを有効にしない、サイコロを降って出た目に相当するOutだけが有効になるモードです。
Skipモード
一度アクティブになったOutは、直下のLEDが赤くなり、Skip状態になります。Skip状態になったOutは、抽選が発生してもスキップされ、リセットが発生するまで二度とアクティブになりません。
なお、リセットはResetジャックにgateを受けるか、Resetボタンを押すことで実行されます。
Auto Resetモード
SkipモードがOnになっている時、全てのOutがSkip状態になったら、全OutのSkip状態を解除します。
Diceの使い方
上記のような説明を読んだところで、このDiceをどうやって使ったら良いのかはよく分からなくて自然かと思われます。このモジュールはおそらくこれだと何か用意されたような使い方があるというよりかは、自身のアイデアで何か面白いことに使ってみて下さいというようなモジュールであると捉えるのが適切かとTakazudoの方では考えました。
自分の方でDiceをはじめて使ってみたセッションを以下にアップロードしています。このセッションでDiceをどのように使っているかについて簡単に解説します。
このセッションでは、Diceをゲートジェネレーターとして使用しています。Rollに1/16のclockをずっと入力し続けており、ExclusiveモードをOnにしています。これにより、1/16毎にいずれかひとつのOutからgateが出力されるという状態にしています。
Outの5つを別々のEnvelope Generatorのトリガーに、6つ目をハイハットのトリガーに接続。ハイハットが鳴っているのは6が出た時です。
5が出た時はトリガーされるenvelopeをMimeophonのDry/WetのCV入力に渡しているため、適度にreverb/delayが連続的に変化します。
1〜4が出た時は、Noise Plethoraから出力されるのホワイトノイズをInに入力しているそれぞれのVCAのCV入力に渡しているenvelopeをトリガーさせています。
あとは途中にWingie2を挟んでおり、ずっとノイズが異なるenvelopeで鳴っていて、それにレゾネーターがトーンを与えます。そして、サイコロの確率スライダーをちょいちょい動かすことで、1〜6のトリガー頻度が変化するという具合です。たまにSkipモード/Auto ResetモードをOnにすることで、トリガーの頻度を下げています(同じ目が出るとSkipになるので)。
この構成ではただDiceに1/16のclockがずっと渡されているだけであり、シーケンサーはありません。演者としてはそれぞれのenvelopeのAttack/Releaseを変えたり、真ん中のスライダーを操作したり、Mimeophonを操作するなどしています。
その他仕様
- 幅: 16HP
- 深さ: 28mm
- +12Vで最大50mA、-12Vで最大20mA。5Vレールは未使用
Divergent Wavesについて
Divergent Wavesは2020年よりユーロラックのシンセサイザーモジュールのデザインを行っている小さな会社です。全てのプロジェクトをオープンソースで公開しており、Diceはそのプロジェクトの一つです。
オマケ: 電氣美術研究會モジュラー小物セット付き
モジュラーシンセをもっと多くの方に触って欲しいという願いの元、電氣美術研究會さまにご協力頂き、モジュラー小物セットを本商品にバンドルさせて販売させていただいております。
パッチケーブルや電源ケーブル、ドレスナットのサンプルセット、モノラルスプリッターなど、内容は時期に応じて変化します。商品に同梱しますので是非お試し下さい!
Diceの紹介は以上になります。TakazudoがDiceを使ってみた第一印象としては、ランダムであるがその頻度をコントロールできるところが面白いと感じました。モジュラーシンセにはランダムな何かを出力するモジュールは多数ありますが、単純にそのようなモジュールを使うだけだと、いかにも「何かをランダムに鳴らしてるんです」みたいな結果になることがままあるなと感じていました。
それに対してこのDiceは、中央のスライダーの位置により、必ずどれか一つの目の確率が高くなります。これにより、何かをセットアップしたあと、中央のスライダーを動かすだけで、音楽的なシーンが切り替わるような効果を得られるという感覚を得ました。この記事で挙げた使い方は使い方の一例でしか無く、パッチングしながら「こういう風に使ったらどうなる?」という試行錯誤を色々試せる楽しいモジュールだと思います。
ご参考になれば幸いです。