ADDAC System: ADDAC215 Dual S&H+紹介

2024/04/25 Author: Takazudo

Takazudo Modularにて取り扱わせて頂いている、ADDAC SystemのADDAC215 Dual S&H+の紹介/解説記事になります。

ADDAC215 Dual S&H+は、二系統のSample&Holdモジュールです。ただし、このモジュールはそれに加え加算/減算/平均値の出力、ノイズ生成Track&HoldSlewが行えるなど、多彩な機能を持っています。

こちらの商品は、以下よりご購入頂けます。

Sample & Holdとは

まずはSample & Hold(以降S&H)とはなんぞやと言う説明をライトに行います。

ベーシックなタイプのS&Hは、CV入力Gate入力の2つを持ち、1つのCV出力を持つモジュールです。そのようなモジュールが実際に手元に存在していたとして、まずは以下の図を見て下さい。

図:Sample & Hold

この図では、CV入力に周期の長いサイン波のLFOを受け、定期的にGate入力へ、シーケンサーか何かからのGate出力を受けている様子を示したものです。

この時何が起こるかと言うと、CV出力のジャックからは、Gateが入力されたタイミングの、その時のサイン波の電圧をCV出力ジャックから出力し続けます。そして、この出力電圧は、次のGate入力が検知された時に更新されます。

以上がS&Hの基本的な挙動で、この処理自体のことと、このような処理をするモジュールのことが、S&Hと呼ばれているものです。

このADDAC215にもこの3つのジャックが、そも2ペアあることが分かります。以下がその部分で、上からGate入力(TRIGGER)、CV入力(INPUT)、CV出力(OUTPUT)となっています。

写真:ADDAC215のジャック

S&Hをどう使うのか

そういう機能がS&Hなのですが、だったらそれで何をどうするのか。そこから先はモジュラーを使う人がお好きにどうぞという形ではあるのですが、例えばごく一般的な使用方法の一つとしては、LFOやホワイトノイズ等の、可変し続けるCVを元にメロディーラインを作るという使い方が挙げられます。

波長の長いサイン波を想像してみて下さい。ゆらゆらゆらと常に変化し続けるわけですが、そのサイン波をS&HのINPUTに渡し、Clockのような定期的なGateをS&HのTRIGGERに入れます。すると何が起こるかと言うと、Clockの周期ごとに更新される電圧がS&HのOUTPUTから出力されるのです。そしてこれはゆっくりとしたサイン波をサンプリングしているため、なめらかな坂のようなCVが、階段状のCVになるイメージです。

図:サイン波が段階的にサンプリングされている様子

オリジナルのCVはゆるやかなサイン波であるため、こうして得られるCVは完全にランダムなわけではなく、ゆるやかに上がり、また緩やかに下るというのを繰り返すことになります。このCVをクオンタイザーを経由してオシレーターの1V/Octに渡せば、永遠に緩やかに上下し続ける、スケールに沿ったメロディーが作れるという具合です。

もちろん、CVの渡す先はクオンタイザーに限らず、フィルターのカットオフなりレゾナンスなり、様々なパラメーターをコントローするのに使えるわけですが、元のCVソースがなんであろうとも、このS&Hの存在により、常に変化し続けるCVを、Gateを渡したタイミングにしか更新しないCVへと変化させることができるのです。

CVによる変化をS&Hで区切ってメロディーやパラメーターをコントロールするという行為は、音程と発音タイミングが一緒になっているMIDIの概念からすると、音を作る方法論がそもそも異なる印象を受けます。このようなCVコントロールにより音作りは、モジュラーシンセという楽器を使う上での重要な考え方の一つであろうと私は考えます。ここで紹介した方法も、アイデアの一つぐらいにとらえておいて頂けるのが適切です。

ADDAC215のプラスな部分

このADDAC215 S&H+は、そんなS&Hが2つと、それに様々な追加機能がセットになっているモジュールです。以下がそのプラスな機能の一覧になります。

  • slew機能(トリガー毎のCV変化を緩やかにする)
  • 2系統のS&Hのトリガー共通化
  • Track&Hold機能(トリガーに5Vシグナルを受けてえーsいる間のみCVをholdする)
  • 2つのINPUTの差分出力
  • 2つのINPUTの平均出力
  • 2つのINPUTの加算出力
  • ノイズシグナル出力

前項ではサイン波からメロディーを作る方法を紹介しましたが、ここに別の周期のサイン波を混ぜ、2つを加算すれば、より複雑でありながら、音階が上下する特性を持つメロディーを作ることができます。

ほか、slew機能は、CVの変化を緩やかにする機能です。これを利用すれば、ベース系のシンセサイザーによくついているグライド機能を再現可能です。

S&Hはこのような別のCVコントロールをする機能とうまく連携させることができるため、そのようなプラスアルファの機能が色々ついているこのADDAC215は、6HPながらも非常に多機能なモジュールと言えます。個人的には、CVをあれこれ足したり引いたりシーケンスしたりS&Hを混ぜたりしているだけで、割と永遠に遊べる感覚です。

そんなわけで、何かしらS&Hがほしいと思う方には、S&Hの使い方をより広げるためにも、このADDAC215は良い選択肢になるだろうと考えています。

参考動画

以下、ADDAC System公式の解説動画です。是非参考にしてみて下さい。

マニュアル

以下公式サイトにてマニュアルが公開されています。

技術仕様

  • 幅: 6Hp
  • 深さ: 40mm
  • 消費電力: 最大+50mA/-50mA

付属品

  • フラットケーブル
  • ネジ

ADDAC Systemについて

ADDAC Systemはポルトガルのモジュラーシンセメーカーです。

アナログ良さを生かした、ベーシックな機能をしっかり形にしているモジュールラインナップを基本としつつも、CVをMIDIに柔軟にコンバートしたり、高度にコントロール可能なグラニュラープロセッサー等、デジタル技術もうまく調和させた独創的なモジュールも数多くリリースしています。

電氣美術研究會

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