Takazudo Modularにて取り扱わせて頂いている、ADDAC SystemのADDAC218 Attenuvertersの紹介/解説記事になります。
ADDAC218 Attenuvertersは、3チャンネルのAttenverter(アテヌバーター)を備えたモジュールです。4hpながらノブが大きく、パフォーマンスにも適したサイズであるという点がオススメポイントです。
このモジュールの3つのチャンネル(以降Ch)は、それぞれが独立していますが、Ch2/Ch3それぞれについて、INに何も接続されていない時、Ch1のINに接続された入力をそのまま使用するように設計(ノーマル接続)されています。
こちらの商品は、以下よりご購入頂けます。
Attenuverterの使用例
モジュラーシンセ基礎知識として、Attenuverterは、入力されたシグナルを減衰(Attenuate:アッテネート)、及びひっくり返す(Invert:インバート)するモジュールです。
多くのモジュールは、複数のパラメーターについて、CV入力と共にノブが用意され、そのノブへ、このAttenuverterの機能が割り当てられていることが多いです。例えばオシレーターであればFM Modulationのため、Pulse Width Modurlationのため、CV入力ジャックと、その入力をAttenuvertするためのノブがついているのをよく見かけるでしょう。
以下は、ADDAC604 Dual Filterと、ADDAC701.REV2 VCOについているAttenuverterです。
このモジュールは、ノブが大きくて使いやすいという側面はありますが、そのような場合ではこのようなモジュールを別途用意する必要性は特別ありません。
ですが、3Chのノーマル接続を生かした構成や、Attenuverterが用意されていないCV入力に対するコントロールを行う場合などに活きるのがこのモジュールです。3つほど例を挙げて解説します。
1. CVシーケンサーの出力をAttenuvertする
例えば何かしらのCVシーケンサーの出力(例:OXI ONEのCVシーケンス等)を、クオンタイザー(例:ADDAC207 Intuitive Quantizer等)に渡し、オシレーターに渡す1V/OctなCVを作っていたとします。
この場合、クオンタイザーから生成されるスケールに沿った1V/OctのCVは、シーケンサーで作っている、時間に応じたCV の大きさに応じたものになります(当たり前ですが)。このとき、間にAttenuverterを挟み、CVの大きさを70%にしたとすると、CVの広がり方を縮め、全体のCVの電圧も低くなります。
結果として、鳴っていたメロディーは、全体的にばらつきが少なくなり、なおかつ低めの音程へと変化します。
2. EnvelopeをAttenuvertする
何かしらのEnvelope Generatorの出力を、ADDAC218のCh1のInへ接続したとします。この時、Ch1への入力は、Ch2とCh3へもノーマル接続されます。これを利用し、1つのEnvelopeのCVを、3つの異なるレベルで出力させることが出来ます。
これが利用できるのは、例えばVCA(例:NoisyFruitsLab: Dual VCA等)とVCF(例:ADDAC604 Dual Filter等)を利用するときです。Ch1の出力をVCAのLevel CVへ、Ch2の出力をVCFのCutoffへと渡せば、Low Pass Gate(例:DPLPG等)のような効果を作ることが可能です。そして、このときのEnvelopeの強さを、Ch1とCh2で個別に変更出来ます。
ほか、多くのEnvelope Generatorは、出力CVの電圧の大きさはそれなりに大きいものとなることが多いため、単純に出力されるEnvelopeの強さを調整したい時などにも便利です。
3. ダッキングのために使う
これはそこそこややこしい処理ですが、ダッキングやサイドチェーンと呼ばれる効果を作る時にも利用できます。以下がその流れを示した図です。
この図は、キックドラムのシグナルをEnvelope Followerを介した後、Attenuverterで逆転させ、VCAのCVに入れている様子を示しています。この結果、キックのボリュームが大きい時、VCAのLevelが小さくなります。この構成の時、VCAのAudio Inへ、ハイハットのオーディオをMixしたシグナルを入れておくと、キックがなっている時、ハイハットのボリュームが小さくなり、キックを際立たせることが可能です。
モジュラーシステムにおいては、モジュール間のやりとりはほとんどがCV、つまり電圧の変化でしかありません。AttenuverterはCVをコントロールする道具の一つとして用意しておき、モジュール間のCVコントロールに挟んでみて、様々なアイデアを試してみるのが良いでしょう。
その様にCVをコントロールして音を作るというのは、モジューラーシンセサイザーを使う上での醍醐味の一つかと思います。
その他
ノブ直下のラベルには、各Chを永続的にシステムの中で用途を決め使う場合、マーカーで内容を書き込むために用意されています。気に入った組み合わせがあれば、そのモジュール専用のAttenuverterとしてラックに並べておくのも使いやすそうです。
マニュアル
以下公式サイトにてマニュアルが公開されています。ただ、このモジュール自体はシンプルなものなので、具体的な使用例等は特に記載されていません。
技術仕様
- 幅: 4Hp
- 深さ: 25mm
- 消費電力: ±40mA
付属品
- フラットケーブル
- ネジ
ADDAC Systemについて
ADDAC Systemはポルトガルのモジュラーシンセメーカーです。
アナログ良さを生かした、ベーシックな機能をしっかり形にしているモジュールラインナップを基本としつつも、CVをMIDIに柔軟にコンバートしたり、高度にコントロール可能なグラニュラープロセッサー等、デジタル技術もうまく調和させた独創的なモジュールも数多くリリースしています。
オマケ: 電氣美術研究會モジュラー小物セット付き
モジュラーシンセをもっと多くの方に触って欲しいという願いの元、電氣美術研究會さまにご協力頂き、モジュラー小物セットを本商品にバンドルさせて販売させていただいております。
パッチケーブルや電源ケーブル、ドレスナットのサンプルセット、モノラルスプリッターなど、内容は時期に応じて変化します。商品に同梱しますので是非お試し下さい!
ADDAC218 Attenuvertersの紹介は以上になります。
ご参考になれば幸いです。