Takazudo Modularにて取り扱わせて頂いている、Open Music Labsのx0x-heartの紹介/解説記事になります。x0x-heartは、かの著名なTB-303サウンドを、表面実装技術(STM)を活用して再現させたレプリカであり、ユーロラックフォーマットに収めたモジュールです。
なお、こちらの商品は、Takazudo Modularが国内のビルダーさんと協力し、DIYで作成したモジュールです。ビルド後、一通りの機能のチェックを行い、パスしたものを出品しています。
こちらの商品は、以下よりご購入頂けます。3種のパネルバリエーションがあります。
x0x-heartとDIYモジュール
まずこのx0x-heartというモジュールとは、Open Music Labs社が 設計したものですが、同社が販売しているのはx0x-heartのPCBパネル(Through-hole PCB+SMT済PCB)のみであり、DIY前提のモジュールです。このモジュールの設計はオープンソースで公開されています。
Takazudo Modularでは、このx0x-heartのPCBと部品群がセットになっているキットを購入し、組み立てたものを販売しています。
x0x-heartの開発の前には、同Open Music Labsが開発していたx0xb0xという、スタンドアローンタイプのTB-303クローンがあり、x0x-heartは、そのx0xb0xのサウンドデザインを踏襲しつつシーケンサ部分を取り除き、SMT実装でユーロラックフォーマットに収めたモジュラーシンセサイザーです。
x0x-heartはTB-303のレプリカではありますが、オリジナルのTB-303のサウンドを再現させるべく作られたものです。一部の部品はコスト削減のため、安価なICチップ等に置き換える設計がなされています。しかしながら、TB-303固有のビキビキしたフィルターとDecayの特性は十分に再現されており、VCAが作る特有のクリップ感は、オリジナルのTB-303を彷彿させます。
モジュラーシンセフォーマットに収められたx0x-heartには、TB-303の特徴的なシーケンサーが付属しません。しかしこれは、TB-303の音を、モジュラーシンセサイザーの自由なシーケンサー等と組み合わせて使用できることを意味します。モジュラーシステムで作るCVでx0x-heartをコントロールすることにより、より自由にオリジ ナルのTB-303サウンドを作る環境を手に入れることができると言えるでしょう。
x0x-heartの構成
x0x-heartの内部的な構成は、当然、オリジナルのTB-303と似たものになっています。ですが、各所に少しずつ機能追加がなされている形です。
基本的な構成としては、VCO → VCF → VCAという流れでオーディオを作ります。VCFにはEnvelope Modulation(Env Mod
)が用意され、VCAには内蔵のDecay Envelope(Decay
)が割り当てられています。これらEnvelopeらはGate
ジャックにCVを受けるとトリガーされます。
Accent
ジャックにCVを受けると、Decayが短くなり、VCAのGainがやや上がり、VCFのかかり具合が強くなります。この結果、これらはオリジナルのTB-303を模した挙動になっており、音色のアクセントを作り出します。
VCOとしてはSaw wave/Square waveが選べ、このピッチは1V/Oct
ジャックから受けるCVと、Tuning
ノブによりコントロールします。この2つを単独で選べるだけではなく、両者をMixした波形を使用することも可能です。(Saw:Sqr
スイッチ)
もしくは、Ext In
より外部オーディオ入力を受け取り、これをVCOの代わりに使用することも可能で、この場合はx0x-heartのフィルタ以降の部分を使用することになります。ほか、Ext In
と内蔵VCOをMixして使用することも可能です。(Ext:Int
スイッチ)
Slide
ジャックにCVを受けている間は、ピッチの変化がゆるやかになり、TB-303のスライドと似た効果を作り出します。
得られるオーディオは、VCF Out
とVCA Out
の2つのジャックより出力されます。通常はVCA Out
を使用することになり、ここからはTB-303らしい音を得ることができますが、VCF Out
から出力される、VCAにルーティングされる前のシグナルを使用することも可能です。
Volume
ノブは出力ボリュームをコントロールするノブですが、これは音量というよりかは、VCAが作るクリップ度合いをコントロールするものと考えるのが適切と言えそうです。
x0x-heartの作る音
キャリブレーションの過程で、フィルターの効き具合をコントロールするステップがあるのですが、これを少し変えるだけで、レゾナンスのかかり具合が大きくが変化しました。Cutoff
のCVやEnv Mod
のCVを入れることで、かなり広く各パラメーターがコントロールでき、これらパラメーターの値によっては、はTB-303よりもよりハードなレゾナンスを作れるような印象です。
外部オーディオを併せて使用できる機能も面白く、いじりがいがあります。内蔵VCOとは別に、ピッチをコントロールしていない、流しっぱなしのトーンをExt In
へ入れっぱなしにしておくなど、様々なパッチングを楽しめます。また、VCAの作るクリップ感とフィルターのレゾナンスの相性はバッチリで、これがTB-303ぽい、乾いた感じとも形容できそうな、潰れた印象のレゾナンスを作り出します。
このx0x-heartというプロジェクト自体はオープンソースであり、こちらは実装していませんが、VCFのかかり具合をよりハードにするような改造を施すこともできるようです。
このような制作過程を経て感じることとしては、このx0x-heartというモジュールは、各種部品を組み合わせ、TB-303らしき音が鳴るスウィートスポットに調整されているモジュールという印象があります。それでもなお深掘りしたければ、色々自分で部品を変えたりしてみてねという形です。なので、オリジナルのTB-303と全く同じかと言われると、まぁ確かにそうではないだろうとは思いますが、モジュラーシステムの中で忠実なTB-303の音が欲しい方には、かなり良い選択肢なのではないでしょうか。
フィルターの効き具合は、強すぎると、ICチップによるデジタルみが強く現れ、これはオリジナルのTB-303の音から離れてしまう印象を私の方では受けました。なので、このレゾナンスがハードになりすぎない程度のいい塩梅に、私の方で調整した状態になっています。そんなx0x-heartをお楽しみいただけ ると幸いです。
マニュアル
このx0x-heartには、以下でマニュアルが公開されていますが、ビルダー向けの技術的な内容が大半を占めています。なので、実際に触ってみて覚えるほうが速いかもしれません。
参考動画
x0x-heartは設計当初、クラウドファンディングで資金提供を募って初めのロットが製造された経緯があり、以下はその時のプロモーションビデオです。
他、私の方でx0x-heartを2つ鳴らしているセッションを撮ってみたので、ご参考までにどうぞ。
技術仕様
- 幅: 18Hp
- 深さ: 45mm
- 消費電力: 10mA +12V/10mA -12V/50mA 5V
付属品
- フラットケーブル
- ネジ
製品の保証について
こちらの商品は海外店舗で販売されているDIYのキットを購入し、Takazudo Modularで組み立てたものであり、メーカーの保証はありません。購入後1ヶ月以内の初期不良のみ、当店にて対応させていただきます。ですが、こちらで作ったものなので、不具合への対応はある程度予測が付く可能性があるため、何か問題を見つけた場合は、ひとまずご相談ください。
オマケ: 電氣美術研究會モジュラー小物セット付き
モジュラーシンセをもっと多くの方に触って欲しいという願いの元、電氣美術研究會さまにご協力頂き、モジュラー小物セットを本商品にバンドルさせて販売させていただいております。
パッチケーブルや電源ケーブル、ドレスナットのサンプルセット、モノラルスプリッターなど、内容は時期に応じて変化します。商品に同梱しますので是非お試し下さい!
x0x-heartの紹介は以上になります。
TB-303は様々な方法で模倣され、より安価な選択肢も豊富に存在するでしょう。そんな中で、このx0x-heartの良さというのは、Opem Music Labsの選別したアナログ回路+SMDによる、アナログみがある音質と、モジュラーシステムに組み込めることによる、シーケンスの自由さと言えるかもしれません。
あのビキビキしたレゾナンスを求めている方には是非お試しいただきたいモジュールです。
ご参考になれば幸いです。