ADDAC System: ADDAC712 Vintage Pre紹介

2024/01/30 Author: Takazudo

Takazudo Modularにて取り扱わせて頂いている、ADDAC SystemのADDAC712 Vintage Preの紹介/解説記事になります。

ADDAC712 Vintage Preは、70年代に伝説的な機器で使用された有名なディスクリートプリアンプボードをベースにした、2チャンネルのディスクリートゲインステージアンプです。特徴的なサチュレーションディストーション効果を作り出します。

こちらの商品は、以下よりご購入頂けます。

ADDAC712 Vintage Preの特長

ADDAC Systemが本モジュールをデザインする際に、オリジナルとなるプリアンプボードへ注目したのは、そのボードがオーディオをクリップさせることにより発生する、サチュレーション/ディストーションのキャラクターが魅力的であるという理由でした。

このモジュールは、モジュラーシグナルにディストーション/ファズのキャラクターを追加するだけでなく、バランス入力を取り込むモジュールと連携させることで、ギター、キーボード等の外部オーディオソース用のプリアンプとして使用することが可能です。

インターフェースの概要

図:サウンドがクリップされる様子

このモジュールのパネルにあるノブは、以下の2つのステージのゲインをコントロールします。

  • A: PREAMPステージGAIN(上側のGAINノブ)
  • B: OUTPUTステージGAIN(下側のOUTPUTノブ)

そして、パネル上部のBYPASSスイッチは、入力シグナルが、AのPREAMPステージを通す(スイッチ上側)か通さない(スイッチ下側)かを切り替えます。

PREAMPステージGAINの増幅幅は、GAINノブ(A)によって設定され、最大の増幅量はユーザーがMAX GAINトリマーを使用して設定できます。

±5.5vまでの入力信号はその整合性を保ちますが、その点を超えるとサチュレーション具合が増加し始めます。約±6vでハードクリッピングが始まります。このクリッピングには特有の質があり、この性質がこのモジュール独特のトーンを作り出します。極端なレベルでは、オーディオの0vバイアス基準が上方向に移動し、ゲートのようなシグナルの形の出力を生み出します。

パネル下部のOUTPUTノブ(B)は、最終的なボリュームレベルをコントロールします。また、その横にあるCLIP LEDは、最終OUTの出力クリッピングを視認するためのものです。

使い方としては、上側のGAINノブを回して、クリップ具合をコントロールし、下側のOUTPUTノブで最終的なボリュームを調整するという形になります。

回路図

ADDAC712 Vintage Preの使い所

このADDAC712 Vintage Preの使い所は、なんといってもこのモジュールの作り出す音の歪み具合でしょう。私個人的には、ドラムでもベースでも、音がかなり潰れている感じのハードなテクノ類の音楽が好きなので、このモジュールはいくつでも欲しくなってしまうモジュールです。

一口に、サチュレーション/ディストーションと言っても、その音響処理は、使用されている回路や、デジタルであればそのアルゴリズムにより、多種多様な音の違いがあります。

このADDAC712 Vintage Preが作り出す歪み効果は、バッサリとクリップさせてシグナルをカットしてしまう感じではなく、ハードクリップされる部分が緩やかに丸められた印象を私は受けました。その音がどういうものか?というのは、次に紹介する動画にてぜひご確認頂きたいです。

参考動画

以下動画では、このADDAC712 Vintage Preの作り出す音の特徴をご確認いただけます。

以下は私の方で撮ったデモで、909系キックドラム+モノシンセモジュールであるPatching Panda: BD-Zに、このADDAC712 Vintage Pre、及び同社のADDAC714 Vintage Clipを通しています。音の変化具合の参考にして頂ければと思います。

マニュアル

以下公式サイトにてマニュアル(英語のみ)が公開されています。

技術仕様

  • 幅: 6Hp
  • 深さ: 40mm
  • 消費電力: 40mA +12V/40mA -12V

付属品

  • フラットケーブル
  • ネジ

ADDAC Systemについて

ADDAC Systemはポルトガルのモジュラーシンセメーカーです。

アナログ良さを生かした、ベーシックな機能をしっかり形にしているモジュールラインナップを基本としつつも、CVをMIDIに柔軟にコンバートしたり、高度にコントロール可能なグラニュラープロセッサー等、デジタル技術もうまく調和させた独創的なモジュールも数多くリリースしています。

電氣美術研究會

オマケ: 電氣美術研究會モジュラー小物セット付き

電氣美術研究會

モジュラーシンセをもっと多くの方に触って欲しいという願いの元、電氣美術研究會さまにご協力頂き、モジュラー小物セットを本商品にバンドルさせて販売させていただいております。

パッチケーブルや電源ケーブル、ドレスナットのサンプルセット、モノラルスプリッターなど、内容は時期に応じて変化します。商品に同梱しますので是非お試し下さい!

ADDAC712 Vintage Preの紹介は以上になります。

例えばドラムやハイハット、スネア等のリズム系の音源を鳴らしてみるものの、なにかパンチが足りない……みたいに感じている方は、気付いていなかったけれども、このモジュールは実は求めているものかもしれません。個人的にこのモジュールは、とりあえず音を太くしたいみたいなケースにおいて、かなり有力な選択肢であると考えています。私はモジュラーシンセを初める前から、PREAMP機能を持ったプラグインをいつもDTMで使っていました。

何かしらサチュレーション/ディストーションをお持ちでない場合は、このようなモジュールが一つあると、音作りの幅が広がることと思います。このVintag Preとは似た処理だが、その音質はまた異なる、ADDAC714 Vintage Clipも併せてご検討頂けると良いかと思います。

ご参考になれば幸いです。