Recovery Effects And Devices: The Mystic

作成: 2025/04/20 Author: Takazudo

Takazudo Modularにて取り扱わせて頂いている、Recovery Effects And DevicesのThe Mysticの紹介/解説記事になります。

あえて1V/Octに対応しないThe Mysticは、演奏者の注意をシンセサイズそのものに向けさせる、スタンドアローンのセミモジュラーシンセ。2オペレーターのFM構成とアナログディレイにより、持続的で有機的なドローン/ノイズなテクスチャを生成可能。

※ 本品の動作のためにはDC 9V、センターマイナス、200mA以上(一般的なBossスタイルのアダプター)のACアダプターが別途必要です。本品にはACアダプターは付属しておりませんので、別途ご用意ください。

こちらの商品は、以下よりご購入頂けます。

商品写真

商品写真1

商品写真2

商品写真3

商品写真4

基本的な使い方

The Mysticには、モノラルの3.5mm出力ジャックが後ろ側にあります。基本的には何か色々ノブやスイッチをいじっているとドローン/ノイズ的なオーディオシグナルが出力されるので、それを楽しんで下さいというシンセサイザーです。

出力ジャックの写真

しかし、このシンセサイザーには面白いシンセサイズ機能があり、これらがこのThe Mysticをユニークなシンセサイザーにしています。

LatchスイッチとMomentaryボタン

The Mysticを使う上でまず知っておく必要があるのが、Latch(ラッチ)モードのON/OFFができるという点です。以下写真で示した機材中央部にあるスイッチを、上側に倒すとLatchモードがON、下側に倒すとOFFになります。

LatchスイッチとMomentaryボタンの写真

LatchモードがONの時、ドローン的なオーディオシグナルが、ずっと出力され続けます。LatchモードがOFFの時は、機材下部にある(写真で示している)Momentary(モーメンタリー)ボタンを押している間だけ、オーディオシグナルが出力されます。

この機能により、ずっとドローン的なサウンドソースとして鳴らしておくことが出来るほか、アクセントとしてちょっとしたワンショットのサウンドを作り出すことも出来るようになっています。

FMシンセサイズからDelayへ

The Mysticの生成するサウンドのベースは、2キャリア、2モジュレーターのFMシンセサイザーになっています。The Mysticのオーディオ処理の詳細な流れは公式Webサイトで細かく公開されているわけではないのですが、私の方でいじったり、調べるなりしてみて、おそらく以下のような流れで生成されています。

回路図

この流れについて解説します。

2つのCarrier

まずこのシンセの原音とも言える部分は、2つのオシレーターの(おそらく)ミックスです。この2つのオシレーター、FMシンセシスに倣ってThe MysticではCarrier(キャリア)と呼んでいますが、この2つのCarrierは、個別に周波数をノブ/ジャックへのCV入力でコントロール可能です。そして、この2つのCarrierの生成する波形を加算して合成していると思われます。これらのコントロールが、以下インターフェースに相当します。

  • Carrier1の周波数制御
    • CARRIER FREQ 1ノブ
    • CF1ジャックへのCV入力
  • Carrier2の周波数制御
    • CARRIER FREQ 2ノブ
    • CF2ジャックへのCV入力

そして、この2つのCarrierの生成する波形は、おそらく純粋なサイン波です。(FMシンセでもそれが一般的なので)

ここでちょっと面白いのが、この2つのCarrierのピッチコントロールは、1V/Octに対応していないという点です。つまるところこれは、何かしらハーモニーを生み出すオシレーターとしてメロディを奏でさせるわけでは無く、これ単体でテクスチャ的なサウンドを生み出す楽器として使うよう、意図されている気がします。

2つのModulator

そしてこの2つのCarrierのほか、2つのオシレーターが用意されています。FMシンセシスの用語として、これはCarrierの周波数を変化させる役割をするものとして、Modulator(モジュレーター)と呼ばれますが、The Mysticでもこの言葉が使われています。この2つのModulatorが、2つのCarrierの周波数を同時に変化させます。

この2つのModulatorの周波数は、MODULATION RATEノブ、及びRATEジャックで受けるCV入力でコントロール可能です。この周波数変化は、2つのModulator両方に反映されます。そして、このModulatorが、Carrierに与える周波数変化の深さ(倍率)を、それぞれコントロールします。

ちょっとややこしいですが、この内容をまとめると以下のようになります。

  • Modulator1/Modulator2の周波数制御
    • MODUlATION RATEノブ
    • RATEジャックへのCV入力
  • Modulator1 → Carrier1/Carrier2 へのモジュレーション深度
    • MODULATION 1ノブ
    • MOD1ジャックへのCV入力
  • Modulator2 → Carrier1/Carrier2 へのモジュレーション深度
    • MODULATION 2ノブ
    • MOD2ジャックへのCV入力

ここでユニークなのが、Modulator1とModulator2の周波数は個別にコントロール出来ないこと。そしてModulator1もModulator2も、2つのCarrierに同時にモジュレーションをかけることです。

FMシンセでもあまりそういう構成になっているものは少ないかと思います。このユニークな構成が、極端なノイズ的な音響であったり、持続的なドローン音を生み出す鍵となっていると言えます。

なお、この2つのModulatorの生成する波形も、おそらく純粋なサイン波です。

Delay

そうして生成されたオーディオシグナルは、Delay(ディレイ)回路を通って出力。このDelayは最長500msで、短くするとエコー的な効果を得られます。

このDelayは、DELAY TIMEノブ、及びTIMEジャックで受けるCV入力でDelayの時間を、DELAY FEEDBACKノブでフィードバック(繰り返し)量を、DELAY MIXノブでDelayのレベルを調整可能です。

このDelayがあるおかげで、この前までで作られるドローンやノイズに、音響的な広がりを持たせることが手軽に出来るようになっていると感じます。

なお、始めに説明したLatchモードによるサウンドのON/OFFは、このDelay回路の前で処理されます。

Takazudo的The Mysticのポイント

このThe Mysticは、FMシンセ的な合成でサウンド生成を楽しんでくれ!と言っているような楽器であるように感じます。

FMシンセ的なオシレーターとして当店で扱っているものですと、RYK ModularALGOVector Waveが挙げられます。この2つは両方ともドローン的に使うことも可能なんですが、基本的には1V/Octを受け取って鳴らすことを想定して作られています。というかそれが普通のオシレーターなんですが、このThe Mysticは、あえてそのように1V/Octでコントロールできないという設計になっており、それは言ってみれば制限みたいなものなんですが、この作りが、FMシンセシス的な部分にユーザーの注意を向けさせるインターフェースになっていると感じます。

Takazudoとしては、この記事を書く上で、説明読むだけだとよく分からんなと思ってちょっと試したぐらいなのですが、なんか適当にいじっていても面白い感じがしますね。自分の場合、どうあってもなにか、スケールの中でしか音を考えられないみたいな傾向がありまして、その外側にある音響表現を探索し切れていない感じがしています。このThe Mysticは、この作り自体が何か、「シンセサイザーっていうのはそういうものじゃー無いんだ」と言われている感じがしています。

当店で扱っている楽器ですと、以下あたりと組み合わせてみても面白いかもしれません。

とりたてて、自分はADDAC112を色々使ってみようとしては、あまりうまくいってないというのを繰り返しているんですが、これってただメロディー的なものを入れてみてもうまいこといかない気がしておりまして、このThe Mysticのような、テクスチャ的なサウンドをソースにすると面白い気がしており、試してみようと考えてます。

参考動画

以下は、Recovery Effects And Devicesの公式YouTubeチャンネルにて公開されている、The Mysticのデモ動画です。

また、以下はPatchwerksによるThe Mysticの紹介です。

いずれの動画でも、The Mysticのユニークなサウンドを確認することが出来るので、是非ご参照下さい。

仕様

  • The Mysticのマニュアル
  • 寸法: 17.4cm × 8.5cm × 4.3cm
  • 対応ACアダプタ: DC 9V、センターマイナス、200mA以上(一般的なBossスタイルのアダプター)
  • オーディオ出力: Lineレベル

Recovery Effects And Devicesについて

Recovery Effectsは、アメリカ・シアトル発の音響機器ブランド。ハンドメイドによる高品質なエフェクトペダルやモジュラーシンセ用モジュールを製造し、独自のサウンドデザインと個性的な機能で多くの音楽クリエイターに支持されています。

オマケ: 電氣美術研究會モジュラー小物セット付き

電氣美術研究會

モジュラーシンセをもっと多くの方に触って欲しいという願いの元、電氣美術研究會さまにご協力頂き、モジュラー小物セットを本商品にバンドルさせて販売させていただいております。

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The Mysticの紹介は以上になります。

ご参考になれば幸いです。