RYK Modular: ALGO紹介

2024/10/23 Author: Takazudo

Takazudo Modularにて取り扱わせて頂いている、RYK ModularのALGOの紹介/解説記事になります。ALGOはFM Synthesis(FMシンセシス: 以降FMシンセ)をベースとする、コンプレックスオシレーターバンクです。FMシンセの魅力である複雑なハーモニー生成を、アナログさを意識した直感的インターフェースで操作することが可能なモジュールです。

wave fold(ウェーブフォールド)/chorus(コーラス)/wave warp(ウェーブワープ)/detune(デチューン)/内蔵VCAなど、プラスアルファの機能の豊富さも嬉しいオシレーターです。

なお、こちらの商品は、Takazudoが自身がDIYキットを使って作成したモジュールです。ビルド後、一通りの機能のチェックを行い、パスしたものを出品しています。また、このモジュールのメーカーであるRYK Modularにも許可を得て販売しているものです。

こちらの商品は、以下よりご購入頂けます。

商品写真

写真:商品表側

写真:商品裏側

写真:商品横側

写真:商品付属品

ALGO機能解説

まず、このモジュールの解説を書こうとしていたら、動かしつつ説明した方が良かろうと思い、私Takazudo自信が喋りながらALGOを実際に鳴らしつつざっくり解説する動画を撮りました。使い方の細かい部分もこの動画の中で9割方触れました。

以下がその動画になりますゆえ、ご興味ある方はご参考にしていただければと思います。

ひとまずこのページでは、ALGOの機能がなんとなく分かるよう、テキストでALGOを解説して参ります。

ALGOとはどういうモジュールか

このALGOというモジュールは、基本的にはFMシンセ+αなオシレーターと捉えるのが適切でしょう。ベースとなるのは4オペレーターのFMシンセ。そこに以下のような様々な機能が加えられています。

  • ピッチの段階的な変化
  • wave warp
  • wave fold
  • detune
  • sync input
  • 内蔵chorus
  • 内蔵VCA
  • ステレオ出力

これら機能のリッチさもさることながら、なんと言ってもこのALGOの一番の特長は、FMシンセを直感的に操作できるインターフェースを備えている点であると、私Takazudoは考えています。

RYK Modularの2つのFMシンセモジュール

写真:Vector Wave

RYK ModularはこのALGOのリリース以前に、同様にFMシンセなモジュールであるVector Waveをリリースしています。当店でもVector Waveを取り扱っており、以下に紹介記事を用意しています。

Vector Waveというのは同様にFMシンセベースのオシレーターなのですが、そちらはなんと16個のオシレーターが同時に使えるというパワフルなモジュールなのです。その16個のオシレーターは4つずつにグループ化されており、その4つをジョイスティックでミックスして使用できるというリッチな機能を持っています。

そのVector Waveと比べるとこのALGOは4つのオシレーター。前述したwave foldやwave warpも同様に内蔵されており、言ってみればVector Waveを4つに割ったうちの1つとでも言ったようなモジュールです。だったらなぜALGOを選ぶのか? この2つには設計思想の違いのようなものが感じられます。

Vector Waveの特徴

写真:Vector Wave

Vector Waveは16個のオシレーターを持つと書きましたが、それらオシレーターはどのようにコントロールするでしょうか。その操作は8つのロータリーエンコーダーと4つのボタンを用いて行います。これらボタンやノブの操作に応じ、モジュール中央上方にあるディスプレイには様々な情報が表示され、メニューを辿る操作で多様なパラメーターの設定が行えるようになっているのです。

外部CVによるコントロールのためには、M1〜M4の4つのジャックが用意されており、ここに外部からCVを渡し、この4つの入力を好きなパラメーターへとルーティングできるようになっています。その他、MIDIに対応しており、MIDIジャックからNote ON/Note OFFを受け取るだけでは無く、CCを好きなパラメーターへとルーティングすることも可能。

このようにして作った音色やルーティングをプリセットとして保存することが出来るため、いくらでも深い音作りが出来るのに加え、ライブパフォーマンスのための即戦力としても使える、パワフルなオシレーターです。

Vector Waveに対するALGO

このようにVector Waveパワフルなシンセとして振る舞いますが、その分、操作するためのインターフェースをこのモジュール自体には用意していないという側面があります。

あらゆるパラメーターは操作可能です。ですが、それはボタンを押しながらメニューを下り、エンコーダーを回すという手順を経て行うものとなっています。そして多数のパラメーターをコントロールしたければ、別途MIDIコントローラーを用意することになるでしょう。このあたりのインターフェースはデジタルモジュールらしい設計になっていると言えるでしょう。

写真:Vector Wave

ALGOはVector Waveの1/4を抜き出したようなモジュールですが、Vector Waveと大きく異なるのは、それぞれのオシレーターについて、Frequency(周波数:ピッチ)とLevel(音量)を操作できるノブが用意されているという点です。他の機能はVector Waveと似ているので、ここが最も大きい違いと言ってしまって良いでしょう。Vector Waveのようなディスプレイはありませんが、操作の上で重要なFMシンセのモジュレーション関係を表すアルゴリズムはLEDで表現されます。(これがまた見た目的にクールな感じです)

「それだけ?だったらVector Waveの方がいいかな」と思われる方はおられるかも知れませんが、実際に手元にこの2つのモジュールがあってそれぞれ操作してみると、そのインターフェースの違いが大きなものであることに気付かされます。機能としては似ていますが、いじっている時の感覚はかなり異なります。

私Takazudo自身は、このALGOを触ってみて、Vector Waveのの方は前述したような、言ってみればデジタルの音源モジュールのような側面が強いものであったのだと、改めて気付かされました。と言うのは、このALGOの方は、ベースはデジタルのオシレーターなのですが、メインのFMシンセ部をコントロールするためのノブがそこにあると、あたかもアナログのオシレーターを操作しているような感覚になったためです。

ここで私が言う「アナログ」ということ、要するに私が「アナログだ」と感じていた要素の一つというのは、つまるところその操作感のことであったのでしょう。シンセサイザーの主要な部分をコントロールを、そこに用意されたノブやボタンを用いてコントロール出来ることは、そのモジュールに対する印象としてとても大きな意味合いを持つのだと、このALGOを触って気付かされたのです。

ALGOは、そのパワフルさにおいてはVector Waveに劣ります。ですが、FMシンセの音作りを直感的に楽しみたい場合、そこはALGOに軍配が挙がると私は考えます。アナログな操作感を意識したデジタルFMシンセ、それがこのALGOであるというのが私の感想です。なのでFMシンセ楽しみたい方、柔軟にFM部分がコントロール出来るALGO、オススメです。

参考動画

以下はRYK Modular公式のALGOデモ動画です。ALGOのサウンドと機能をざっと把握できる短い動画になっています。

以下はCinematic Laboratory氏によるALGOの紹介/解説動画です。解説もさることながら、驚異的にかっこいい映像ですね。

以下はMylar Melodies氏による、ALGOを使って様々なスタイルのシンセサウンドを作っている動画です。ALGOの作るサウンドの感じを把握するのに良いです。

以下は私の方で撮ったALGOを使ったハードテクノ的なセッションです。ALGOを作った後、お試しで色々いじったものです。こちら、シンセはALGOのみです。

マニュアル

以下公式サイトにてマニュアルが公開されています。

その他

  • 2024年10月に作成、インストールされているファームウェアのバージョンはV1.2です。

技術仕様

  • 幅: 18Hp
  • 深さ: 25mm
  • 消費電力: 70mA +12V/6mA -12V/0mA 5V

付属品

  • フラットケーブル
  • マニュアル(英語)
  • ネジ
  • ステレオスプリッターケーブル

製品の保証について

こちらの商品はメーカーよりDIYのキットを購入し、Takazudo Modularで組み立てたものであり、メーカーの保証はありません。購入後1ヶ月以内の初期不良のみ、当店にて対応させていただきます。ですが、こちらで作ったものなので、不具合への対応はある程度予測が付く可能性があるため、何か問題を見つけた場合は、ひとまずご相談ください。

RYK Modularについて

RYK Modularは、2009年に設立された、イギリスに拠点を置くブランドです。

デジタル技術を生かしつつ、操作感が複雑になりすぎないように配慮されたモジュールのラインナップは、MIDIが使われるモジュールが多く見受けられるようになってきた昨今、今後のリリースにも注目が集まるメーカーです。

電氣美術研究會

オマケ: 電氣美術研究會モジュラー小物セット付き

電氣美術研究會

モジュラーシンセをもっと多くの方に触って欲しいという願いの元、電氣美術研究會さまにご協力頂き、モジュラー小物セットを本商品にバンドルさせて販売させていただいております。

パッチケーブルや電源ケーブル、ドレスナットのサンプルセット、モノラルスプリッターなど、内容は時期に応じて変化します。商品に同梱しますので是非お試し下さい!

ALGOの紹介は以上になります。

FMシンセを体で理解したい方に特にオススメのモジュールです。モジュラーのセットアップに、FMシンセの豊かなハーモニーを加えたい場合にも有力な選択肢となるでしょう。そして何より見た目がクールです。RYKのモジュールはいずれも見た目にもこだわって作られていると感じます。

ご参考になれば幸いです。