
今回はモジュラーシンセの電源入門的な話を書きます。いやーモジュラーシンセの電源、よく分からなく無いですか? え?これでいいの?自分あってる? 雰囲気で使ってるんですけど、これって大丈夫なのかな……とかいう心配って無いですか?
今回の記事はそういう、電源初心者的な人向けの内容になってます。
私と電源
筆者Takazudoなんですが、モジュラーシンセの電源を自作して使っています。普段YouTubeに録画したモジュラープレイ動画見たいのをアップロードするなどしているんですが、それらで最近のものは全部、自作電源で動かしています。こういうやつ。


なんでわざわざそういうの作っているのか?と言いますと、自分でケースを作ってみたら、電源も欲しくなり、ただ電源単体で買うとわりと値段もするので、電源も自分で作れないか?と思ったのが始まりでした。それで色々調べていたところ、公開されていた回路や解説があったので、初めはそれらを見ながら真似するなどしてみていました。
取り立てて参考にさせて頂いているのは以下、Moritz Klein氏の動画や、当店でも扱っているブランドAI Synthesisで販売している電源モジュールの回路図なんかです。(この商品自体は2025年3月現在、取り扱っていない状態です)
- DIY SYNTH PSU: How to design a simple dual power supply
- DIY Eurorack Power Supply Build Guide - AI Synthesis
ただ自分はそういう電子回路とかの知識は中学生レベルで止まっているぐらいの人間でして、何も分からず。なのでひたすらchatGPTに聞きまくったり、YouTubeの解説動画を見るなどして、ボチボチ学んでいる感じです。最近ですとchatGPTに回路図の画像渡して「解説して」ってやると教えてくれたりするので、それにひたすら質問を続けるなどしてます。
ただまぁなんと言うか、電源は非常に奥深いですね。いやだってそうですよね、フツーに出来たら家電とかのコアな部分を作れることになりますし、ただ電源を学ぶことで、回路的には一番根っこの部分から知れて良かったのかなという気はしています。
そうやってある程度理解を深めて行くと、モジュラーシンセの電源周りで何が起きているのかが徐々に分かってくるんですが、逆にそれを分かっていなかった時点に立ち戻ると、いやそこで何が起こっているのか全く分からないし、不安になって当然だなと思ったりしまして、ひとまずこの記事ではそういう不安がある程度でも解消されれば良いなーと。そんな感じです。
乾電池と豆電球
というわけで、電源の話を私の理解レベルで書いていきます。ということで早速モジュラーシンセの電源について書いていきたいところですが、モジュラーシンセの電源は、+12V、+5V、-12Vと3つの電圧を用意し、各々のモジュールに供給しています。これはかなりややこしいので、ごく単純な例から順に説明していきます。電圧とか電流とかそういう話から。
まず、超シンプルな例として、単三電池で豆電球を点灯させるという回路で考えてみます。たぶんみんな小学校とかでやったかと思うんですがこういう。

この回路では豆電球が点灯するわけですが、この時、電池の+極からー極へと電流が流れます。この電流は、乾電池が+1.5Vの電圧を回路に供給することで発生するものです。
この電圧ってそもそもなんなんでしょう? そういう部分から自分は分かんなかったんですが、この電圧/電流はよく、水の流れに例えられることがあります。以下がその図です。

この図では、乾電池が+1.5Vの電圧を回路に供給しているところを、水をポンプなんかで高い位置へと押し出すことに例えたものです。水を高い位置に押し上げること。これが電圧を回路にかけることを示しています。「電圧をかける」というのは、回路に電気的な圧力を与えるってことですね。電気流れろー!っていう謎の力。そういうのが電圧のイメージです。
高い位置にある水は、落ちるエネルギーにより豆電球を光らせて、元の低い位置へと戻る、これが+極からー極へと電流が流れるということで例えた図です。

この豆電球が光るのは、そういう特性を持つ細い金属の線、フィラメントを電流が流れることで発生する現象です。これもまた水の流れで言いますと、図のように、フィラメントという、細い管を水が通ることで、光と熱を発生させるという具合です。管の中には障害物がたくさんあり、それに水が当たると光るようなものと考えて下さい。
この豆電球にも、明るいものや、そんなに明るく光らないもの等種類があります。これは家庭用の白熱電球や蛍光灯をイメージするとわかりやすいかと思うのですが、一般的に明るい電球はたくさんの電流を流しますが、暗めの電球はそこまでの電流を流さないような作りになっています。モジュラーシンセもこれと同じで、その機能(というか中で使われている部品)により、たくさんの電力を必要とするものもあれば、そんなに電力を必要としないものもあります。
ここで一旦、電圧や電流の関係をまとめてみると以下のような感じです。
- 電圧: どのくらいの高さから水が落ちるか。高ければ高いほど、水が落ちるエネルギーが大きくなる。
- 電流: どのくらいの量の水が流れるか。水の流れる量は、電圧と回路(の中の部品群)により決まる。
- 豆電球: 豆電球に流れてくる水の量(電流)が多いほど、明るく光る。豆電球によってどのくらいの水の量(電流)を流せるかが違う(負荷)。
ひとまず、そんな風に、電圧をかけると、回路の途中にある部品で何かしらが動作し、電流は元の低い位置へと戻っていくということが、ここでは起こっています。
ここで起こっていることの実際のところは、別に実際に水が流れているわけでも無いし、電流というのは+極からー極へという方向ですが、実は電子の流れはー極から+極へ動いているとか、色々細かい話は書くとキリが無いのですが、この記事ではざっくり分かったつもりになって貰えることをゴールとしたいです。
なので、ほうほう、電圧をかけると水みたいな何かが流れるっていう、そういうイメージなのね〜〜ぐらいの理解で先に進みましょう。ひとまずこれが豆電球が光る仕組みのイメージなんですよと。
電気回路の理解について
私自身、こういった回路のことを学ぶなどしていて感じることがありまして、それは、究極的にはこういったことは、自然界にある電気の性質を利用して、我々人間が便利に何かしら役に立つものを作って使っているものであり、別に本当に何が起こっているかを知っている必要は特に無いと言うことです。
その本当の真の理屈を知ることも楽しいものですが、感覚的には、そういう性質を用いた部品があり、それを組み合わせて使っているという程度の理解でいいんじゃないかなと考えています。例えば、パソコンやスマホの仕組みを全部理解して使っている人はごくわずかですし、まぁシンセだって、鍵盤を押したら音が鳴るものとして捉えているでしょう。
ですが、まぁ我々が不安を覚えない、そこで何か起こっているのかという概要を分かる程度ぐらいは知っておくと、色々と理解も深まり良いんじゃないかと思ってます。
モジュラーシンセの電源
別にオレは豆電球の話を聞きに来たわけじゃねェんだよ!と感じられているかと思いますので、モジュラーシンセの電源の話に戻ります。モジュラーシンセの電源は、先ほど書いたように、+12V、+5V、-12Vの3種類の電圧を扱います。皆様、ケースなりとモジュールをリボンケーブルで接続して使っているかと思いますが、それぞれの端子は、以下の役割があります。

なお、このソケットは2×8の16ピンで、横2つのピンが8段ぶん並んでいます。この2つ横に並んでいるピンはセットになっており、バスボード上でも、接続されるモジュールの回路上でも繋がっていることが多いです。そしてGroundとして囲んだ6つのピンは、これもまた同じで接続されていたり一部だけが実際にモジュールに繋がっていたりとかです。

それだけ聞くと、別に1×8ピンでも問題ないように思えますが、軽く調べたところ、1990年代にDoepfer社がモジュラーシンセを作り出し、そこで電源には既にコンピューターで多く使われていたリボンケーブルを利用したため、このようなピンとケーブルが使われるようになったみたいです。そういうデファクトスタンダード的な規格にあわせて作られているのがユーロラックモジュラーシンセって感じみたいですね。
あ、一応、モジュラーシンセを買ったことがない方向けに説明しておきますと、リボンケーブルというのは、写真のようなペラペラのケーブルでして、モジュールを一つ買うと、大体その電源ソケットに合うものが一つ付属しています。たいていの場合、電源ソケットには一箇所へこんでいる箇所があり、方向を間違えないように配慮されています。(そうなっていないものもあるのでご注意ください)
さて、そんなわけで+12V、+5V、-12Vの3種類の電圧をモジュールに渡すんだよってことなんですが、これらを全部一気に説明するとややこしいので、ここではまずモジュラーシンセ自体を豆電球であると考え、そのモジュラー豆電球を、+12Vの電圧で動かすものと想像してみます。
+12VとGround
このとき、先ほどの写真で示した+12V端子、Ground端子の2つを使い、モジュラーは電流を受け取ります。その時の電流の流れを図にすると以下のようなものとなるでしょう。

モジュラーシンセの電源の、+12V端子からモジュラーシンセへと電流が流れ、Ground端子へと戻っていきます。Groundというのは、電気回路の中で使われる一般的な用語です。高かったり低かったりする電圧が、最後に基準となる地点を戻っていく、その電圧の高さ的に低い地点をGroundと呼びます。先ほどの豆電球と電池の例だとー極がGroundに相当します。
先に示した写真で、モジュラーシンセの電源のピンで、+12Vの端子がどこか、Groundの端子がどこかを確認してみてください。+12Vは下から5段目、Groundは下から2〜4段目です。
-12VとGround
でもモジュラーシンセは豆電球じゃない。-12Vっていうやつもありましてなんなんだこれはってところです。こっちも同じように図にすると以下のようになります。

マイナスの電圧というのは、逆に電流が流れるということ。+12VからGroundへという場合は、+12Vが高い位置の水で、それがGroundへと戻っていくと説明しましたが、-12Vというのは、Groundからさらに低い位置の-12Vの位置へと水が流れ、これまたポンプなどで、Groundへと電流が押し戻されると想像すると良さそうです。電源ソケットの-12VとGroundグランドの端子を使い、この電流の流れが発生します。
-12Vの端子は、電源のソケットだと一番下の段です。リボンケーブルでは大抵赤くマークされている部分が-12Vに相当します。基板上でも大体間違えないよう、-12Vはこっちだと白い線が引いてあったりすることが多いです。
+12VとGroundと-12V
この+12VとGround、-12VとGroupを合わせると以下のような図になります。

これらをさっきと同じく、水の流れに例えた図にすると以下のようになります。

水だとドバドバと-12Vの方に全部貯まってしまいそうですが、Groundから下へは、部品が電力を要求するときに水が流れるようなイメージをして貰うと良いかと思います。
-12Vってなんなの?ややこしいぞ?って思うかもしれませんが、このマイナスの電圧が必要なのは、モジュラーシンセで使われる部品の中に、プラスの電圧とマイナスの電圧を必要とするものがあるためです。

例えばオペアンプという、入力波形を増幅させる部品があります。これは、例えばサイン波みたいな入力波形を、プラス方向にもマイナス方向にも増幅させることが出来ます。これは具体的にはボリュームを上げる時などに使われるのですが、このようなとき、プラス側に増幅するためにはプラスの電圧が必要なわけですが、マイナス方向へと増幅させるためには、マイナスの電圧が必要になります。
ほか、そのサイン波を出すオシレーターについても、プラスとマイナスの電圧を一定周期で発生させたりするわけで、モジュラーシンセでは各所でマイナスの電圧も必要となるのです。ここが一般的な電気部品と比較するとややこしいポイントの一つであると思います。
つまるところは、モジュラーシンセは面倒だがマイナスの電圧も使う部品がいっぱいあるので、+12Vに加え、-12Vの電圧をも供給してあげないといけない。そういうものだというところです。
電気が流れているのか実験
この記事を書いていて、うーんでも+12Vとか-12Vとかよく分からないよなと思ったので、自分で実験してみることにしました。つまるところ、電気の流れる方向としてはこうです。
- +12vからGroundへ
- Groundから-12Vへ
先ほど図に示したように、このように電流が流れているのだと。だったらそこに実際に豆電球でもなんでも入れてみたら分かるだろう?と思いまして、実際に以下を買って試してみました。

LEDルームランプ。12V〜85Vで光るようです。これはモジュラーシンセ電源の12Vの電圧で試すのに丁度良いだろうと。
ただし、LEDは豆電球と違うところがあります。豆電球はプラス極マイナス極の区別はありませんが、LEDはプラス極マイナス極がありまして、方向を間違えると動作しません。上の写真ですと赤リードが+プラス側、黒リードがマイナス側です。このプラスマイナスは電流の方向を考慮するので、先ほどの図に書き入れると、以下のような方向で繋ぐことになります。

最初の自作電源にリボンケーブルを繋ぎ、その先にこの図の通りにケーブルを差し込みます。こんな風に。

そして電源を入れると、こんな風に……

光りました!それもめちゃ明るい!
そんなわけで、モジュラーシンセの電源からはこんな感じに電気が流れてくるんですよという話でした。
え?+5Vはどうしたって?あとCVとかGateとかいう端子は?というかライト光らせただけでは?
書いていたら長くなったので、何回かに分けて書いていきます。ひとまず1回目ということで、また続きをチェックして頂ければと👌
ほか、この説明は違うぞ!とか言うご指摘もありましたら頂けると大変ありがたいです🙏
続き執筆済み。以下よりご参照ください。