ADDAC System: ADDAC106 T-Noiseworks紹介

2024/02/01 Author: Takazudo

Takazudo Modularにて取り扱わせて頂いている、ADDAC SystemのADDAC106 T-Noiseworksの紹介/解説記事になります。

ADDAC106 T-Noiseworksは、ノイズ主体の4ボイスパーカッション系サウンドを発振するモジュールです。得られるサウンドの質感としては、TR-808のようなクラシックなリズムマシンの、ハイハット/スネア/キック等のサウンドに近いです。ただし、このモジュールが作るのは、物理楽器のその音であると想起させるにはまだ遠い、アナログ回路が生み出しているノイズを加工している段階とでも言うような、荒い質感のパーカッションボイスです。

こちらの商品は、以下よりご購入頂けます。

ADDAC106 T-Noiseworksの特長

ADDAC106 T-NoiseworksはADDAC SystemのT-Networksシリーズの最後のモジュールです。T-Networksシリーズというのは、T字型ネットワークという、抵抗とキャパシタを組み合わせた回路のセットのことを指し、ADDAC Systemのラインナップには、このT字型ネットワークの特長を生かしたボイスモジュールが複数存在しています。当店で扱っているADDAC104 VC T-Networksも、このT-Networksシリーズの一つです。

T字型ネットワークは、特定の周波数を減衰させるノッチフィルターのような働きをし、これを2つ組み合わせて音を作るという手法が、クラシックなドラムマシンで多く採用されてきたとのこと。そのT字型ネットワークへ、このモジュールではノイズを渡し、興味深いサウンドを作り出しています。

このモジュールは4ボイスで、回路の設計としては、1〜3は同じで、4だけ異なります。それぞれの回路の違いは以下です。

  • A: ボイス1〜3: ノイズ → T字型ネットワーク → VCA
  • B: ボイス4: ノイズ → VCA → T字型ネットワーク

回路図

Aのパターン(ボイス1〜3)では、ノイズをT字型ネットワークに渡し、その後VCAでボリュームをコントロールするという設計ですが、Bのパターン(ボイス4)では、ノイズをVCAに渡し、その後T字型ネットワークに渡しているという違いがあります。

この結果、Aのパターンでは、ノイズのざらざらした質感が多く残る、ハイハットやスネアに近いサウンドを作り、Bのパターンでは、T字型ネットワークの作るレゾナンス感がトーンとして強く表れた、TR-808のキックに近いサウンドを作り出します。

ADDAC106 T-Noiseworksのインターフェース

4ボイス共通で用意されているのは以下です。

  • FREQUENCYノブ
  • DECAYノブ
  • INPUTジャック
  • INPUTタイプ切替スイッチ(TRIGGER/MUTE/ENVELOPE)
  • OUTPUTジャック

FREQUENCYノブは、T字型ネットワークが影響を与える周波数をコントロールするものです。INPUTタイプ切り替えスイッチがTRIGGERの場合、INPUTにシグナル入力があると、対応するボイスがOUTPUTジャックより発振されます。この時、ATTACKはゼロに近く、DECAYノブに応じた減衰時間を持つEnvelopeが作られ、VCAに渡されます。結果として、パーカッション的な鳴り方をするサウンドが生成されます。

INPUTタイプ切替スイッチをENVELOPEにすると、INPUTの受けるCVが直接VCAに渡されるため、外部EnvelopeやLFOによる緻密なボリュームコントロールが可能です。

Aのパターン(1〜3)のボイスには、HAT/SNARE切り替えスイッチが用意されていますが、これはまさにHAT/まさにSNAREなボイスを作るということではなく、そのような特性を持ったサウンドを作るというニュアンスを表したものです。内部的には、High Pass Filterをオンにするか否かのスイッチとなっているようで、HATの場合はオンになり、高音域が強調されたサウンドになります。オフにすると、より広い音域のサウンドになり、SNAREに近い音質となります。

Bのパターン(4)のボイスについては、HAT/SNARE切り替えスイッチのかわりに、L/M/Hを切り替える、FREQ.RANGEスイッチが用意されています。これはADDAC104 VC T-Networksで用意されているものと同様であり、周波数のレンジを以下3種類に切り替えるものです。それぞれ以下の意味を持ちます。

  • L(Low): 低めの周波数を発振
  • M(Modified): アクセント強めに調整されたボイスを発振
  • H(High): 高めの周波数を発振

Mは中音域のMiddleではなく、ややレゾナンスが強調されたような、異なるキャラクターのボイスに切り替わります。

ADDAC106 T-Noiseworksの使いどころ

まずこのボイス4については、ADDAC104 VC T-Networksで使っていた回路を一つ、このモジュールに持ってきたようなものなので、ADDAC104の説明の方をご参照いただければと思います。この回路が作り出すクリック/ブリップサウンドをお楽しみいただけます。

ボイス1〜3のノイジーなボイスについては、Takazudoのこれまで使ってきたモジュールでいうと、BefacoよりリリースされているNoise Plethoraというモジュールに近い印象でした。Noise Plethoraは、ホワイトノイズをフィルターで加工なりすることで、様々な表情のノイズを作り出すことが出来ます。Noise Plethoraを初めて使った時、ノイズというものは美しい音を作り出すのだということに気付かされた感じが自分はしました。

ADDAC106 T-Noiseworksの使用感は、そのときに感じた感覚と近い印象を受けます。TR-909やTR-808のハイハットはスネアって、よくよく考えると何が良いのだろうかと考えた時、そこに含まれているノイズ成分の荒い質感なのかもしれないと、改めて気付かされます。スネアのDecayを長くとった時に追加される音の成分のほとんどはノイズです。その荒い感じがよく聞こえるのかなと。このADDAC106 T-Noiseworksは、そんなノイズが3パートあります。どれも微妙に異なる質感になっており、そしてノッチフィルター的なT字型ネットワークで、その質感をコントロールします。

そんな、ノイズの良さを再発見させてくれる「ノイズワークス」という名前のモジュールです。

参考動画

以下動画では、ADDAC106 T-Noiseworksをパーカッション的に慣らしている様子をご確認いただけます。ご参考にしていただければと。

マニュアル

以下公式サイトにてマニュアルが公開されています。

技術仕様

  • 幅: 8Hp
  • 深さ: 40mm
  • 消費電力: 40mA +12V/40mA -12V

付属品

  • フラットケーブル
  • ネジ

ADDAC Systemについて

ADDAC Systemはポルトガルのモジュラーシンセメーカーです。

アナログ良さを生かした、ベーシックな機能をしっかり形にしているモジュールラインナップを基本としつつも、CVをMIDIに柔軟にコンバートしたり、高度にコントロール可能なグラニュラープロセッサー等、デジタル技術もうまく調和させた独創的なモジュールも数多くリリースしています。

電氣美術研究會

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電氣美術研究會

モジュラーシンセをもっと多くの方に触って欲しいという願いの元、電氣美術研究會さまにご協力頂き、モジュラー小物セットを本商品にバンドルさせて販売させていただいております。

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