Takazudo Modularにて取り扱わせて頂いている、ADDAC SystemのADDAC203 REV.02 CV Mappingの紹介/解説記事になります。
ADDAC203 REV.02 CV Mappingは、デュアルチャンネルのCV調整モジュールです。入力CVをAttenuate/Invertするのに加え、Offsetすることが可能。さらにOffset用のCV入力ジャックを持ち、Attenuateを最大増幅率を10倍のゲインへ変更する機能まで備わっています。
こちらの商品は、以下よりご購入頂けます。
ADDAC203 REV.02 CV Mappingの特長
ADDAC203 REV.02 CV Mappingは、CVのAttenuate/Invert、そしてOffsetを行うモジュールです。例えば、何かしらCVを出力するシーケンサーやLFOから出力されるCVを、振れ幅が大きければAttenuate/Invertして調節したり、Offsetして望む高さの電圧へと、CVのコントロールを行うために使用します。
入力が無い時はOFFSET
ノブの位置により、0V〜5Vの固定電圧を出力させることも可能。さらに、CV入力ジャックとは別に、Offset用のCV入力ジャックも備えており、このモジュールだけで簡易的なCVのMixを行うことができます。
左チャンネルのCV Inputは、右チャンネルのCV Inputにノーマル接続されており、右チャンネルへの入力がない場合は、左チャンネルのCVが右チャンネルにも入力されます。
初期状態ではGAIN
ノブはAttenuverterとして動作し、入力シグナルを増幅させることはありませんが、裏にあるジャンパーを切り替えることで、入力シグナルを最大10倍に増幅させる様に変更することも可能です。
4hpでコンパクトながら、ノブの大きさは操作しやすい大きめのタイプ。CVをコントロールしたいと思った時に欲しいAttenuverterとOffsetが一緒になっているところへ、さらに痒いところに手の届く機能が色々と詰まっているモジュール。モジュラーシステムにおいて、CVをコントロールしてあれこれ音を鳴らしてみたい方へ、是非ともオススメしたいモジュールです。
処理前後のCV変化例
本家マニュアル内に、CV処理結果はこうなるという図があり、これがなかなか分かりやすかったので、それぞれ簡単な解説と共にご紹介します。
例1: GAIN100%、OFFSET+5V
この例は、GAIN
ノブを右いっぱいに回した状態、OFFSET
ノブも同様に右いっぱいに回した状態で、サイン波のLFOをInputに受けた状態を示したものです。
まずGAIN
を右いっぱいに回した状態だと、Attenuverterは特にシグナルを変更しません。電圧の振れ幅としては100%の状態を保ちます。そしてOFFSET
ノブも同様に右いっぱいに回すと、この電圧を5V持ち上げます。
結果として、-5V〜5Vの中で上下していたサイン波は、同じゆらぎの幅を保ったまま、0V〜10Vの間を上下する結果となります。
例2: GAIN-100%、OFFSET+5V
この例は、GAIN
ノブを左いっぱいに回した状態、OFFSET
ノブは右いっぱいに回した状態で、サイン波のLFOをInputに受けた状態を示したものです。
例1と異なるのは、初めのGAIN
ノブの位置です。この時、Attenuverterはシグナルを100%反転させるため、入力されたサイン波のうち、プラスの電圧になっている箇所はその電圧の絶対値を変えずにマイナス方向の電圧に、逆に、マイナスはプラスへと変化します。そしてOFFSET
ノブも右いっぱいに回すと、この電圧を5V持ち上げます。
結果として、-5V〜5Vの中で上下していたサイン波は、位相が逆転した状態で、0V〜10Vの間を上下する結果となります。
例3: GAIN+100%、OFFSET+5V(ジャンパー10倍)
この例は、モジュール裏のジャンパーを、10倍へと切り替えた状態で、両ノブの位置は例1と同様、GAIN
ノブを右いっぱいに回した状態、OFFSET
ノブも同様に右いっぱいに回した状態で、サイン波のLFOをInputに受けた状態を示したものです。
例1ではGAIN
ノブを右いっぱいに回すと、入力シグナルを100%。つまりはそのままにしていましたが、この例3においてはジャンパーの設定により、10倍に増幅された状態になります。しかしながら、この結果として突然50Vもの電圧になってしまうわけではなく、部品の許容する最大/最小電圧でクリップされます※。
そしてOFFSET
ノブの位置に応じ、この電圧を5V持ち上げますが、この時の電圧はクリップされた状態を維持しているため、プラス方向は最大電圧ギリギリの高さでクリップ、マイナス方向は-5V付近で、それより下には下がりません。
結果的に、いびつな形の、矩形波に近い波形が出力されます。
※ 明記されていませんが±12V程度と考えておけばよいかと思われます
例4: GAINゼロ、OFFSET+5V
この例は、入力シグナル無し。GAIN
ノブ中央、OFFSET
ノブ右いっぱいに回した状態を示したものです。
この例においては、そもそも入力シグナルが無いため、GAIN
ノブの位置はどこであろうが関係ないのですが、OFFSET
ノブが右いっぱいに回されていて、+5V分、電圧を持ち上げているという状態になります。
結果としてどうなるかと言うと、0V+5Vで、5Vの固定電圧が出力されます。
例5: GAINゼロ、OFFSET-5V
これ例は例4の逆、OFFSET
ノブを左いっぱいに回し、-5Vの固定電圧を出力させる状態を示したものです。
以上が、CV処理前後の例となります。
ADDAC203 REV.02 CV Mappingの使いどころ
このモジュールは、CVをこのように普段から加工して色々音を作っている人にとっては、コンパクトで丁度良い感覚が分かってもらえるのでは?と、私は勝手に思っているのですが、そういうのがあまりピンと来ていない方にとっては、何やら難しそうな説明をされているように感じられるかもしれません。
ですが、私が個人的に考えているモジュラーシンセサイザーの楽しさの一つとして、このように、言ってみれば地味にCVをコントロールして、自分の望む音を作っていくという要素があると考えています。クオンタイザーやシーケンサーと組み合わせ、どういう風にパッチングしたら望む形になるのか。そういう試行錯誤の中で、このユーティリティ的なモジュールはかなり良い働きをします。
このモジュール単体を紹介しただけで、モジュラーは楽しいものだ!とお伝えするには無理がありますが、シーケンサー等と組み合わせた時に生まれる、そのようなモジュラーシンセの楽しみを、是非感じていただきたいと考えています。
何かしらそのような塩梅が伝わるよう、動画や解説を作っていきたいと考えておりますので、今後ともTakazudo Modularをチェックして頂けると幸いです。
技術仕様
- 幅: 4Hp
- 深さ: 25mm
- 消費電力: 40mA +12V/40mA -12V
付属品
- フラットケーブル
- ネジ
マニュアル
以下公式サイトにてマニュアルが公開されています。
ADDAC Systemについて
ADDAC Systemはポルトガルのモジュラーシンセメーカーです。
アナログ良さを生かした、ベーシックな機能をしっかり形にしているモジュールラインナップを基本としつつも、CVをMIDIに柔軟にコンバートしたり、高度にコントロール可能なグラニュラープロセッサー等、デジタル技術もうまく調和させた独創的なモジュールも数多くリリースしています。
オマケ: 電氣美術研究會モジュラー小物セット付き
モジュラーシンセをもっと多くの方に触って欲しいという願いの元、電氣美術研究會さまにご協力頂き、モジュラー小物セットを本商品にバンドルさせて販売させていただいております。
パッチケーブルや電源ケーブル、ドレスナットのサンプルセット、モノラルスプリッターなど、内容は時期に応じて変化します。商品に同梱しますので是非お試し下さい!
ADDAC203 REV.02 CV Mappingの紹介は以上になります。
CV道具箱のなかに一つか二つ、是非おすすめしたいモジュールです。
ご参考になれば幸いです。