ADDAC System: ADDAC107 ACID Source紹介

2024/01/29 Author: Takazudo

Takazudo Modularにて取り扱わせて頂いている、ADDAC SystemのADDAC107 ACID Sourceの紹介/解説記事になります。

ADDAC107 ACID Sourceは、アシッドサウンドを作る要素がコンパクトに1モジュール内にまとめられたモジュールです。VCO/VCF/VCAがこのモジュールに内包されていますが、VCAの独特なクリップサウンドを作り出す設計が、VCFの特性とうまく噛み合い、TB-303を彷彿とさせるアシッドサウンドを作り出します。

こちらの商品は、以下よりご購入頂けます。

ADDAC107 ACID Sourceが生まれた背景と特徴

ひとまずこのADDAC107 ACID Sourceというモジュールは、ドラムボイスのモジュールを作る過程で生まれたアイデアが、シンセボイスに面白い効果を与えることに気付き、一つのモジュールとして完成させたと言う経緯があるようです。

なので、元々TB-303を忠実に再現させることを目指したという類のモジュールでは無く、モジュールを構成する要素としても、TB-303には似ているものの、かなり異なります。このため、生まれるサウンドもTB-303と似てはいますが、異なるアプローチで作っていた結果、似たものが出来たという認識が適切かと思われます。

そのアシッドサウンドを作り出している部分が、このモジュールのVCA部分です。何がどう特徴的なのかを解説していきます。

ADDAC107 ACID Sourceのざっくりとした構成

このモジュールを理解するには、パネルの上から下へ、順番にノブやジャックを見ていくのが理解しやすいでしょう。細かい部分は省いて、基本的な使い方をする想定でまずは構成を見ていきます。

図:ADDAC107の各部名称

上からパネル中央下部あたりまでには、以下をコントロールするノブやスイッチがコンパクトにまとまっています。

  • VCO(Square/Triangle/SawのMix)
  • VCF(HPF/BPF/LPFから選択)
  • VCA + Decay Envelope

そして、下方にあるノブとジャックは以下です。

  • VCOのFrequencyをCVコントロール可(1V/Octで受けることも可)
  • VCFのCutoffをCVコントロール可
  • VCAのDecayをCVコントロール可

パネル最下部のジャックは以下の役割を担います。

  • INPUTへのCV入力はVCAの出力結果をコントロールする
  • ACCENTへの入力はVCAのGainを上昇させる

流れで見ると、VCO+VCF+VCAがただセットになっているように見えます。

VCAとDecay Envelope

写真:Decayノブ

このモジュールで最も特徴的なのは、VCAとDecay Envelopeの部分です。この部分だけは、ただ触るだけだと意味がわからないかと思われます。

まず、VCA Decayの右についているスイッチは3段階に切り替えることのできるスイッチで、Decayを以下の通りに調整するものです。

  • 上: 減衰時間大
  • 中: 調整なし
  • 下: 減衰時間小

まずはこのスイッチを真ん中(調整なし)にしていたと仮定します。このモジュールのINPUTジャックのCVは、ベースとしてはVCAの出力ボリュームをコントロールするものです。なので、例えばAttackナシ、Decayを短めの時間で……みたいな、パーカッション的なサウンドを作るときに用意するようなEnvelopeをINすると、そのEnvelope通りのボリュームでシンセサウンドが出力されます。これがまず基本的な動作です。

そしてこのスイッチを下(減衰時間小)にするとどうなるかというと、その時、入力されたEnvelopeに、ちょっとだけDecayが追加され、減衰時間が少し長くなります。スイッチを上(減衰時間大)にすると、もっと長いDecayが追加されます。これらのケースにおいては、追加されるDecayの長さは、VCA DECAYノブの値によっても決定されます。つまり、ノブを右に回せば回すほど、長いDecay時間が追加されます。

この特徴を活かすには、大きく分けると2種類の使い方が考えられます。

まず1つは、外部でEnvelopeを作り、それをそのままVCAの出力コントロールに使うこと。この場合はスイッチは真ん中(調整なし)にしておきます。

2つめは、INPUTに入力するのはごく短いGate(Gateと言うよりPulseに近いぐらいの短いGate、もしくはDecay時間が非常に短いEnvelope)で、Decayの時間をVCA DECAYノブでコントロールすることです。この場合は、スイッチを上か下にしておきます。

前者はスタンダードなモジュラーシステムにおけるVCAの挙動ですが、後者は、このモジュール内に用意されているDecayパラメーターをいじるような感覚で使えるため、オリジナルのTB-303についているDecayノブの操作感に近い感覚です。

INPUT GAINとサウンドのクリップ

写真:Input Gainノブ

そしてそのこのDecayのコントロールのすぐ左にあるINPUT GAINノブですが、これが非常に特徴的な性質を持っています。まずこのINPUT GAINは、INPUTから受け取るCVを調整するものですが、反時計回りいっぱいでゼロ、ノブ中央値でそのまま、時計回りいっぱいに回すと、INPUTから受け取ったCVを2倍に増幅させます。

例えば、前項で解説したDecayスイッチを真ん中(調整なし)にした状態で、5VのGateを受けとり、INPUT GAINノブを時計回りいっぱいに回すと、5Vが2倍に増幅され、10VのCVがVCAへと渡されるという具合です。

そしてそのINPUTのCVを受け取ったVCAは、入力が5Vを超える場合、サウンドをクリップさせます

つまりどうなるのか?というのを端的に言うと、INPUT GAINノブを時計回り方向に回せば回すほど、出力されるサウンドの一部、ボリュームが大きい部分がどんどんクリップされた結果で出力されるということになります。INPUT GAINは、単純にINPUTのCVをattenuateするだけではなく、増幅させた分で結果的に100%以上のボリュームになる部分は、ガンガンクリップさせるような出力結果を生み出します。

これは実際に操作してみないと分かりづらい部分かと思いますが、この、あえてサウンドをクリップさせる作りが、内蔵のフィルターのレゾナンスと組み合わさることで、TB-303にディストーションをかけ、フィルターのレゾナンスがビキビキ言わされている状態に近いサウンドを作り出すという結果をもたらします。

外部オーディオソースの入力

ADDAC107 ACID Sourceは、内蔵のVCOの他、外部のAudioソースを使用することも出来ます。ただ、この機能を利用する時は、ACCENTジャックにGateを入れることでVCAの出力を高める機能は使えなくなります。なぜなら、外部Audioソースの入力は、ACCENTジャックからの入力を使用するためです。

外部オーディオソースを利用したい場合は、モジュールの裏にあるスイッチを切り替える必要があります。具体的な場所は以下です。

写真:スイッチ切り替え位置

モジュレーション関係の図1

モジュレーション関係の図2

このスイッチは、初期状態ではACCENTを使用するようになっていますが、逆にすると、ACCENTジャックへのシグナル入力は、内蔵VCOの出力とMixされ、VCFに渡されます。マニュアルにある回路図上では以下の部分の切り替えになります。

回路図

外部オーディオ入力を使うように切り替えると、別のVCOの入力やノイズ等を混ぜることが可能になります。結果として、よりリッチなシンセボイスや、パーカッション系のサウンドを作り出すことが可能です。これはこのモジュールの表現力を大きく高めるため、是非試していただきたい機能です。

内蔵VCOの接続カット

写真:VCO接続のカットスイッチ

前項のように外部オーディオ出力を使用する場合、内蔵のVCOを使わないようにすることも可能です。そのためには、CUTOFFノブのすぐ右にあるスイッチを抜けばOKです。

このスイッチを外すと、内部VCOとVCFの接続が切れます。結果として、VCFに渡されるのは外部オーディオソースだけになるため、このモジュールのVCO部分がまるっと外部オーディオソースに置き換えられる形になります。

1V/Octの入力

写真:Frequency CVの入力

このモジュールのVCOのピッチをコントロールするには、パネル下方にあるFREQ. CVジャックにCVを入力します。このジャックのすぐ上にあるノブは、入力をattenuateするものですが、時計回りいっぱいに回した状態で、1V/Octになるように調整されています。

参考動画

以下動画では、このADDAC107 ACID Sourceの鳴らすアシッドサウンドをご確認いただけます。確かに聴いてみるとTB-303とは違う印象はしますが、多様なバリエーションのサウンドを作り出していることをご確認頂けるかと思います。

他、以下は私がADDAC107を使ってみたセッション動画です。ADDAC107の他、当店で扱っているADDAC112ADDAC104ADDAC106OXI ONEも使用しています。

マニュアル

以下公式サイトにてマニュアル(英語のみ)が公開されています。

技術仕様

  • 幅: 9Hp
  • 深さ: 40mm
  • 消費電力: 80mA +12V/80mA -12V

付属品

  • フラットケーブル
  • ネジ

ADDAC Systemについて

ADDAC Systemはポルトガルのモジュラーシンセメーカーです。

アナログ良さを生かした、ベーシックな機能をしっかり形にしているモジュールラインナップを基本としつつも、CVをMIDIに柔軟にコンバートしたり、高度にコントロール可能なグラニュラープロセッサー等、デジタル技術もうまく調和させた独創的なモジュールも数多くリリースしています。

電氣美術研究會

オマケ: 電氣美術研究會モジュラー小物セット付き

電氣美術研究會

モジュラーシンセをもっと多くの方に触って欲しいという願いの元、電氣美術研究會さまにご協力頂き、モジュラー小物セットを本商品にバンドルさせて販売させていただいております。

パッチケーブルや電源ケーブル、ドレスナットのサンプルセット、モノラルスプリッターなど、内容は時期に応じて変化します。商品に同梱しますので是非お試し下さい!

ADDAC107 ACID Sourceの紹介は以上になります。

ADDAC Systemのモジュールを一度にまとめて入荷し、その中の一つがこのADDAC107 ACID Sourceなのですが、このモジュールにはおそらく、他のADDAC SystemのVCO、VCF、クリッピングノウハウが詰まった作りになっている印象を受けました。クリップするにも、ただ単純にブツっとクリップさせるのではなく、レゾナンスをいい感じにクリップさせる何かが設計されている感じがします。

そんなわけで、ADDAC Systemの作ったアシッドサウンド生成モジュールとして、このモジュールをお楽しみ頂けると良いかと思います。

ご参考になれば幸いです。