Mordax: DATA紹介

2024/02/27 Author: Takazudo

Takazudo Modularにて取り扱わせて頂いている、MordaxのDATAの紹介/解説記事です。

DATAは、ユーロラックモジュラーシンセ向けの多機能ユーティリティモジュールです。オシロスコープスペクトラムアナライザスペクトルグラフチューナーボルテージモニタといった、テスト系ユーティリティに加え、2ボイスのデジタルオシレータークロックジェネレーターまで搭載しています。

モジュラーを深く触っていきたい方には、是非ともおすすめしたいモジュールです。

こちらの商品は、以下よりご購入頂けます。
黒パネル版、シルバーパネル版の2種類がございます。

なぜDATAが必要なのか

このモジュールができることは実に多彩です。その詳細は以降に紹介する動画を参照いただき、なお不明点がある場合にマニュアルをご参照いただくのが良いかと思います。

ここでは、私の考えるDATAの魅力をご紹介します。

動画でよく見かけるDATA

まず、このDATAというモジュールは、YouTubeなどでモジュラーシンセの解説動画を見る際には、かなりの割合で見かけるものであり、このモジュールの存在を認知している方は多いかと思われます。

しかしながら、値段がそれなりにするものなので、あえて導入するかという時には躊躇するようなものかもしれません。ですが、私の印象としては、このDATAは、深くモジュラーを使っていきたい方には、是非手元にあったほうが良いモジュールだと考えています。

どうやって音が鳴っているのか

DATAが使われている様子

モジュラーシンセを触っていく場合、モジュールとモジュールの間をつなぐパッチケーブルの中を流れているものは、電流です。それぞれのモジュールが多様な方法で電圧を発生させ、それをあれこれ組み合わせ、最終的にスピーカーのコーンを揺らすことで音になります。

この時に、中でどのような電圧の揺れが発生いるのか。オシロスコープが無い環境では、それは想像の世界になってしまうでしょう。別にそんな正確な波形が見えなくとも、音を鳴らすことはできます。このツマミをこういう風に回したら、こういう感じの音が出る……。それで十分であるとも言えます。

例えば我々はリコーダーに息を吹き込むとなぜ音が出るのか、ピアノがどういう理屈でああいう音を生み出すのかは知らなくても、それらの楽器を使って音楽を楽しむことはできます。同様に、シンセサイザーだって、「こういう音がでる楽器だ」という認識で使ったって問題はありません。

理解する楽しみ

ですが、モジュラーシンセサイザーの場合というのは、この部分を知っていく部分に大きな楽しみがあると、個人的には考えています。そして、そこで何が起こっているのかが分からなければ、何か適当に使ってみるも、よく分からずにやめてしまうという状態に、簡単に陥る楽器だとも考えています。

例えば、Make NoiseからリリースされているMathsというモジュールがあり、これは根強い人気がある、非常に著名なモジュールです。

とある調査だと人気ナンバーワンにもなったことがあるとか。しかし、このモジュールは、入力されたシグナルを加算や減算、ほか様々な方法で変化させるFunction Generatorであり、うまく使いこなすにはなかなかの熟練を要するモジュールです。(そのようなモジュールがナンバーワンになるというのもまた興味深いですが)

このようなモジュールを、オシロスコープ無しで理解するのは、ほとんど無理に近いのではと私の方では感じてしまいます。少なくとも、モジュラーを始めようと思ってMathsをいきなり買った方の多くは、「モジュラーシンセって難しいんだな……」と感じられて自然ではないかなと。

この「難しい……」というのは、電圧が見えないものだから、人にとっては自然なことだと私は考えます。それが少なくとも見える状態になることで、モジュラーシンセの世界をよりクリアに、メガネを掛けたような状態で見ることができるようになります。そして、ここで起こっている様々なことを理解していく……。そのようなプロセスが、モジュラーシンセの楽しみの一つであると私は考えます。

そう、手元にDATAがある人は、DATAが無い人の環境よりも圧倒的にクリアに、このモジュール間で起こっていることを確認できているのです。

DATAの優位性

ですが、それはオシロスコープについての一般的な話です。そこであえてDATAを選ぶ理由としては、私は以下のように考えています。

  1. 高いリフレッシュレート
  2. ラックに並べられるということ
  3. その他様々なツールの内蔵

1. 高いリフレッシュレート

DATAの最大の優位性は、そのリフレッシュレートの高さにあると私は考えています。

例えば以下の動画では、オシレーターの波形をDATAのオシレーターに通しています。

見てもらえるとお気づきになられるかと思うのですが、非常に高い頻度でディスプレイが更新されています。私は別途、より安価なオシロスコープのツールを所持していますが、ここまで細かく、高速に波形の状態を確認することはできません。これはひとえに、DATAの機械的なスペックが高いから可能なことです。

なので、良いツールを使って、モジュラーシンセを理解していきたいと考えている方は、DATAは非常に有力な選択だと私は考えています。これは、大工が良いハンマーやノコギリを使いたいと考えるのと似ていると言えるのではないでしょうか。

2. ラックに並べられるということ

このDATA自体が、ラックに並べられるように設計されているというのも、DATAの優れているポイントの一つだと私は考えています。

おそらく、これがモジュールになっていなかったら、YouTube等の解説動画でよく見かけることにはなっていないかと想像されます。モジュールになっていることで、ラックのスペースを埋めてしまうというデメリットもありはしますが、そのデメリットを上回る視認性の良さを、このDATAは持ち合わせていると言って間違いないでしょう。

ライブパフォーマンス向けのラックには並ばないかもしれませんが、家であれこれ試す時には、脇に小型のケースに入れたDATAを並べておくような使い方も便利です。

3. その他様々なツールの内蔵

この記事を書いている3ヶ月ぐらいの間で、自分はかなりの数のモジュールをDIYしたのですが、そのキャリブレーションの過程で、常にDATAを便利に使ってきました。

オシレーターの出音をチューニングする際には、モジュールの1V/Octにシグナルを入れながら、DATAのチューナー機能で正確なキーを確認。固定の電圧を出すモジュールであれば、OutジャックをDATAにつなぎ、ボルテージモニタで正確に5V出力されるように調整。

このようなDIYのステップを踏むことで、モジューから出力されている電圧がどの程度のものなのかに、より目がいくようになったという変化が自分の中にありました。

他、DATAのクロックジェネレーターを使っているという方を見けけたことがありました。このDATAには4つのCV Outジャックを備えており、内蔵クロックを出力するだけではなく、外部クロックをdivide/multipleさせることも可能です。

これら機能は、必ずしもDATAでなければならないというものではありませんが、DATA一つあれば、これだけのことが可能になるのですから、一家に一つあったら便利かもしれないというのは、お分かりいただけるのではないでしょうか。

参考動画

以下は、Mordaxの公式DATA紹介動画です。一通りの機能をライトに解説しています。

DivKid氏によるより詳しい解説も以下でご確認いただけます。

以下は、DATAのオシレーターを私の方で使ってみたセッション動画です。オシレーターが欲しくてDATAを検討される方はほぼいないかと思いますが、こういうことも可能という参考としてご参照いただければと思います。LFOとして使うと、波形が見えるメリットも活かせて便利かもしれません。

マニュアル&ファームウェア

以下公式Webサイトよりマニュアル/ファームウェアのダウンロードが可能です。

仕様

  • 幅: 16HP
  • 深さ: 35mm
  • フルカラー、2.8インチ(71mm)、擦り傷防止のクリアディスプレイ
  • miscroSD(付属しています)によるファームウェアアップデート可
  • 消費電力(平均): 〜250mA +12V/〜60mA -12V

入力/出力

  • 4つの入力ジャック(±10V)
    • 各入力チャネルごとに1つ、合計4つのバッファードスルージャック
    • 画面上のコントロールを介してAC/DCカップリングが選択可
  • 4つの出力ジャック(+10V〜-5V)
    • CV/Audio/Trigger/Gateシグナルを出力可

付属品

  • フラットケーブル
  • ネジ
  • Mordaxステッカー

Mordaxについて

Mordaxは、アメリカ合衆国ワシントン州バンクーバーに拠点を置くユーロラック・モジュラーシンセサイザーの会社です。

Mordaxの取り扱っている商品は、多機能ユーティリティーモジュールのDATAのみ。しかしながらこのDATAの知名度の高さと、DATAに対する高い世間の評価は、Mordax社の技術力の高さを証明していると言えます。

電氣美術研究會

オマケ: 電氣美術研究會モジュラー小物セット付き

電氣美術研究會

モジュラーシンセをもっと多くの方に触って欲しいという願いの元、電氣美術研究會さまにご協力頂き、モジュラー小物セットを本商品にバンドルさせて販売させていただいております。

パッチケーブルや電源ケーブル、ドレスナットのサンプルセット、モノラルスプリッターなど、内容は時期に応じて変化します。商品に同梱しますので是非お試し下さい!