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OXI Coral 解説 EP.3: ボイスエンジンの探求

ガイド: OXI Coral 解説 EP.3: ボイスエンジンの探求

著者: Takazudo | 作成: 2026/04/13

OXI Coralの解説シリーズEP.3です。今回はCoralに搭載された10種類のボイスエンジンを順番に解説します。

OXI Coralは1つのモジュールに10種類の異なるシンセシスエンジンを内蔵しています。バーチャルアナログからFM合成、ウェーブテーブル、ストリングモデリング、パーカッシブエンジン、そしてサンプルプレイヤーまで、幅広いサウンドパレットをコンパクトな14HPに凝縮しています。

Takazudo Modularではマニュアル等の日本語訳付きを作成し、公開しています。以下よりご参照下さい。

エンジンの切り替え

パネル中央のエンコーダーを回すと、選択中のボイスのエンジンが切り替わります。エンコーダーを最初に回した瞬間、LEDリングが現在選択中のエンジン位置をピンク色で表示します。

エンコーダーを回すとLEDリングにエンジン位置が表示される(ここではエンジン1が選択中)

エンジンは1番から10番まで10種類あり、エンコーダーを回すたびに順番に切り替わります。エンジンを変えると、HarmTimbreMorphの3つのノブの役割がそのエンジン固有のパラメーターに切り替わります。

エンジン1: 2 VCO バーチャルアナログ

エンジン1: 2 VCO バーチャルアナログ

2つのバーチャルアナログオシレーターによる古典的なアナログシンセシスを実現するエンジンです。2つ目のオシレーターは1つ目に同期しています。

各ノブの役割は以下のとおりです。

  • Harm: 2つのオシレーター間のデチューン量。音楽的なインターバルに沿って変化します
  • Timbre: 可変Square波形。ナローパルスからフルSquare、ハードシンクフォルマントまでモーフィングします
  • Morph: 可変Saw波形。三角波から幅広いノッチを持つSawへモーフィングします

Harmノブを回すと2つのオシレーターがデチューンされ、コーラス効果のようなリッチなサウンドになります。デチューン量は音楽的なインターバルに対応しているため、精確なハーモニー効果を作りやすい設計です。

エンジン2: ウェーブシェイパー

エンジン2: ウェーブシェイパー

非対称三角波をウェーブシェイパーとウェーブフォルダーで処理するエンジンです。倍音豊かなハーモニクスを生成します。

各ノブの役割は以下のとおりです。

  • Harm: ウェーブシェイパーの波形を選択します
  • Timbre: ウェーブフォルダーの量。増やすほど倍音が増加します
  • Morph: 波形の非対称性

Timbre(ウェーブフォルダー量)を上げると波形が繰り返し折り返され、倍音が増加して独特のハーモニクスが得られます。Morphの波形非対称性と組み合わせることで、さらに複雑なサウンドを作ることができます。

エンジン3: 2 OP FM

エンジン3: 2 OP FM

2つのサイン波オシレーターが互いの位相を変調するFM合成エンジンです。シンプルな2オペレーター構成ながら、金属的なサウンドからベルのような音、歪んだFMサウンドまで多彩な音色を作れます。

各ノブの役割は以下のとおりです。

  • Harm: 周波数比(キャリアとモジュレーターの比率)
  • Timbre: 変調インデックス。FM合成の核心となるパラメーターで、倍音量を制御します
  • Morph: フィードバック量。12時位置より先ではオペレーター2が自身の位相を変調し(ラフなサウンド)、12時より前ではオペレーター1の位相を変調します(カオティックなサウンド)

Harm(周波数比)とTimbre(変調インデックス)の組み合わせで非常に幅広いサウンドが得られます。整数比では倍音のある金属的なサウンド、非整数比では非調和的なベルやパーカッシブなサウンドになります。

エンジン4: ウェーブテーブル

エンジン4: ウェーブテーブル

3次元(3×3×3)のウェーブテーブルを使ったシンセシスエンジンです。27個の波形がクロスフェードして1つのサウンドを生成します。SDカードにカスタムウェーブテーブルを読み込んで自分だけのサウンドを作ることもできます。

各ノブの役割は以下のとおりです。

  • Harm: Z軸(奥行き次元)のウェーブテーブル位置
  • Timbre: X軸のウェーブテーブル位置
  • Morph: Y軸のウェーブテーブル位置

デフォルトで1つのウェーブテーブルが読み込まれており、3×3×3の27波形で構成されています。SDカードに「WAVETABLE」というプレフィックスを持つ.wavファイルを配置することでカスタムウェーブテーブルを読み込めます。OXI公式の「OXI Wave」デスクトップアプリでウェーブテーブルを作成・エクスポートすることも可能です。

3次元のウェーブテーブルはHarmTimbreMorphの3ノブで自由にナビゲートできます。各ボイスに異なるパラメーター値を設定できるため、8ボイスのポリフォニック演奏でウェーブテーブル内の異なる位置を使い、より豊かなサウンドを作ることができます。

エンジン5: MDO(マルチプル・デチューン・オシレーター)

エンジン5: MDO(Multiple Detuned Oscillator)

MDOは「Multiple Detuned Oscillator」の略です。各ボイスに8つのデチューンされたオシレーターを持ち、SawからSquare/PWMまでのモーフィングが可能です。

各ノブの役割は以下のとおりです。

  • Harm: デチューン量。8つのオシレーターの広がりを制御します
  • Timbre: 波形のモーフ。Sawから徐々にSquare波形に変化します
  • Morph: Square波形のPWM(パルス幅変調)

1ボイスあたり8つのオシレーターが重なるため、Harmでデチューンを加えると非常に厚みのあるサウンドになります。Timbreを完全に左に回した位置では純粋なSaw波形で、右に回すにつれてSquare波形に変化します。Square波形になったあとはMorphでパルス幅を変えられます。パルス幅を非常に短くすると音量が低下し、独特のナローパルスサウンドが得られます。

エンジン6: ストリング

エンジン6: ストリング

デジタル弦共鳴モデリングによるストリングエンジンです。各ボイスに2つのモーダルストリングモデルが含まれています。

各ノブの役割は以下のとおりです。

  • Harm: 非調和性の量またはマテリアル選択。値によって金属的な弦から柔らかな素材感まで変化します
  • Timbre: エクサイテーション(弦を弾く力)のブライトネスとダストデンシティ
  • Morph: ディケイタイム(エネルギー吸収)

Morph(ディケイタイム)の調整でピチカートのような短い音から長く響く弦の音まで幅広い表現が可能です。Harm(非調和性)を変えると弦の「素材感」が変わり、ギターのような自然な倍音から金属板のような人工的な倍音まで変化します。

エンジン7: ハイハット シンセ

エンジン7: ハイハット シンセ

2つのハイハットモデルをブレンドするパーカッシブエンジンです。金属的なノイズとフィルタードノイズを組み合わせてハイハットのサウンドを生成します。

各ノブの役割は以下のとおりです。

  • Harm: メタリックなサウンドとフィルターノイズのバランス
  • Timbre: ハイパスフィルターのカットオフ周波数
  • Morph: 2つのモデル間のクロスフェード

パーカッシブエンジン共通の仕様として、mod dr(モジュレーションデケイ)コントロールが内部エンベロープのディケイに影響し、サウンドの振幅と特性全体を制御します。別途amp drでAMPエンベロープのディケイをさらに調整できます。

エンジン8: スネア シンセ

エンジン8: スネア シンセ

2つのアナログスネアドラムモデルをブレンドするエンジンです。ボディ成分とノイズ成分を組み合わせてスネアドラムのサウンドを生成します。

各ノブの役割は以下のとおりです。

  • Harm: ハーモニック成分(ボディ)とノイズ成分のバランス
  • Timbre: ボディ成分のサウンドキャラクターに影響します
  • Morph: 2つのモデル間のクロスフェード

Harmでボディとノイズのバランスを取り、Morphで2つのスネアモデルをブレンドすることで、様々なキャラクターのスネアサウンドが作れます。ハイハット同様にmod drでサウンド全体のディケイを制御します。

エンジン9: バスドラム シンセ

エンジン9: バスドラム シンセ

2つのキック/バスドラムデジタルエミュレーションをブレンドするエンジンです。深みのあるバスドラムサウンドからハードなキックまで対応します。

各ノブの役割は以下のとおりです。

  • Harm: アタックのシャープネスとオーバードライブ量
  • Timbre: 全体的なブライトネス
  • Morph: 2つのモデル間のクロスフェード

Harm(アタックシャープネス/オーバードライブ)でキックの「頭」の鋭さを調整し、Timbreでブライトネスを、Morphで2つのモデルをブレンドすることで幅広いキックサウンドが作れます。mod drでキックのディケイタイム全体を制御します。

エンジン10: ウェーブ プレイヤー

エンジン10: ウェーブ プレイヤー(サンプルプレイヤー)

任意のビット深度・サンプルレート・長さのサンプル(モノまたはステレオ)を再生できるサンプルプレイヤーエンジンです。最大10個のフォルダに最大32サンプルずつ保存でき、ポリフォニックなサンプル再生が可能です。

各ノブの役割は以下のとおりです。

  • Harm: オーバードライブ量
  • Timbre: フォルダ内のサンプル選択
  • Morph: フォルダ選択(最大10フォルダ)

サンプルのピッチは内部的に再生速度を調整することで変化します。最大18半音アップ、24半音ダウンまで対応しています。Coralにはオーディオワーピングは搭載されていないため、ピッチを上げると再生速度も速くなります。Morphノブでフォルダをリアルタイムに切り替えることもでき、演奏中に素材を素早く変更できます。

ウェーブ プレイヤー対応フォーマット: 16bit、24bit、32bit、32bit float、サンプルレート44100Hzまたは48000Hz。最適なパフォーマンスのためにはU3クラスのSDカードの使用が推奨されます。

実践的なヒント

エンジンをボイスごとに使い分ける

各ボイスには独立してエンジンを割り当てられます。例えばボイス1〜6をMDOやウェーブテーブルでメロディーに使い、ボイス7〜8をバスドラムとスネアに割り当てることで、1つのCoralモジュールでポリシンセとドラムマシンを同時に動作させることができます。

ウェーブテーブルとウェーブ プレイヤーのカスタマイズ

エンジン4(ウェーブテーブル)はOXI WaveアプリでカスタムウェーブテーブルをSDカードに書き込んで読み込めます。エンジン10(ウェーブ プレイヤー)はSDカードにWAVサンプルを入れることで独自のサンプルパックを使えます。

ファームウェアによるエンジン構成の違い

OXI Coralはファームウェアによってエンジンのラインナップが変わります。OXI公式サイトのUpdateセクションから、ドラムエンジン中心の構成やACID・3VCOを含む構成など、複数のファームウェアをダウンロードできます。このEP.3で紹介したエンジン構成は一例です。