ADDAC System: ADDAC304 Manual Gates紹介

2024/05/25 Author: Takazudo

Takazudo Modularにて取り扱わせて頂いている、ADDAC SystemのADDAC304 Manual Gatesの紹介/解説記事になります。

ADDAC304は、8つのモーメンタリスイッチ(押している間だけ動作するするタイプのスイッチ)と、それに対応する8つの出力ジャックを基本とする、マニュアルGate出力モジュールです。それぞれのボタンは、押されている間だけ、対応するジャックより、+5Vの固定CVを出力します。

また、8つのうちの4つには、別途CV入力用のジャックが用意されています。このジャックにケーブルが接続されている場合、対応する出力ジャックからは、+5Vの固定CVの代わりに、入力されたCVがそのまま出力されます。

機能としては非常に単純なモジュールですが、モジュラーシステムを用いたパフォーマンスに幅広く使えるモジュールです。

こちらはADDAC Systemにてビルドされた完成品のほか、DIYキットも取り扱っています。

以下よりご購入頂けます。

商品写真: 完成品

写真:商品表側

写真:商品横側

写真:商品表側

商品写真: DIYキット

写真:DIYキット表側

写真:DIYキット裏側

ボタンを押してGateを送ることができると何が嬉しいのか

このモジュールは、ボタンが押されている間だけ5Vが出る、基本としてはただそれだけのモジュールです。

人によってはなにか素敵な音が出るわけでもないし、何に使ったら良いのか全く分からないと感じる方もいるかも知れません。ですが、筆者Takazudoとしては、こういう、言ってみれば地味なCVをコントロールするモジュールなんかが、取り立ててモジュラーシンセでシステムを組む時に楽しい部分であると感じているので、使い道をいくつか紹介します。

単発のサウンドトリガーとして

モジュラーシンセサイザーを演奏する際、多くの場合はシーケンサーを用いてオシレーターを鳴らすことが多いかと思われます。その場合、シンプルなシーケンサーを想定するとすれば、1つのオシレーターを鳴らすには、そのオシレーター用のシーケンサーが1つ必要になります。そう考えると、多くのパートを扱いたい場合は、膨大な数のシーケンサーが必要となってしまうでしょう。当店で扱っているOXI ONEなんかを使えば、多数のトラックを一度に扱えますが、それでもGate出力は8個までです。

そして、鳴らしたい音の種類によっては、そんなに頻繁に鳴らすわけでもないものもあります。例えば曲が大きく展開する時にだけ鳴らしたい、サンプリングされたボイスサンプルであったり、派手なクラッシュシンバルであったり、ちょっとしたまとまりのループサウンドだったりです。そのような単発のサウンド再生のためには、そのためのシーケンサーを用意しておかずとも、このADDAC304のような、ただボタンを押したらGateを出力するだけのモジュールの方が使いやすいかもしれません。

何かしらのサンプラーのモジュールがあったとして(例: 2hp: Play)、それがGateを受けることでサウンドを再生させるようになっていたのだとしたら、このADDAC304は8つのサンプル再生トリガーボタンとして使うことが出来ます。

Sample & HoldでトリガーのタイミングをClockに合わせる

しかし、自分は基本ビートのある音楽をやっているので、そんな自由なタイミングで鳴らすのはちょっと使いづらい。例えば4つ打ちのキックと同じタイミングでトリガーさせるようにしたいと思うかもしれません。そんなときは、Sample & Hold(例: ADDAC215 S&H+)と組み合わせれば解決です。

このADDAC304の作るGateは、ボタンが押されているその間だけ出力されます。それを前項の例のようにサンプラーなりのトリガーに渡せば、そのタイミングで音がなってしまうわけですが、その前にS&Hをはさみ、S&HのHoldには同期させたいClockを常に渡しておけば、そのタイミングになるまでサンプラーのトリガーにGateは届きません。

例えば1/4ごとのClock GateをS&HのHoldにずっと渡しておき、音を出したいわずか前のタイミングでADDAC304のボタンを押しておけば、S&Hはビートにあった1/4毎のタイミングまではHoldすることはないので、ビートに合わせてサンプルを鳴らすことができます。ほか、1/16のClockを渡しておいて同じことをすれば、適当にボタンを押しているだけでも、Clockにあったトリガーのタイミングへと調整できます。

微妙にややこしく、このためだけにS&Hが必要になってはしまいますが、ひとまず、Clockに合わせてGateを出力したい問題はこれで解決することができます。

外部CVを代わりに出力させる

写真:2,4,5,7ボタンと対応するジャック

このADDAC304は、そのままだとボタンを押している間だけ5VのCVを出力しますが、2/4/5/7のボタンにはそれぞれCV入力用のジャックが用意されており、このジャックへのケーブル接続がある場合、ボタンを押している間だけ、INPUTから渡されるCVをそのままOUTPUTへ出力します。

この機能は、普段はMute(ミュート)されているCVを、ボタンを押している時だけUnmute(アンミュート)するようなイメージで使うことができ、かなり応用の幅が広いです。

この機能は、例えばシーケンサーからのGate出力を、欲しい時だけ出すようなケースで利用することが出来ます。OXI ONEのようなシーケンサーから、1/16 Clockの連続するGateをずっと出力し、NoisyFruitsLab: 808 Snare Drumに渡したとします。すると、スネアロールのように連続するスネア音がなり続けることになりますが、これをちょっとしたブレイクのときだけ使いたいです。そんな時は、OXI ONEからのGate出力を一旦ADDAC304の2番ジャックのINPUTで受け取り、OUTPUTを808 Snare DrumのTRIGへと渡します。

この状態だと、通常はOXI ONEからのGate出力は、ADDAC304がブロックし続けるので、スネアは鳴りません。ここでADDAC304の2番ボタンを押すと、OXI ONEからのGate出力がそのまま808 Snare Drumに渡され、スネアが鳴り始めます。ボタンを離すと、OXI ONEからのGateは再びブロックされるので、スネアは止まります。

このように、一時的にCVを出力させるようなことをしたい場合、ADDAC304の2/4/5/7のINPUTジャックを有効に使うことが出来ます。

ほか、ADDAC701.REV2 VCOのようなOscillatorのFMモジュレーションを一時的にかけたり、Sproom DSPのエフェクトを一時的に変化させたりなど、2/4/5/7ボタンがしてくれることは単にMuteされているCVをUnmuteすることなだけですが、そのシンプルさゆえに、使い方はいくらでも考えられます。このADDAC304はほとんどパズルのピースのようなモジュールです。

モジュラーシンセサイザーの自由さ

なぜ人はモジュラーシンセサイザーという、わざわざOscillatorやFilterが分かれている音楽機材を使うのかと考えた時、それは自分が欲しい組み合わせの機材のセットがそこに欲しいからというのが一つ、理由として多くの人にはあるのではないでしょうか。

そこには、自分の好きなシーケンサー、好きな音源、好きなノブやボタンを組み合わせて作り上げる楽しさがあり、その要素の一つとして、ボタンを押したらトリガーのCVを発生させるというそのごく原始的な仕組みは、モジュラーシンセというプラットフォームに非常によくマッチする要素の一つになるものであると筆者Takazudoは考えていますがどうでしょうか。

このモジュールの兄弟のようなモジュールとして、モーメンタリスイッチではなく、ラッチスイッチ(押されるたびにON/OFFが切り替わるタイプのスイッチ)を使ったADDAC305 Manual Latchesもあります。そちらも併せて、何にどのように使えそうか、色々と試していただくと楽しいかと思われます。是非併せてチェックしてみてください。

参考動画

以下は、ADDAC Systemの公式YouTubeチャンネルにて公開されている、本モジュールADDAC304 Manual Gatesと、ADDAC305 Manual Latchesの解説動画です。

この動画では、ADDAC304とADDAC305を使い、以下のような制御をすることで、リアルタイムなパフォーマンスを行っている様子が確認できます。

  • シーケンサーからのGate出力をON/OFF
  • シーケンサーのリセット
  • ドラムモジュールのトリガー
  • ディレイのトリガー
  • 押している間だけエフェクトをONに

技術仕様

  • 幅: 8Hp
  • 深さ: 25mm
  • CV入力電圧: ±10v
  • Gate出力電圧: 0/+5v
  • 最大消費電力: 10mA

付属品

  • フラットケーブル
  • ネジ

マニュアル

このモジュールには特にマニュアル等は用意されていません。
不明点等ございましたらお気軽にお問い合わせ下さいませ。

DIYガイド

キット内包物

DIYキットには、パネル、PCB、すべての部品、フラットケーブル、取り付けネジが含まれています。

ADDAC Systemは、Webサイトに細かなDIYガイドを用意しています。以下がそのガイドになりますので、組み立ての際にはこちらを参考にしつつ組み立ててみて下さい。

※ 写真はDIYガイドのものであり、パネルは赤ですが、本品のパネルは黒です

このモジュールのDIYガイドでは、多数の非常に小さいパーツ(SMDパーツ)を取り付けるよう手順が書かれていますが、届いたキット1つの内容を確認してみたところ、部品群はジャックやボタン等、比較的サイズが大きく、人の手ではんだ付けし易いパーツ群(Through-Holeパーツ)を取り付けることで完成させることができるように準備されたものになっているようでした。

モジュラーシンセのDIYとは?

モジュラーシンセサイザーのDIYについて詳しくご存じない方向けに、以下にDIYの導入的なコラムを用意しました。DIYについてご興味のある方、始めてみようと思う方は、是非ご参照いただければと。

また、組み立てに際して不明点や不安な点がございましたら、以下Takazudo Modularのdiscordチャンネルにてお気軽にご質問等、頂ければと思います。

ADDAC Systemについて

ADDAC Systemはポルトガルのモジュラーシンセメーカーです。

アナログ良さを生かした、ベーシックな機能をしっかり形にしているモジュールラインナップを基本としつつも、CVをMIDIに柔軟にコンバートしたり、高度にコントロール可能なグラニュラープロセッサー等、デジタル技術もうまく調和させた独創的なモジュールも数多くリリースしています。

電氣美術研究會

オマケ: 電氣美術研究會モジュラー小物セット付き

電氣美術研究會

モジュラーシンセをもっと多くの方に触って欲しいという願いの元、電氣美術研究會さまにご協力頂き、モジュラー小物セットを本商品にバンドルさせて販売させていただいております。

パッチケーブルや電源ケーブル、ドレスナットのサンプルセット、モノラルスプリッターなど、内容は時期に応じて変化します。商品に同梱しますので是非お試し下さい!