Takazudo Modular: x0x-heart

作成: 2024/02/12 更新: 2025/04/15 Author: Takazudo

Takazudo Modularにて取り扱わせて頂いている、x0x-heartの紹介/解説記事になります。x0x-heartは、かの著名なTB-303サウンドを、現在調達できる部品で再現させ、ユーロラックフォーマットに収めたレプリカモジュール、自分の好みのシーケンサー等で303サウンドを鳴らすことが出来ます。

こちらの商品は、Takazudoの方で部品を集めて組み立て、パネルはデザイナーSAUCERと協力してデザインしたものを使用しています。パネルのデザインは5種類。お選び頂いたパネルを装着して本品をお送りしますが、着せ替え用に他4種類のパネルを同梱したセット商品です。

また、本品はオリジナルのx0x-heartの設計に、VCFの効き具合が改善の改造が施されたバージョンで、オリジナルのx0x-heartではCVによるCutoff(カットオフ)の変化が元々の雰囲気とだいぶ異なっていた点が改良されています。

また、5枚のパネルセットのみでの販売も行っております。

※ 2024年以前に当店で販売していたx0x-heartは、オリジナルの設計に忠実な実装をしており、こちらの改良は施されていません。

本商品は、以下よりご購入頂けます。

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x0x-heartとDIYモジュール

このx0x-heartというモジュールとは、Open Music Labs社が設計したものです。ただ、同社が販売しているのはx0x-heartのPCBパネル(スルーホールPCB+SMT済PCB)のみであり、DIY前提のモジュール。よって、世の中にある完成品のx0x-heartは、大きなメーカーが製造して販売しているものでは無く、誰かしらがそのPCBを使って組み立てたモジュールとなります。このモジュールの設計はオープンソースで公開されており、以下Webサイトで確認することが出来ます。

Takazudo Modularでは、このx0x-heartのPCBを購入し、公開されているBOM(部品リスト)を見て部品を集め、Takazudoの方で組み立てたものを販売しています。

x0x-heartの開発の前には、かつてAdafruit Industriesが開発していたx0xb0xという、オープンソースのスタンドアローンタイプのTB-303クローンの存在がありました。x0x-heartは、そのx0xb0xのサウンドデザインを踏襲しつつ、シーケンサ部分を取り除き、最近手に入る部品を使い、ユーロラックフォーマットに収めた、x0xb0xの精神的後継とも言えるモジュールです。

x0x-heartはTB-303のレプリカではありますが、オリジナルのTB-303のサウンドを再現させるべく、部品や回路が研究され、作られたものです。一部の部品はコスト削減のため、安価なICチップ等に置き換える設計がなされています。しかしながら、TB-303固有のビキビキしたフィルター特徴的なエンベロープ等は十分に再現されており、VCAが作る特有のレゾナンスが潰れたようなベース感は、オリジナルのTB-303を彷彿させます。

x0x-heartの特徴

一般的なモジュラーシンセの視点からこのモジュールについて説明するとすると、このモジュールはいわゆるシンセボイスと呼ばれる種類のモジュールであると分類することが出来るでしょう。当店で扱っているモジュールでいうと、以下のモジュールらが、同じシンセボイスとして分類されるものです。

これらモジュールは、一つのモジュールの中に、VCO(Voltage Controlled Oscillator: オシレーター)、VCF(Voltage Controlled Filter: フィルター)、VCA(Voltage Controlled Amplifier)、EG(Envelope Generator: エンベロープジェネレーター)が内蔵されています。何かしらGate(ゲート)とピッチ(1V/Oct)を送るだけでもシンセの音を出すことが出来るため、このようなモジュールのことを「シンセボイス」と呼ぶことがあります。

仮にこのx0x-heartを一つずつ分解してモジュールで用意するとすれば、VCO、VCF、VCA、EGを用意し、組み合わせないとならない。それが一つにまとまっているため、お手軽に使用することが出来るという具合です。

機能の忠実なコントロール

じゃあこのx0x-heartはそういう風にただ単に複数のモジュールを一つにまとめたようなものなのか?と言うと、そういうわけではありません。例えば、TB-303では、Envelope Generatorが内蔵されているものの、これはVCFとVCAに接続されています。Env Mod(Envelope Modulation: エンベロープモジュレーション)が0の時はVCFは動きませんが、Env Modを上げていくと、CutOffがEnvelopeにあわせて変化するような設計になっています。

また、TB-303のEnvelopeは、Attack(アタック)がコントロール不可で、短めのDecay(ディケイ)が特徴的。ほか、Accent(アクセント)がDecayとVCA両方に影響を与えたり、Slide(スライド)がピッチの変化に影響を与えたりというような、「TB-303らしさ」として認識されているような、シンセコンポーネント間のコントロール関係を、x0x-heartは再現しています。

原音を再現する回路設計

その様な要素を全てTB-303通りにすれば、TB-303っぽい音が出るのか?と言われるとそういうわけでもありません。実際に、ここで書いたようなことを頑張って再現しても、それだけではTB-303らしい音にはならないかと思われます。では、さらに何がTB-303らしい音を作っているのか?というと、それは使用されている部品や回路です。

例えばVCFと一口に言っても、その設計方法は様々。VCAは基本的に音量をコントロールするために使用されますが、これもまた、音量変化に留めるだけでなく、あえてクリップさせたり等、使用している部品や回路によっても変化の仕方がが変わります。TB-303のオリジナルの部品の多くは、既に廃番になっているものが多く、今揃えるのは困難です。ですが、できるだけオリジナルに近い出力を目指し、今手に入る部品で同じ音を再現しようと作られたのが、このx0x-heartというモジュールです。

モジュラーシンセフォーマットに収められたx0x-heartには、TB-303の特徴的なシーケンサーが付属しません。しかしこれは、TB-303の音を、モジュラーシンセサイザーの自由なシーケンサー等と組み合わせて使用できることを意味します。モジュラーシステムで作るCVでx0x-heartをコントロールすることにより、より自由にオリジナルのTB-303サウンドを作る環境を手に入れることができると言えるでしょう。

x0x-heartの使い方

x0x-heartの内部的な構成は、当然、オリジナルのTB-303と似たものになっています。ですが、各所に少しずつ機能追加がなされている形です。

解説図

基本的な構成としては、VCO → VCF → VCAという流れでオーディオを作ります。用意されているEnvelopeは一つですが、これはVCFとVCAの両方に影響を与えます。前項で書いたように、Env Modが0の時は、このEnvelopeはVCAだけをコントロールしますが、Env Modを上げていくと、VCFのCutOffにも同じEnvelopeがかかるようになり、これがTB-303の特徴的なうねる音を生み出します。このEnvelopeは、GateジャックにCVを受けるとトリガーされます。

AccentジャックにCVを受けると、Decayが短くなり、VCAのGainがやや上がり、VCFのかかり具合が強くなります。これもTB-303の挙動を模した設計であり、特徴的なアクセント効果を得ることが可能です。

VCOとしてはSaw wave/Square waveが選べ、このピッチは1V/Octジャックから受けるCVと、Tuningノブによりコントロールします。この2つを単独で選べるだけではなく、両者をMixした波形を使用することも可能です。(Saw:Sqrスイッチ)

もしくは、Ext Inより外部オーディオ入力を受け取り、これをVCOの代わりに使用することも可能で、この場合はx0x-heartのフィルタ以降の部分を使用することになります。ほか、Ext Inと内蔵VCOをMixして使用することも可能で(Ext:Intスイッチ)、外部オシレーターの音とミックスするなど、音作りの幅が広がります。

SlideジャックにCVを受けている間は、ピッチの変化がゆるやかになり、TB-303のスライドと似た効果を作り出します。

得られるオーディオは、VCF OutVCA Outの2つのジャックより出力されます。通常はVCA Outを使用することになり、ここからはTB-303らしい音を得ることができますが、VCF Outから出力される、VCAにルーティングされる前の、VCA独特のクリップ感がまだかかっていない出力を使用することも可能です。

Volumeノブは出力ボリュームをコントロールするノブであり、音量をコントロールすると共に、ソフトなディストーション的効果も得られます。

VCF改善のための改造

2025年3月以降にTakazudo Modularで販売している本品は、オリジナルのx0x-heartの設計に、VCFの効き具合が改善の改造を施しています。

2025年3月以前につくって販売していた本品はオリジナルのx0x-heartの設計のまま作っていましたが、そのオリジナル版には、CVでCutoff(カットオフ)をコントロールすると、かなり原音と雰囲気が変わってしまうという特徴がありました。

この問題を解消する改造方法が公開されており、以下PDFにある変更が適用された、ベターx0x-heartに仕上がっています。

パネル

本品のパネルには、当店で販売しているデザインブランクパネルをデザインしているSAUCERによるデザインバリエーションがあります。購入時に一点お選びいただき、そのパネルを装着。残りの4枚は、着せ替え用のパネルとして同梱されます。お好きなパネルに付け替えて、自分だけのx0x-heartをお楽しみください。

商品写真
商品写真
  • A: 黒バックにゴールド装飾
  • B: ゴールドバックに黒装飾
  • C: 黒ベースに凹凸によるグルーピング
  • D: アルミニウムベースに黒装飾
  • E: 黒ベースにボーダーによるグルーピング

ほか、パネル5枚セットだけでの販売も行っております。

マニュアル

このx0x-heartには、以下でマニュアルが公開されていますが、開発者向けの技術的な内容が中心です(そもそもPCBを販売しているだけなので)。たぶん、Webを検索してもそれらしき説明はなかなか無いかと思うので、本ページに書いた内容や、オリジナルのTB-303について解説されているリソースを参照されるのが良いかと思います。

内容物

  • x0x-heartモジュール本体
  • 電源用リボンケーブル
  • M3ネジ4本
  • M3プラスチックワッシャー

参考動画

x0x-heartは設計当初、クラウドファンディングで資金提供を募って初めのロットが製造された経緯があり、以下はその時のプロモーションビデオです。

他、私の方でx0x-heartを2つ鳴らしているセッションを撮ってみたので、ご参考までにどうぞ。(こちらは2024年に作った旧版のx0x-heartです)

以下も私の方でx0x-heartを2つ鳴らしているセッションです。こちらはこの改造版のx0x-heartで、CVでパラメーターをコントロールするなどしてみています。ほか、49分〜からはRYK Modular: ALGOの出力をx0x-heartのExt Inに接続し、x0x-heartのオシレーター部分を置き換えて使用するなどもしています。

以下もTakazudo録画ですが、x0x-heartをあれこれCVでコントロールしてならしている動画です。こちらはx0x-heartとADDAC104 VC T-Networksのシンプルな組み合わせで、x0x-heartの音がこんな感じと言うのが分かりやすいかも知れません。

技術仕様

  • 幅: 18Hp
  • 深さ: 45mm
  • 消費電力: 10mA +12V/10mA -12V/50mA 5V

製品の保証について

こちらの商品はTakazudo Modularで組み立てたものであり、メーカーの保証はありません。購入後1ヶ月以内の初期不良のみ、当店にて対応させていただきます。こちらで作ったものなので、不具合への対応はある程度予測が付く可能性が高いため、お手数ですが何か問題を見つけた場合は、ひとまずご相談ください。

オマケ: 電氣美術研究會モジュラー小物セット付き

電氣美術研究會

モジュラーシンセをもっと多くの方に触って欲しいという願いの元、電氣美術研究會さまにご協力頂き、モジュラー小物セットを本商品にバンドルさせて販売させていただいております。

パッチケーブルや電源ケーブル、ドレスナットのサンプルセット、モノラルスプリッターなど、内容は時期に応じて変化します。商品に同梱しますので是非お試し下さい!

x0x-heartの紹介は以上になります。

TB-303は様々な方法で模倣され、より安価な選択肢も豊富に存在するでしょう。しかしながら、TB-303っぽいか?と言われるとそうでもないな……と思わされるものも多かったりします。自分で一つずつ組み立てていて感じたことですが、AccentEnv Mod、短めなDecay、ピッチのSlideVCAでの音の割れ具合、それぞれがTB-303っぽさを作っているように感じました。

あの特徴的なTB-303サウンドを求めている方には是非お試しいただきたいモジュールです。

ご参考になれば幸いです。