RYK Modular: Night Rider紹介

2024/01/24 Author: Takazudo

Takazudo Modularにて取り扱わせて頂いている、RYK ModularのNight Riderの紹介/解説記事になります。Night Riderは、4チャンネルのフィルターバンクを基本とし、そこに6ステージのシーケンサーを合体させ、柔軟なモジュレーションをも可能にしたようなデジタルモジュールです。

なお、こちらの商品は、Takazudo Modularが国内のビルダーさんと協力し、DIYで作成したモジュールです。ビルド後、一通りの機能のチェックを行い、パスしたものを出品しています。また、このモジュールのメーカーであるRYK Modularにも許可を得て販売しているものです。

こちらの商品は、以下よりご購入頂けます。

4チャンネルのフィルターバンク

まず、Night Riderは4チャンネルのフィルターバンクをベースにしたモジュールです。フィルターとしては、ユーザーは以下の種類の中から一つを選んで利用できます。

  • 6db band pass filter
  • 12dB band pass filter
  • 可変幅 band pass filter
  • Karplus Strong スタイルの comb filter
  • All Pass Filter 1 [ delay-line based ]
  • All Pass Filter 2 [ IIR based ]

図:フィルター群の回路図

ひとまず、これら多様なフィルターを4チャンネルで使えるだけでもそれなりに便利です。パネル中央上には多数の小さい穴が空いており、パネル裏には小さい赤のLEDが多数並べられています。操作に応じて、現在選んでいるフィルターの情報、フィルター適用周波数、フィルタ毎のボリュームがこのLEDの点灯により表現されるようになっており、デジタルである点を生かした直感的な操作が可能です。

この用意されているフィルターの特性は、特定周波数を強調するバンドパスフィルターを中心としているため、Night Riderというモジュールは、レゾネーターを中心としたエフェクターの一種であると表現するのが適切と言えるかもしれません。

レゾネーターとは

レゾネーターとは何か?については、過去にWingie2というモジュールの紹介記事で詳しく解説しています。宜しければ合わせてご参照頂けると、理解が深まるかもしれません。

フィルターの種類

以下は、フィルターの種類を選択している時の表示です。

LEDの表示:フィルターの種類

この表示は、可変幅のband pass filterを選択している状態を示しています。この状態でノブを回すと別のフィルターの絵が表示され、前述したどのフィルターを選んでいるのかが分かりやすく表示されます。

それぞれのフィルターのボリューム

以下は、フィルターのボリュームを変更している時の表示です。

LEDの表示:ボリュームの表示

4つのフィルターのボリュームは個別にコントロール可能であり、パネル上部のノブ4つが、それぞれのフィルターのボリュームに対応しています。

LEDは横一列が一つのフィルターのボリュームを表しており、ノブを回すと、それぞれのボリュームの大きさに応じてLEDの点灯割合も変化します。

それぞれのフィルターの周波数

以下は4つのフィルターの周波数を変更している時の表示です。

LEDの表示:フィルターの周波数

こちらも同様、横一列が一つのフィルターの周波数を示しています。これは可変幅のband pass filterを選択している時の表示で、resonance(RESノブ)の大きさに応じて、周波数の幅の広さも変化し、現在フィルターがかかっている箇所を分かりやすく示します。

6ステージのシーケンサー

緑のLED

赤のLED群の下にある6つの穴の裏では、緑のLEDが点灯します。

これはシーケンサーのステージを表しており、緑LEDの点灯は、現在選ばれているステージを表すものです。パネル中央にあるPREV/NEXTボタンは、このステージの変更を切り替えるもので、6つのステージを切り替えることが可能です。

それぞれのステージには、4つのフィルターそれぞれの周波数やボリューム等のパラメータを記憶させることができます。またこのフィルターの状態は、メモリーへの保存/読み出しが可能です。これにより、自分の好みのフィルターの状態を即座に組み立てたり、予め準備しておいて呼び出すことが可能です。

ステージが切り替わった際、Night Riderは4つのフィルターのパラメーターを変化させますが、この時のパラメーターの変化は、slewノブの値により段階的に変化させるようにすることも可能です。これを利用すると、例えば6ステージ分、別のフィルターの状態を作っておいた状態で、slewをある程度上げておけば、PREV/NEXTボタンを押し続けることで、レゾナンスの周波数や強さが時間と共に段階的に変化する、スウィープ効果を作ることが出来ます。これはNight Riderをphaserとしても利用できることを意味します。

CVやgateにより作る、柔軟なモジュレーション

シーケンサーのステージ変更やslewのかかり具合は、CVやgateによるコントロールも可能です。

Night Riderのジャック群

gateをCLK/MIDIジャックに渡すか、もしくはPOSジャックにCVを渡すことでステージが切り替わるため、前述したPREV/NEXTボタンの挙動を外部からコントロール可能です。そしてslewの値は、SLEWジャックへのCV入力でも可能なので、高速でハードにレゾナンスを変化させたり、ゆっくりとスウィープさせたりなど、レゾネーター的な効果を非常に柔軟に作ることが可能です。

MIDIによる制御やステレオ入出力

その他、CLK/MIDIジャックは、TRSケーブルを介してMIDIを受け取ることも可能で、CCやMIDI Note ONによるパラメーターのコントロールが可能です。これは、Takazudo Modularで扱っているOXI ONEのようなデジタル多機能シーケンサーとの組み合わせることで、このNight Riderのレゾネーターをピッチ付きで演奏したり、より高度にコントロールできることを意味しています。

ほか、IN1/2ジャックは、モノラルの入力を受け付けますが、TRSケーブルを使うか、もしくは付属のTRS to TR-TRケーブルを利用することで、ステレオ入力を受け付けることも可能です。Night Riderの出力も、OUT1/2ジャックにてステレオ出力が可能であり、このNight Riderだけで、豊かなステレオ効果を得ることが可能です。

デジタル技術を生かした直感的な操作性とリッチな機能

デジタルな実装のモジュールでは、できることが多い反面、その利点を生かすためには高度な知識や込み入ったUI操作が求められることがままあります。しかし、このNight Riderは、実装されている機能だけでなく、その操作性においてもまた、デジタル技術をうまく活かしているという印象を受けました。機能は多いものの、中央のLED群により現在操作している内容は適宜分かりやすく表現され、多くの機能はノブや、ボタンを押しながらのノブの操作により行えるように設計されています。

マニュアル

マニュアルは印刷されたもの(英語)が冊子としてモジュールに付属します。また、以下RYK Modularのサイトにて、PDF版のマニュアルをダウンロードすることも可能です。

参考動画

以下は、RYK Modular公式YouTubeチャンネルの、Night Riderデモ動画です。モジュールの機能を包括的にご確認いただけるので、ぜひご参照下さい。

その他

MIDI切り替えスイッチ

  • CLK/MIDIジャックで受け取るMIDIは、Type A/B両方に対応しています。背面のMIDIスイッチでこの2つを切替可能です。
  • CLK/MIDIジャックでgateを受け取りたい場合、背面のMIDIスイッチをBにしないとgate入力を認識しないのでご注意下さい(MIDI入力とclock入力を兼ねているために発生する、このモジュールの設計に起因する問題のように思われます)
  • 2024年1月に作成、インストールされているファームウェアのバージョンはV1.02です。
  • このモジュールはまとめて複数作成しましたが、いずれのモジュールも低頻度で電源ON時、起動しないことがあるのを確認しています。後ろのRESETボタンを押すと起動することを確認しているため、ソフトウェア的な問題な可能性が高く、この問題については保証の対象外とさせて下さい(お手数ですがその場合は再度電源を入れると解消されます)

技術仕様

  • 幅: 16Hp
  • 深さ: 25mm
  • 消費電力: 52mA +12V/9mA -12V/0mA 5V

付属品

  • フラットケーブル
  • ネジ
  • マニュアル(英語)
  • TRS to TR-TR ケーブル
  • USBケーブル
  • RYK Modularステッカー

製品の保証について

こちらの商品はメーカーよりDIYのキットを購入し、Takazudo Modularで組み立てたものであり、メーカーの保証はありません。購入後1ヶ月以内の初期不良のみ、当店にて対応させていただきます。ですが、こちらで作ったものなので、不具合への対応はある程度予測が付く可能性があるため、何か問題を見つけた場合は、ひとまずご相談ください。

RYK Modularについて

RYK Modularは、2009年に設立された、イギリスに拠点を置くブランドです。

デジタル技術を生かしつつ、操作感が複雑になりすぎないように配慮されたモジュールのラインナップは、MIDIが使われるモジュールが多く見受けられるようになってきた昨今、今後のリリースにも注目が集まるメーカーです。

電氣美術研究會

オマケ: 電氣美術研究會モジュラー小物セット付き

電氣美術研究會

モジュラーシンセをもっと多くの方に触って欲しいという願いの元、電氣美術研究會さまにご協力頂き、モジュラー小物セットを本商品にバンドルさせて販売させていただいております。

パッチケーブルや電源ケーブル、ドレスナットのサンプルセット、モノラルスプリッターなど、内容は時期に応じて変化します。商品に同梱しますので是非お試し下さい!

Night Riderの紹介は以上になります。

感覚的には、このNight Riderというモジュールは、ベースはフィルターバンクでありながら、合わせて実装されているシーケンサーやslewを活かすことで、普段はそこまで突っ込んでコントロールすることの少ないフィルターというものを、モジュラーシステムの中で楽器の一つとして昇華したようなものであるように、Takazudoは思えました。

LEDを組み合わせてディスプレイのように見せていたり、ブラックでクールな仕上がりになっていたりで、見た目的にも華やかなモジュールです。

ご参考になれば幸いです。